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鈴村くんは間違えない  作者: シア
第1章 『人生の選択肢』

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第10話 鈴村の「気持ち」の整理

「さあ着きましたよー!!! やっほー!!!!!!!」


「……それ山でやることだろ」


 鈴村徹すずむらとおるの母、鈴村香織すずむらかおりが日本をった数日後、鈴村、綾瀬あやせ琴原ことはらの三人は熱海に来ていた。


 先日の綾瀬の誤解から生まれた裁判もどきの結果、綾瀬の誤解は解かれ、鈴村、琴原、そしてその事件の日に居合わせた長谷川はせがわに謝罪することでこの一件は幕を閉じた。


 しかし、生徒会長の飯田いいだはまた同じようなことが起こることを危惧したのか、三人に対して同時デートをするように指示した。


 初めこそ三人は戸惑っていたが、飯田は結局奪い合いになってフェアではなくなると考えており、それなら同時にデートしてしまえばフェアではない、三人に伝え、この三人の同時デートが実行されることとなった。


 行先については、この三人同時デートが提案されたタイミングで『人生の選択肢』から提示された選択肢の中から鈴村が決めた。


 『人生の選択肢』が提示した選択肢の中から選んだということは、この選択が鈴村の人生を大きく左右することを意味する。鈴村は元より綾瀬と将来を共にするという願いを叶えるために行動をしている。『人生の選択肢』から提示される選択肢はあくまでその鈴村の願いを叶える道具に過ぎない。選んだ選択肢からは逃れられないため、その先どんな未来が待ち受けようとも鈴村は受け入れなければならないのだ。


 さらに、今回に限っては『人生の選択肢』が提示した選択肢を選んだ際に記載される【選択の簡易的結果】が記載されなかった。鈴村はこのヒントを元に選択肢を選んでいたが、何も記載されなかったためこの先どんな未来が来るのかがわからない。


 鈴村は、どんな未来が来ようと立ち向かう度胸が必要だと考えて選択をした。


(しかし、海、プール、山で選択肢が分かれるって、一見するとただの行き先選びにしか見えないけど、何が変わるんだ?)


 鈴村はこの選択肢が提示されてからずっと疑問に思っていた。


 たかが行き先を選ぶだけである。その行き先を選ぶことがどのように自分の人生に影響が出るのか、鈴村には想像ができていなかった。


「熱海なんて来るの何年ぶりでしょうか……。やっぱり綺麗ですねー、海」


 そう言いながら、琴原は白いワンピースを風になびかせていた。


(うーん……)


 その姿を、鈴村はじーっと見つめていた。


(……やっぱり琴原先輩、……でかいな)


 それは鈴村が学園で琴原と出会った時から思っていたことだった。同学年の長谷川や、飯田の彼女である宮田詩織みやたしおりと比較すると、琴原の持つその二つのボールは比にならないくらいの大きさだった。


 ワンピースというものはその人の体形がよくわかるものである。風に靡かせるなどして体から離れている部分を少なくすればするほど、その形はさらにわかりやすくなる。


 琴原はこの性質を理解しており、そして自分の持つそれを武器とすることで綾瀬と張り合おうとしていた。


(ど、どうですか凛ちゃん! 一緒に買い物に行ったのが仇となりましたね! わ、私は他の女の子に比べて胸が大きいです。それを存分に利用させてもらいます!)


 琴原の目は燃えていた。


 その思惑を察していた綾瀬は、一歩遅れを取っていると自覚をしていた。


(やっぱり、みどり先輩はそれで来るよね……。わかってたよ、一緒に買い物行ったとき、それ真っ先に選んでたもん。私なんかよりずっと大きいもの持ってるし、絶対に武器にしてくると思った)


 綾瀬は諦めかけていた。しかし、綾瀬は鈴村のフェチを知っていたのである。


「す、鈴村君、この服、どうかな?」


「えっ!? あ、ああ、似合ってると思うぞ」


 綾瀬は黒い帽子をツバを後ろに向けながら被り、ボーイッシュスタイルの姿を鈴村に見せた。


 そう、鈴村はボーイッシュな雰囲気の女子が好きなのである。


 もともと元気で活発な綾瀬にはとても似合うコーディネートであり、制服姿しかあまり見ない鈴村にとってこのギャップはとても良い印象を与えていた。


(あー! ダメだ! 綾瀬かわいい! そしてかっこいい! なんでそんな俺の好みそのまんまのコーディネートなんだ!)


