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一翼のハイマヴィス  作者: かる
聖石争奪戦
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⑫メンバー紹介

 はじめに口を開いたのはシキだった。

「さてと、お前たちには聞きたいことがたっぷりあるな」

「はははっ、さすがはジェージニアントのお坊ちゃん。知的好奇心ってやつ?」

 剣を突きつけられているとは思えない能天気さで、アスサは冗談めかしてそう言った。

「その軽口がいつまで続くかも興味が唆られるが……まずはお前たちジェイストについて話してもらおうか」

「仕方ないなぁ。じゃあまずはメンバーを紹介するよ。まず俺、アスサでしょ? で、そこにいるミグロ。俺たちは実力派の諜報員、『情報屋 ルギア従兄弟』っていうの。知ってる? あと……」

 妙に饒舌なアスサの言葉が不意に途切れた。と、次の瞬間、鋭い音がして鼻先の空気が切り裂かれた。

「なっ⁉︎」

 咄嗟に一歩飛び退く。その隙をついてアスサはするりと拘束から抜け出した。しかし目の前に現れた襲撃者に、シキはそれ以上動けなくなってしまった。ハツもまた驚愕した声を上げる。

「ガ、ガキ……?」

 二人を見据えて立っているのは、まだ十にも満たないような子どもだった。けれど場違いな年齢以上に目を引くのはその容姿である。少年の髪はまるで老人のように真っ白で、風にそよぐその毛先は白粉を塗りたくったような血の気の失われた肌に紫がかった影を落とし、色素のない瞳はどこか虚ろに宙を彷徨っているかに見えた。およそ人間離れしたその姿に、ハツは白昼夢でも見ているかのような錯覚に陥った。

(なんなんだコイツ……薄気味悪いガキだな……いや、それよりもさっきシキを襲ったあの動き……用心しといた方がいいな)

 じっと睨み合いを続ける三人の間に割って入ったのは案の定アスサだった。

「ナイスタイミング〜! ってことでさっきの続きだ。もう一人のジェイストメンバー、イオさ。小さいけどこれでなかなか腕が立つ」

「僕はジェイストの正式なメンバーとしては認められていません」

「あら」

 アスサはわざとらしく目をぱちくりとさせてから、大して気にした風もなくのんびりと歩き出した。

「ま、とにかく助かったよ。じゃああとは実戦部隊の君らでよろしくね? 俺は王女様を追うからさ」

「お前っ待て……てかシキ! 何してんだよ! シキ!」 

 ハツに怒鳴られてシキははっとしたように顔を上げた。

「あ、ああ、すぐ追いかける」

「たく腰抜け坊ちゃんが……!」

 森の奥へと消えていくアスサを追うシキを忌々しそうに見やってから、ハツは未だ押さえたままのミグロを見下ろした。



 「みーつけた!」

 森の中を駆けていく後ろ姿を捉えて、アスサはほくそ笑んだ。

(やっぱり王宮へ向かってるようだな。警備体制の整った王宮で一時的に聖石を保護し、ついでに釣られて出てきた俺たちを一網打尽……てとこかな? 悪くはない作戦だけど、見え見えじゃあ意味ないね)

 実戦向きでないとはいえ、アスサにも人並み以上の身体能力は備わっている。前方を進む背中との距離もだんだんと縮まってきた。と、そこで金髪が弾んでその足が止まった。

(しめた! 崖で行き止まり……!)

 アスサは走るのをやめて大股で歩きながら、お得意の芝居がかった調子で話しかけた。

「またお会いしましたね、王女様」

「君は……! 追って、きたのね」

「そう後ずさったら危ないじゃないか。こんな崖っぷちじゃあいくら王女様といえど落ちたって不思議じゃない、だろ?」

 軽い口調の割に目の笑っていないその言葉は、忠告ではなく脅迫を意味していた。

「さあ、今度こそ聖石を渡してもらおうか」

「誰が、き……あなたたちなんかに!」

「なんかとはひどいな。よく考えてみてくれたまえ。君ががむしゃらに逃げた先に『偶然』この崖があり、俺にこうして追い詰められることになったわけだろ? これって、君らの大好きな神の思し召しとやらじゃないのかい?」

「え……あ、たしかに」

「え、納得するの?」

 相手があまりに素直に頷いたので、アスサは思わずツッこんでしまった。

(ちっ、ツッコミなんてリーダーにしかやんないのに! 腐っても王族だな、さすがに一筋縄ではいかないか)

 アスサがよくわからない苛立ちを覚えたところで、相手はでも、と口を開いた。

「神様の思し召しなのは、わたしが本当に聖石を持っていた場合だね」

「……何?」

 アスサは懐から例の探知器を取り出すと、方角を確認した。

(ここじゃない、南西の方……⁉︎ 確かに、遠回りではあるけど王宮に繋がってはいる……が、じゃあ、誰が運んでいるんだ?)

「安心しろよ。王女がちゃんと運んでくださってるぞ?」

「__ジェージニアント、追いついたか……。どういう意味かな?」

 アスサの背後から現れたシキは、もったいぶった仕草で人差し指を上げてみせた。

「言葉通りの意味さ。チガヤに道案内させながら王女は聖石を王宮へと運ぶ算段だ。お前が偽物を追いかけている間にな」

「偽物__」

 アスサがはっと崖の方に向き直った。

「お前まさか、」

「そう! 変装上手なんだ、僕!」

 フードをさっと取り外すと、王女とお揃いの金髪が溢れた。木漏れ日に煌めく細い髪を揺らして、ヤクは得意そうに笑った。

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