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一翼のハイマヴィス  作者: かる
聖石争奪戦
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㉒無干渉通告

 「順調に回復してるみてぇだな。安心したぜ」

 見舞いにやって来たキーラに、ヤクはベッドの上で元気そうに笑ってみせた。

「うん、ちょっとならもう一人で歩けるよ! こんな風に……いたたっ」

「馬鹿、調子に乗るな! 傷口が開いたらどうするんだ」

 シキがヤクをベッドに押し戻す。ヤクはごめんと言って素直に持ち場に戻った。

「シキくん、改めて助けてくれてありがとう。セナくんも。二人のおかげだよ!」

「私からもお礼を言うわ。ヤクを助けてくれて、本当にありがとう!」

 王子と王女に頭を下げられて、セナはもちろんさすがのシキも気まずそうに後ずさった。

「いや、気にするな……。そもそもヤクがこうなったのは……」

「で、話ってなんだよ」

 シキの言葉をハツが遮った。さすがの彼も療養中の王子の部屋に悪意を持ち込んだわけではなく、純粋な身勝手が発動しただけである。

「ああ、これは国王陛下と話したことなんだが」

 そう言ってキーラはヤクたち五人をぐるりと見回した。部屋には彼らしかおらず、部屋の前も人払いしてある。

「結論から言う。今後、ジェイスト関与の可能性がある事案にはお前たちを一切近づけないという方針をとることになった」

「えっ」

 五人は揃って声を出した。

「どういうことだ? この間国王に言われたことと真逆じゃねぇか」

「いや、陛下には神石を守るよう言われただけだろ」

 シキはツッコミを入れたものの、心情はハツと似たり寄ったりだった。

「色々と面倒なことになってるらしくてな。何から話すか……。まず、今回の件についてだが」

 キーラは頭をがしがしと掻いて説明を試みた。

「そもそも、ジェイストの監視は近衛騎士団が担っていたんだ。遠征の多いトキジヤ騎士団と違ってあいつらは国内に常駐だし、ジェイストの動きが目立つようになってきたのはちょうどトキジヤが不在のここ数年のことだったからな」

「え? じゃあなんでキーラさんは今回帰国したの?」

 ヤクが尋ねる。

「帰国の理由の一つは聖石だ。この間、王立学園で爆破事件が起きたんだってな。神石が狙われたことから陛下は、今後聖石が狙われる可能性も考え始めた。そんで近衛騎士団に聖石を置いている各地の監視に当たらせたんだが、問題は近衛騎士団が聖石や神石の存在を知らないということだ」

「そうだったの⁉︎」

「ああ。まあ機密情報だから無理もない。トキジヤ騎士団だって全員が知っているわけではないしな。とにかく、そのせいで色々と指示が出しづらかったらしい。そこで俺に帰国命令が下ったんだ」

「そういうことだったんだ……」

「そうだ。しかし」

 そこでキーラは大きなため息をついてヤクとヤコをじろっと見やった。

「急いで王宮に駆けつけた俺に真っ先に下された命令が何だったかわかるか? 王女と王子がジェイストの潜む森にいるから救出を頼みたい、だとよ」

「う……」

 慌てて目を逸らす二人にもう一度ため息をついて、キーラは肩をすくめた。

「森を監視していた近衛騎士団の騎士がお前たちを見つけて報告したから良かったものの、そうでなけりゃ今頃どうなってたかわからないぜ? 陛下はいざとなれば森全体を焼き尽くすことも考えていたようだったしな」

「や、焼き……」

 震え上がるヤクの隣で、シキは腑に落ちた様子で頷いた。

(そうか。森の中で感じた妙な視線は近衛騎士団の騎士たちのものだったんだな)

「事のあらましはわかったけどよ、それとオレたちがジェイストに関わらねぇってのとがどう繋がるんだよ?」

 ハツの問いに、キーラは心なしか表情を険しくした。

「今回の件で、ジェイストには協力者がいるらしいとわかったんだ。それが……俺たちの予想が正しければ、厄介な奴らでな。お前たちに関わらせるべきではないとのことで俺と陛下の意見が一致した」

「厄介?」

「お前たちが聖石についてどこまで理解してんのか知らねぇが、そもそも神石や聖石を手に入れようとするってのは相当奇妙な事なんだ。確かにあれらは莫大なエネルギーを持っているが、それゆえに人の手には負えねぇ。兵器の動力源にするとか、そういう都合の良い加工はできるはずねぇんだ。そのくせ奴らは聖石を壊したり間接的にエネルギーを吸収したりするんじゃなく、手に入れようとした。しかも王宮による定期的な調査によれば、近年あの聖石の効力は著しく低下しているらしい。だが、奴らはそういうことを全て把握した上で入手を試みた……これがどういうことかわかるか?」

 ヤクはうーん、とうなって腕組みをした。

「ジェイストの人たちは、壊れかけた聖石を治してエネルギーを利用する方法を、知ってる……?」

 ヤクの呟きにキーラが頷く。

「俺や陛下も同意見だ。そうなると問題は、なぜ奴らがそれを知っているかってことになる。メジアストでも有数の学者たちが未だ手がかり一つ掴めずにいるそんな技術を、なぜ平民ばかりのジェイストが保有しているのか……」

「なるほど、それで協力者か」

 ハツが納得したように呟いた。

「そうだ。そして、メジアストを超えるレベルの技術力__ことハイマに関する技術でそれほど突出した技術を持つとなると__恐らく協力者は、アルテーズ公国の人間だ」

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