 鈴村は綾瀬の姿に見とれていた。


「ぐぬぬっ、やりますね凛ちゃん……。おてんば娘って感じがすごくします」


「みどり先輩もなかなかですよ……。今までの引っ込み思案な性格がどこに行ったのかわからなくなるくらい大胆になりましたね……」


 綾瀬と琴原はお互いに褒めあってはいるものの、その目にはライバル心が込められていた。


(この人たち、仲はいいんだよなぁ。恋敵じゃなくて普通の友達だったらもっと楽しかっただろうに)


 どこか他人事のように考える鈴村であった。


「で!? 鈴村君!」


「は、はい、何でしょうか綾瀬さん」


「私とみどり先輩、どっちが似合ってますか!」


「え、どっちって……」


「そうです! はっきりしてください!」


 綾瀬と琴原は鈴村に言い寄った。


「あ、綾瀬、一回落ち着けって。琴原先輩も。飯田会長から言われたこと忘れたんですか?」


「言われたこと? ……ああ、『フェアにいこう』だったっけ。そう、フェアね。私は初めからフェアにいこうとしていたよ」


「私もフェアにいこうとしていました」


 綾瀬はそんな嘘丸出しの琴原の言葉にカチンときた。


「でもねぇ! みどり先輩が先に仕掛けたんですよ! そんな大きいおっぱい強調させるようなワンピースで来ちゃって! 鈴村君をその大胆でセクシーな姿で堕とそうとしてたんでしょ!」


「凛ちゃんだって、鈴村君のフェチわかっててその恰好なんですよね! 私知ってますよ、鈴村君がボーイッシュフェチなこと! 綾瀬さんなら絶対にやると思ってました!」


「……こりゃキリがない」


 鈴村は頭を抱えた。


 鈴村はこれがこのデート、もとい一泊二日の熱海旅行中ずっと続くのだと考えると頭が痛かったが、飯田の「フェアにいこう」という言葉が頭から離れず、この現状を受け入れるしかなかった。


(……どっちも幸せになる未来とか、来ねえのかなぁ)


 ふと、なかなか叶うことはなさそうなことを鈴村は考えた。


 もともとこの旅行は、「琴原が一歩リードしてしまった」という綾瀬の誤解から招いた旅行である。偶然とはいえ、綾瀬の知らないところで琴原と鈴村が会っていたことにより綾瀬が嫉妬をし、長谷川も巻き込んだ会議が設けられてしまった。


 その嫉妬に繋がることがなくなれば、皆仲良くできる。鈴村はそう考えてしまった。


(……でもそれじゃ、俺がタイムスリップしてきた意味がなくなる)


 その通りである。鈴村のタイムスリップは、未来で鈴村が綾瀬に失恋をしたことによるショックから引き起こされたもの。この未来を現実にするわけにはいかず、それを避けるために今まで努力をしてきた。


 鈴村が生徒会に入ったのも、その未来を変えるために過ぎない。


 鈴村は、綾瀬と将来を共にするという未来を手に入れないと、タイムスリップをした意味がなくなってしまう。


 それが、鈴村の本来の目的だからである。


 しかし、琴原が鈴村のことを思うことにより、鈴村が取る選択肢が変わってきてしまっていた。


 鈴村はいつの間にか、今を生きるこの時間が心地よいものになっていた。


 高校時代は友人こそ一人はいたものの、ほぼ他人と会話することなく、孤独な学生時代を歩んでいた。しかし、その心の中には常に綾瀬凛あやせりんがいた。


 鈴村は自分の人生には綾瀬しかいない、と思っていた。


 しかし、タイムスリップして生徒会に入ることになり、様々な人間と関わることにより、鈴村の中で()()()()()()()()()()()というものがかけがえのないものになっていた。


 そんな気持ちがあるからこそ、綾瀬と琴原には悲しい思いをしてほしくない、と考えてしまったのである。


 この旅行は、鈴村の気持ちを整理すると同時に、鈴村の気持ちをはっきりさせるものでもあった。


 現実は残酷である。


 鈴村は下を向きながらそんなことを考えていたが、ふと前を向いて綾瀬と琴原を見ると驚愕した。


(あれ、さっきまで喧嘩してたはずなのに、楽しそうに話してる)


 二人はあくまで『恋のライバル』である。お互いに鈴村を思う気持ちは負けるつもりがない綾瀬と琴原であったが、しかしそれは恋の話。それを除けば、とても仲の良い友達なのである。


