⑬再開して再会して
「……ふん、なかなかだね、ヤク・ルーニュ・フロンタイト。冴えない田舎貴族だと見くびってたよ」
「え、僕のこと知ってたの?」
久々に呼ばれた自身の偽名にヤクは驚きを隠せなかった。
「は? そりゃ……学園の爆破事件のとき、さんざ邪魔してくれたからね。情報収集くらいするさ。今度は素顔を見せてくれよ? 地下通路は真っ暗だったもの」
「へぇ……」
「おいヤク、敵に感心するな。アスサ、今度こそ終わりだ。大人しく捕まるといい。手荒な真似は面倒だ」
流れるようなツッコミから自分へと向けられた敵意丸出しの声音の温度差にアスサはテンポを掴み損ねたが、それでも飄々とした態度は崩れなかった。
「そうだ、せっかくあの時の思い出話をしたんだからついでにもう一つ。君たちには新人くんがお世話になったんだよねぇ、覚えてるかい?」
「おい、無駄話は……」
「あの時はつい厳しめに叱っちゃったけど? 俺、彼のことは結構買ってるんだよねぇ〜だってさぁ、情報収集が生死を分つ俺の世界で__」
ピィィィィィッ。
突如空気を破ったその音に、ぞくりと一つの予感が這い上がった。
「伏せろ!」
シキがそう叫ぶや否や、耳をつんざくような爆発音と鈍い振動が木々を揺らした。
「特能がバレても大差ないって、なかなか魅力的だと思わないかい?」
「ちっ……大した武力のないお前があっさり単独行動に踏み切るなんて奇妙だとは思ったが……そういうことか」
爆風で飛ばされてきた小枝や葉を払って、シキは身を起こした。その目の前でガサ、と黒い靴が草むらを踏み締める。視線を上げれば、真っ黒な服に身を包んだ銀髪の少年がシキたちを見下ろしていた。
「改めまして、メンバー紹介を再開しよう。この姿を見るのは初めてだろう? 我らが期待の新人、ルーヴィンくんだ。女装なしでもよく似合う三つ編みがチャームポイントってことで」
「……貴方はいつも一言余計なんですよ」
ルーヴィンはムスッとしてそう呟いたが、アスサはひらひらと手を振って歩き出した。
「ってことで後はよろしく、新人くん」
「待て!」
追いかけようとしたシキの前にルーヴィンが立ち塞がった。
「ジェージニアント、フロンタイト……この間はよくも僕の邪魔をしてくれたな? キサマらを葬るため、僕は今日ここに来た……」
シキはヤクを自分の後ろに回らせると、じっと身構えた。双方の緊張が頂点まで張り詰めたその時、ルーヴィンは後ろに飛び去って笛を唇に当てた。
「ちっ」
なす術なくまたも地面に身を伏せる。地響きと木々の折れる轟音の中で、ルーヴィンの甲高い笑い声がいやに耳についた。
「感謝すると良い! この国じゃあ火葬が主流だろう! 罪深きメジアストの国民として、その穢れた魂と共に永遠に去ね!」