「鈴村くーん! 何してるの置いてくよー」


「鈴村君、早く海行きましょう」


「……ああ、今行くよ」


 そうして三人は海へ向かった。




                   *




「そーれ! どうだー!」


「きゃっ、冷たいです! やりましたねー!」


 きゃっきゃとお互いに水を掛け合いながら海で遊ぶ綾瀬、琴原を見ながら、浜辺で休憩をする鈴村は言う。


「……俺もしかして青春してね?」


 オタクをこじらせすぎた考えである。友達として仲の良い男女が海に来ることはよくあることであり、とても特別なことではない。


 しかしそういった人生を歩んでこなかった鈴村は、本人が置かれているこの状況を「青春を謳歌するラブコメの男主人公」と思い込んでいた。


「いやぁ、俺もモテるようになったなぁ……」


 と感慨深くなっていた鈴村の顔に、突然勢いよくビーチバレーボールがぶつかってきた。


「いっっっった!!!!」


 あまりの勢いに吹き飛ばされる鈴村。のそのそと立ち上がると、鈴村の左頬は赤く腫れあがっていた。


「だ、大丈夫ですか!? すみません、ちょっと力強く打っちゃったみたいで!」


「ははは、大丈夫、大丈夫ですよ。気にしないでください」


 鈴村はそう言っていたが、足元はふらついていた。


「ほんとにすみません! 何かお詫びをしたいんですけど、今時間なくて……。すみません!」


「いやいや、ほんとに気にしないでいいですから」


 と、あまり前が見えていない鈴村は答えた。


 ビーチバレーボールを勢いよく叩き鈴村の顔にぶつけた張本人はその様子に慌てていたが、時間がないのも事実だったのか、更に謝罪をしてその場を去った。


「……なんか今の聞いたような声だったな」


 ふとそんなことを考えていた鈴村だったが、とんでもない衝撃を受けたおかげで思考がまともにできていなかった。


 そんな様子を、綾瀬と琴原は見ていた。


「だ、大丈夫? 鈴村君。顔すんごい腫れてるよ」


「こ、これは大変です……。救護室に行きましょう」


「いや、本当に大丈夫だから……。綾瀬達は遊んでてくれ」


「で、でも……。ていうか、鈴村君は遊ばないの? せっかくの熱海だよ? 海だよ?」


「あー、ごめんな綾瀬。俺あんま暑いの得意じゃなくて……」


「そういえば鈴村君、昔からインドア派だったよね。あまり外で遊びたがらなかったし」


「え、そうなんですか?」


 琴原のその言葉に、綾瀬が()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということに改めて気づいてしまうが、その焦る気持ちをぐっと抑えた。


「鈴村君はね、昔からゲームがめちゃくちゃ得意だったんですよ。恐らく実家でも相当やりこんでたと思います。私が施設で初めて鈴村君と会ってからも、ずっとゲームで遊んでましたね」


「あー、そういえばそんなこともあったなぁ。綾瀬も俺と同じくらいゲームがうまくて、毎日一緒にゲームやってたな」


 鈴村は、施設であったことを思い出していた。


 そしてその過去話は、意図せずとも琴原の心をえぐった。


(……私の知らない鈴村君の過去だ)


 琴原は改めて自覚してしまった。綾瀬とは鈴村と共に過ごした時間が違うのだと。


 鈴村と綾瀬は小学生から高校入学に至るまで常に同じ学校に通っていた。かくいう琴原も中学は鈴村と同じであったが、学年が違うため関わることはほぼなく、共に過ごした時間は皆無に等しかった。それこそ、長谷川との一件で関わった数十分程度だけである。


 つまりこの小学生から高校で知り合うまでの十年間弱という、とても長い時間の差が既に琴原と綾瀬の間には生まれてしまっているのであった。


(私が初めて鈴村君と会ったのは中学二年の時。そのとき鈴村君は中学一年。緑ヶ丘学園高等部にいるって知った時は本当にびっくりしましたが、こんな気持ちになるなら、やっぱりあの時、ちゃんとお礼を言ってもっと仲良くなっておくべきでした)


 今さらながら琴原は後悔していた。


 この埋められるわけの無い差をどう埋めようか必死に考える琴原であったが、その解は見つからない。


「……みどり先輩、どうしたんですか?」


 琴原の暗い顔を見て、綾瀬は言った。


 鈴村も心配の顔をしていたが、二人を余計に心配させまいと琴原は嘘の笑顔を見せた。


「大丈夫です、何でもありません。熱中症にでもなったんでしょうか。少し頭がふらつきまして」


「だ、大丈夫ですか!? 確かに今日はいつになく暑いですしね……。鈴村君もこんな状態ですし、一旦涼しい場所に行きましょう」


「だから俺は大丈夫だって……。でも琴原先輩が心配だ。少し涼しいところに移動しよう。琴原先輩、立てますか?」


 そう言って、鈴村は琴原に手を差し伸べる。


 鈴村からすればそれは一つの介抱に過ぎなかったが、琴原から見ればそれは一番鈴村にしてほしいことであった。


(……私と、一緒に遠いところに行ってほしい)


 琴原の独占欲が、一瞬ながら頭をよぎった。


 と、そんな一瞬の気の迷いに自分がびっくりしたのか、琴原は首を横に振って気を取り返した。


(だ、ダメです! 凛ちゃんとは正々堂々、真正面から勝負すると決めたんです! そんな抜け駆けみたいなこと、しちゃダメなんです)


 抜け駆け。琴原はその言葉に引っかかっていた。


(……やっぱ、凛ちゃんから見ればあの日の出来事は抜け駆けだったんでしょうか)


 偶然買い物中の鈴村一家と遭遇したあの日のことが蘇ってくる。あれを綾瀬は「浮気」と称していたが、あれは一種の「抜け駆け」と思われても仕方がなかった。


(私も、逆の立場だったらあれを『抜け駆け』として捉えるんでしょうか。……いえ、捉えるでしょうね)


 琴原は自分の気持ちに素直になっていた。


 綾瀬がこれまでに取ってきた「嫉妬心」からくる行動のことを琴原は少し他人事のように感じていたが、琴原も逆の立場になれば似たようなことをしただろう、と考えていた。


 それほどまでに琴原の鈴村に対する気持ちは本物であり、独占したいという気持ちが強くなっていた。


 琴原は差し伸べられた鈴村の手を掴み立ち上がる。


「大丈夫そうですね。とりあえずあそこの海の家に行って涼みましょうか」


 琴原は「はい……」と言って歩き出した。鈴村はその手を離さなかった。


「すみませーん。三人入れますか?」


「はいはーい、どうぞこちらへー……って、鈴村!?」


「えっ、長谷川先輩!? なんでここに!?」


「それはこっちのセリフだよ! みどりも、綾瀬さんまで!?」


「……あー、そういえばこの辺って杏里ちゃんの実家の近くでしたね」


『そうだったんですか!?』


 長谷川杏里はせがわあんりの実家は熱海にあった。


 長谷川は綾瀬のあの一件の後、帰省のついでに海の家の手伝いをしていたのであった。


「皆さんお久しぶりです。鈴村も久しぶり」


「久しぶりです。と言ってもあの日からそれほど日にち経ってないですけどね。長谷川先輩はここで何やってるんですか? バイト?」


「そんなもんじゃないよ……。実家の手伝い。うちの実家定食屋やってて、毎年夏になるとこの海の家で店出すことにしてんのよ」


「ああ、なるほど。だから店の名前も『海の家 HASEGAWA』なんですね」


「そのまんますぎる名前だからもう『海の家』だけでいいじゃん、って私は言ったんだけどね……。お父さんたちなぜかここにめちゃくちゃ拘ってて……」


 自分の店の宣伝も兼ねているのだろう、と鈴村は直観的に思った。


「ご注文は? ……みどりは顔色悪そうだね。何か冷たいものでもサービスしよっか?」


「いえ、大丈夫です。ちゃんとお金払いますから。私は……、このかき氷で」


「じゃあ私もそれで」


「同じものを俺もお願いします」


「りょーかい。お母さーん、かき氷三つ入りましたー」


 そう長谷川が言うと、長谷川の母らしき声が遠くから「はいよー、お待ちあれー」と言っているのが聞こえた。


「あ、ついでに冷やし中華もねー」


「ちょ、それ頼んでないですよ」


 鈴村が慌てて長谷川に言う。


「いいんだよ。鈴村はあの一件のお礼を納涼祭の協力でチャラにしてくれるつもりだったと思うけど、私自身それが許せないんだ。だから他のことでお礼させて」


「……じゃあ、お言葉に甘えて」


 その鈴村の言葉に対し長谷川はニコッと笑い、厨房へ入っていった。


 長谷川と鈴村の様子を見て、綾瀬と琴原はこそこそと話を始めた。


「ね、ねえみどり先輩。まさかとは思いますけど……」


「余計なことを考えてはダメですよ凛ちゃん。あの一件を解決してくれた本人とは言えど、杏里ちゃんは私の気持ちを知っておきながらそんなことはしません」


「あ、じゃあみどり先輩の気持ちを知らなかったら、長谷川先輩は鈴村君に告る可能性があるってことですか」


「だからなんで言わなくていいことをそうやって言うんですか!」


 琴原は思わず叫んでしまったが、こそこそ話だったため鈴村には聞かれていなかった。


 綾瀬は琴原に、「とりあえず声抑えて!」と言いながら自分の人差し指を琴原の口に当てた。


「……でも正直、杏里ちゃんが鈴村君のことをどう思ってるのかは私にもわかりません。この前ミドリモールで久しぶりに再会したときは普通に接していましたけど、特に違和感はなかったです」


「ですよねぇ……。でも、長谷川先輩は一応は鈴村君に助けられた恩人でもあるんですよね」


「恩人は私も同じですけどね。まあ捉え方によってはそうなりますね」


「そうなれば、長谷川先輩も鈴村君のことを意識するのも納得できるのでは……」


「…………そう言われるとそうにしか思えなくなりました」


 だんだんと琴原の自信は不安へと変わっていった。


 その頃、長谷川はというと。


「いやぁ、こんなところで鈴村とまた会えるなんて。感謝してもしきれてないんだ。ちゃんと行動で感謝を伝えないと」


 鈴村に対して恋愛感情ではなく、「助けてくれた恩人」という気持ちだけを抱えていた。




                   *




「いやー、冷やし中華美味しかったねー。私お腹いっぱいだよー」


 そう言いながら、綾瀬はお腹をポンポンと叩いた。


「凛ちゃん、少し食べすぎだと思いますよ。……確かにおいしかったですけど」


 かく言う琴原も、綾瀬に負けず劣らずの量を食べていた。


「綾瀬も琴原先輩も、こんな暑いのによく食欲出ますねぇ……」


「あれ、そういば鈴村君、あまり食べてなかったね」


「いやぁ、さっきボールぶつけられたときの頭のふらふらが治らなくてさ……。熱中症にもなったのかわからないけど、あんま食欲なくて……」


「そうだったんですか!? やっぱり早く救護室に連れて行ったほうが……」


「いや、大丈夫です。もう少し休ませてくれれば落ち着くんで」


 そう言って、鈴村は琴原の提案を拒否した。


「うーん、そうは言っても……。やはり顔色悪いですよ」


「心配ありがとうございます、琴原先輩。俺は大丈夫なんで、琴原先輩たちは先に遊んでてください。俺も後で合流します」


「鈴村君がそう言うならいいけど……。……じゃあみどり先輩、行きますか!」


「……そうですね。鈴村君、あまり無理はしないでくださいね」


「はい」


 そう言って、綾瀬と琴原は浜辺へ戻った。


「…………浜辺かぁ」


 ふと、鈴村は納涼祭二日目の夜のことを思い出していた。




『鈴村君。私たち、頑張ります。だから、鈴村君も私たちのこと、しっかり見ていてくださいね』




 そんな綾瀬と琴原の言葉が、鈴村の頭から離れないでいた。


「……見てるよ、しっかり。あの日から今までずっと」


 鈴村はずっと考えていた。いずれはどちらかを選ばないといけない未来が来ると。そして必ずどちらかは酷く悲しみ、どちらかは大いに喜ぶと。


 そんな未来が見えていた。


「……別に『人生の選択肢』に提示されたわけじゃないけど、これだけは何となく予想がつく未来だな」


 思えば、綾瀬、琴原とどこに行くかの選択肢を提示された時点で、訪れる未来は変わらなかったのかもしれない。


 どの道を選んだとしても、三人で行動を共にし、鈴村自身の二人に対する気持ちの整理がつき、そして答えを出す。


 これがどれを選んでもたどり着く変えられない「未来」なのだと鈴村は考えた。


「やっぱりいくら考えても、なぜ【選択の簡易的結果】と【選択の結果】が記載されなくなるときがあるのかがわからない……。どれを選んでも未来が変わらないから、とりあえずどれでもいいから選べ、って言ってるようなもんなのか?」


 しかしその予想は鈴村自身も少し納得のいく答えであった。


「……ん? ちょっと待てよ? 俺今何考えてた?」


 ふと、鈴村は自分が無意識に思ったことに違和感を覚えた。


「いずれは綾瀬、琴原先輩のどちらかを選ばなきゃいけない。その結果、どっちかは悲しみ、どっちかは喜ぶ……。…………なんで俺、綾瀬を選ぶって直観で思わないんだ?」


 それは鈴村の気持ちが大きく変わるきっかけになった。


 鈴村は綾瀬のことを思ってタイムスリップしてまで未来改変をしようとした。そのために様々な努力、行動を取ってきた。


 しかし、鈴村は気づいてしまう。そんな恋愛の選択肢に、いつの間にか琴原が入ってきていることを。


 今までの鈴村であれば、どんな選択肢を提示されたとしても、綾瀬と結ばれるための道を選んできていた。


 しかしながら、その提示された選択肢を見るたびに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という気持ちが芽生えていた。


「俺、もしかして、琴原先輩のことも、好きになっちまったのか……!?」


 自分の気持ちの整理をした結果、思いがけない結論に至ってしまう。


 しかし、いくらその結論を否定しようとしても、鈴村の頭から琴原の顔が離れることはなかった。


「違う……! 違うんだ……! 俺は綾瀬が好きだ……! 綾瀬のために選択をしてきた……! なのに、なのに何で……!」


 鈴村は思わず涙が出る。




「なんで、琴原先輩を選ばない未来を想像すると、こんなに胸が苦しいんだ……!」




 鈴村の気持ちが、大きく揺れ動く瞬間であった。


 受け入れてはいけない気持ち。しかし、受け入れないといけない気持ち。


 鈴村の言う「どちらかが悲しみ、どちらかが喜ぶ」というものは、「自分は綾瀬を選ぶから琴原が悲しみ、綾瀬が喜ぶ」というものであった。これは綾瀬に対する気持ちが初めからあったから考えられていたものである。


 しかし、それは以前の気持ちに過ぎない。あるはずのない()()()()()()が、鈴村の気づかぬうちに現れてしまっていたのであった。


「どーしたよ鈴村。めちゃくちゃ暗い顔してんじゃん。熱中症? 氷袋でも持ってこようか?」


「……長谷川先輩」


 そんな鈴村を心配しに、長谷川は鈴村に声をかけた。


「……長谷川先輩は、琴原先輩が俺のことをどう思ってるか、知ってるんですよね」


「もちろん。みどりとはあの後からずっと一緒に過ごしてきたからね。なんでも話したし、なんでも聞いたよ。だから、鈴村のことをどう思ってるかも知ってる。鈴村が考えてる以上にね」


「俺が、考えてる以上に……」


「みどりと仲良くなってから初めて知ったんだけどさ、みどりってやるって決めたらとことんやる子なんだよ。全て正々堂々と、真っ向勝負で挑んでいって、そして全てをつかみ取る。そっちの学校で成績トップになったのだって、生徒会に入るために一年のときめっちゃ頑張った証なんだよ」


「根っからの努力家ですね」


「そうだねー。まるで君や綾瀬さんと同じだね」


「俺と、綾瀬と同じ……?」


「三人ともしっかりと素晴らしい結果を出す努力家だよ。みどりから聞いたよ? 緑ヶ丘学園高等部への入学試験、鈴村は綾瀬さんと同率トップで合格したらしいじゃん」


「……琴原先輩、そんなことまで知ってたんですね」


「みどりは生徒会に入ってから知ったって言ってたよ。たぶん理事長さんが話したんじゃないかな」


 妙に納得のいく鈴村であった。


 長谷川は「それでさ」と話を続ける。


「みどりといろいろと昔話をしてきたんだけど、……あ、いじめてたことは別にしてね! あのことはなかったことにはできないけど、せっかく仲良くなったのに掘り下げるのはちょっと違うかなって」


「そんなことしたら長谷川先輩がいじめられますね」


「わ、私がいじめられるわけないでしょ!」


 謎に自信がある長谷川であった。


「でも、その昔話をするたびにちょくちょく鈴村の名前が出てきてたんだ。学年違うからあまり関わったことないはずなのに。みどりは、鈴村のことを今に至るまでちゃんと見てたんだよ」


「……そう、なんですね」


 そう言って、鈴村は晴天の砂浜で綾瀬と遊ぶ笑顔の琴原を見た。


「でもさ、みどりは鈴村の本当の気持ちを知ってるんだ」


「……俺が綾瀬を好きってことですか」


「そもそも初めて会ったときだって、鈴村は綾瀬さんを探してたんでしょ? それでいて綾瀬さんを追いかけるようにあの難関校に合格しちゃうんだから、愛の力ってすごいよね」


「あの時は、綾瀬と離れたくない一心だったもので……」


「それでいいんじゃないかなぁ」


「……え?」


 長谷川の言葉に鈴村は思わず驚く。


「鈴村は綾瀬さんと一緒にいたいんでしょ? その気持ちは今も変わらないと思ってるよ」


「そりゃ、まあ……」


「でも、今はさらに悩み事がある。一緒にいたい相手の候補に、みどりも入ってきた」


「……なんでわかるんですか」


「なんでって、そりゃあんだけ聞こえる声で独り言言ってたら誰でも聞こえるよ」


「え? ……俺もしかして口に出てました?」


「うん。めちゃくちゃ聞こえてた。なんなら隣の席に座ってたお客さんニヤニヤしてたよ」


「なんでそれ早く言ってくれなかったんですか……」


 鈴村は、「やっちまった……」とさらに顔が暗くなった。


「大丈夫大丈夫! ここら辺で聞こえてただけで、あれだけ離れてるみどりたちには聞こえてないはずだよ」


 そう言いながら、長谷川は琴原たちのことを見た。


 琴原は長谷川の視線に気づき、無邪気に手を振る。綾瀬も同じく、長谷川に手を振った。


「……あの二人は本当に強いね」


「何がですか?」


 鈴村の問いに長谷川は答える。


「恋に対する強さだよ。曲がりなりにも目の前にいるのは同じ人を好きになった恋敵だよ? 本来なら蹴落とす相手じゃん」


「まあ、それは確かに」


「でも、二人ともそんな素振りを見せてない。そんなことを考えてるようにも見えない」


(さっき服装のことで揉めてたけどな……)


 独占欲は別の話なのか、と悩む鈴村であった。


「お互い、ライバルだけど大切な友達でもあるんだ。その関係は二人とも崩したくないんだと思うよ」


「そういうもんですかね」


「二人が特殊なのかもしれないけどね。みどりは友達をとても大事にするから、私とも学校が違っても時間を作って会ってくれてる。だからこそ、綾瀬さんともずっと友達でいたいんだと思うよ」


「蹴落として関係を崩したくない、ってことですか」


「そうだねー。蹴落とした相手がみどりにとってどうでもいい相手だったら容赦なく鈴村を奪いに来るだろうけど、綾瀬さんはみどりにとってとても大事な友達なんだよ。だから蹴落としたくない。関係を崩したくないんじゃないかな」


「…………なるほど」


 長谷川の言葉に、だんだんと琴原の気持ちを理解する鈴村であった。


「綾瀬さんも、みどりのことを先輩として尊敬していて、友達として仲良くしている。いいことじゃん、こんなに平和な恋のライバル関係なんて」


 長谷川の言葉は的を射ていた。女同士の恋のいざこざは、事が発展しすぎると大事件に繋がる。鈴村はそんな女同士の恋のいざこざが最終的に警察沙汰になり、逮捕される結果になるのをニュースでよく見ていた。そのため、この平和な状況はむしろ奇跡なのだと察した。


「で? 結局のところどうなのさ」


「どうって、何がですか」


 長谷川は、「え、ここまで話してまだわからないの?」という顔をしていた。


「だから、鈴村がみどりか綾瀬さん、結局どっちを選ぶのかってことだよ」


「……それは……」


 それは、鈴村自身も答えを出すのに渋っていることだった。


 この日が訪れるまで、鈴村も一生懸命二人のことを考えていた。鈴村は綾瀬と一緒にいたい。しかし、いつの間にか選択肢に入っていた琴原のことを傷つけたくもない。


 だが、いずれにしてもどちらかを選ばないといけない日は必ず来ると考え、怯えていた。


「……俺には、まだよくわかりません」


「……ヘタレだなぁ」


「へ、ヘタレってなんですか、失礼な」


「いやぁ、中学の頃の鈴村と今の鈴村を比べると、性格がまるで真逆で笑っちゃいそうだよ」


「……笑っても構わないですよ」


「え?」


「俺は自分の気持ちに整理がつかないでいます。もちろん、俺は綾瀬が好きで、綾瀬とずっと一緒にいたい気持ちでいます。でも、綾瀬を選んだら琴原先輩が悲しみます。その悲しむ顔を想像すると、なんでか、心が痛むんです」


「……なるほどねぇ。やっぱりみどりのことも好きになっちゃったんだね」


「そう、かもしれないです」


 認めざるを得ない事実を鈴村はついに認めた。


「あ、じゃあさ。こんなのはどう? 君らこっちに泊まってくんでしょ?」


「え? ああはい、一泊二日の予定で、旅館も予約してます」


「あれ、まさかとは思うけど男女別々で部屋取ってないよね」


「何言ってるんですか。曲がりなりにも年頃の男女ですよ。しっかり男女別々で部屋取りました。その分金かかりましたけどね」


「あーあ……」


「え、何その反応」


 長谷川は頭を抱えながら呆れかえっていた。


 長谷川はそのまま、スマホを取り出して鈴村に問いかける。


「鈴村、泊まる旅館どこ?」


「え? ここですけど」


 そう言って、鈴村は宿泊予定の旅館のサイトをスマホで見せた。


「あーここね……。ちょっと待ってて」


「? はい」


 長谷川はそのまま厨房へ行ってしまった。


 その数分後、綾瀬と琴原が鈴村のもとへ戻ってきた。


「はー疲れたー。みどり先輩体力すごいですね……」


「凛ちゃんもですよ……。あれだけ走り回ってまだ体力あるんですね」


 炎天下の中延々と遊んでいたため、二人は疲れ果てていた。


 琴原は少し熱中症になったのか、水をがぶがぶと飲んでいた。


「お待たせ鈴村。……って、みどりたちも戻ってたんだ。ちょうどいいや。君たちに朗報だよ」


「? 朗報? なんですか?」


 鈴村は長谷川に問う。


 長谷川はそんな鈴村の問いに、大声で答えた。




「君たち三人は今日、私の実家が運営する旅館に泊まってもらいます!」




『……え?』


 ぽかんと口を開けながら驚く三人。


 そんな中、気を取り戻した琴原が長谷川に強く問いかける。


「ちょ、ちょっと杏里ちゃん! 杏里ちゃんの旅館に泊まるってどういうこと!? わ、私たち泊まる旅館あるんですよ!?」


「そうですよ長谷川先輩! いきなりそんなこと言われても納得いきません!」


 続けて綾瀬も抗議していた。


 長谷川は「まあまあ、聞きなさいな」と言って二人を落ち着かせた。


「鈴村から聞いたんだけど、今日君らが泊まる旅館、男女別々の部屋取ったんでしょ?」


「そ、そりゃ何かあったら、困りますし……」


 綾瀬が言う。琴原も顔を赤くしていた。


「恋する乙女たるもの、そんな控えめな行動を取ってちゃダメ! ということで、私の実家が運営する旅館に泊まってもらうことになりました。はい鈴村! 感謝の拍手!」


「できるかぁ! 事情を説明してください!」


 あまりの無茶ぶりに叫ぶ鈴村であった。


「三人の気持ちは全て聞きました。そしてその気持ちにより、鈴村は困っています。そこで! 私が助け船を出そうというわけなんです」


「それ感謝するべきなんですかね、複雑な気分なんですけど」


 鈴村が言うが長谷川は聞いていなかった。


「せっかくの旅行なのに、鈴村がこんなんじゃ台無しに終わること間違いなし。理由は気持ちの整理ができていないから。なら、男女別々の部屋なんて言ってないで、同じ部屋で寝ればいいじゃん」


『お、同じ部屋で!?』


 三人口を揃えて驚く。


 長谷川は、「あ、店の中だから声は控えめにしてね」と注意を入れていた。


「そ、そもそも長谷川先輩の実家って定食屋じゃないんですか?」


 鈴村が恐る恐る長谷川に問う。


「ああ、それ? 厳密には実家っていうより、言うなれば副業みたいな感じかなぁ」


「ふ、副業?」


「私の実家の本業は旅館運営。それなりに大きいから人手も少し余っててさ。それを無駄にしないようにって、お父さんが始めたのがその定食屋なんだよ」


「……なるほど」


「君らももう疲れたでしょ。手配してあるから、これから旅館に行くよ!」


『え、ほんとに?』


「うん、ほんとに。これは鈴村のお礼でもあるんだ。感謝してくれよな、鈴村」


「あ、ありがとう……?」


 お礼を言うべきかそうでないか悩む鈴村であった。




                   *




 そんなこんなで鈴村たちは、長谷川に連れられて宿泊先である旅館に到着した。


「うっわぁ、でっけぇ……」


「どう? すごいでしょ」


「あ、杏里ちゃんの実家ってこんな立派だったんだ……。知らなかった」


 琴原にも見せたことがない長谷川の実家は、熱海の中でもかなり有名な豪華な旅館であった。


 聞くところによると、予約は二年後まで埋まっており、さらにその宿泊費も当初鈴村たちが予約していた旅館よりも二十倍の値段がする旅館だった。


「こ、こんなところに飛び込みで泊まっちゃっていいんですか?」


「もっちろん。お父さんには話をつけておいたから、心配しないで」


「で、でも、あほら、宿泊予定だった旅館にも連絡してないし……」


「あー、あっちは大丈夫。さっき連絡したら、『お得意様が先ほど当日予約したいと仰っており、どうしようか悩んでいたところでした』って言ってたから、そっちはキャンセルしておいたよ」


「……そんな都合のいい話があるんだ」


 あるのである。


「とにもかくにも。君らにはしっかりやるべきことをやってから帰ってもらうからね。何泊してもらっても構わないよ。もちろんお金も大丈夫」


「そんなこと言って、杏里ちゃんお父さんに怒られない?」


「全ては親友のためだ。みどりたちが満足してもらえればこっちとしては願ったり叶ったりだよ」


 鈴村は、「もしかしなくても長谷川の実家って大金持ち……? そんなご令嬢に中学の頃喧嘩吹っ掛けたのか……?」と冷や汗をかいていた。


 長谷川は鈴村たちにルームキーを渡して言った。


「じゃあ私は海の家戻るから。あまり離れすぎちゃうとお母さんに迷惑かかっちゃうからね」


「すみません、長谷川先輩。その、いろいろ気を使わせちゃって」


「いいってことよ。じゃあ私は戻るねー」


 そう言って、長谷川は鈴村たちに背を向けた。


 鈴村は、長谷川に向かって言う。


「あの、長谷川先輩。……本当にありがとうございます。俺、ちゃんと気持ちの整理します。そして、答えを出します」


「……うん、頑張ってね、鈴村」


「あのぉ、鈴村君、気持ちの整理って、何ですか?」


「そうだよ鈴村君。私たちにも説明して」


「……整理ができたら伝えるよ」


 そう言って、鈴村は渡されたルームキーに書かれた番号の部屋に向かった。


 とここで、長谷川は重大なことを鈴村に伝える。


「あ、そうだ鈴村、言い忘れてた」


「はい、何ですか?」


 長谷川はニヤニヤしながら言った。




「ここ、混浴OKだから、間違ってもみどりたちが入ってるときにお風呂入っちゃダメだよ」




「……な、なんでそれ早く言わな……」


「じゃ、あとは頑張ってねー」


 鈴村の言葉を遮りながら、長谷川は海の家へと戻った。


「…………とりあえず、荷物置きに行きますか」


「そうしましょうか」


「そうしましょう」


 三人は、ギクシャクしながら部屋へと向かった。

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