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一翼のハイマヴィス  作者: かる
第6章 聖石争奪戦
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③夜更けの大冒険

 「ねぇヤク、ほんとに行くの?」

「もちろん! だって、ヤコは行くんでしょ?」

「そうだけど……」

 渋るヤコの顔を覗き込んで、ヤクは大きく頷いた。

「三日後なんて待ってられないよ! 僕も行く!」


 あの夜の大冒険の後、ヤコはすぐさま例の説教臣下に王宮近郊の森にいた不審人物のことを話した。といっても、狙われたことは言わず、目撃したのも夜ではなく朝の冒険の帰りがけ、ということにしたのだが。それでもヤコにとっては真夜中に起きていることを咎められようとも伝えるべき一刻を争う事態だったのだが、臣下にとってはそうでもなかったらしい。彼はさほど動揺した様子もなく、三日後に調査団を派遣します、とだけ言った。

「三日後⁉︎ そんなんじゃダメよ、すぐに……せめて明日の朝に!」

 ヤコの抗議に臣下はふるふると首を振った。

「相手が武装勢力の可能性もありますから、トキジヤ騎士団を派遣いたします。彼らが遠征から戻るのは早くても明後日ですから、少々お待ちください」

「騎士団なら近衛騎士団がいるわ! 私の護衛をしてくれているのだもの」

「王宮近郊はトキジヤ騎士団の管轄なのです。この王国で最も実績と信頼のある、国王直属の騎士団ですからね」

 臣下の有無を言わさぬ口調に、ヤコはそれ以上の説得を諦めた。大人の頭が固いのは今に始まったことではない。

(こうなったら一人ででも調査してみせるわ)

 そう心に決め、出発の準備をしているところにヤクが部屋を訪ねてきたのだった。聞かれるがままに一連の流れを話し終えると、ヤクは自分も森へ行くと言い出したのである。

「ヤク、朝のお出かけとはわけが違うのよ? あの人たちは確かに私を殺そうとしていた……目撃者を殺さなきゃならないほど良くないことを企んでるのよ! どれだけ危険なことかわかるでしょ⁉︎ 」

「わかってるよ! だからこそ、ヤコを一人で行かせられるわけないじゃん」

 ヤクがきっぱりと言う。ヤコは少したじろいで足元に目を落とした。

「……止めないの? 私を」

 朝、街へ行こうと誘った時には渋っていたのに。俯くヤコの手を、ヤクはそっと両手で掬い上げた。

「止めないよ。だってヤコが行きたいんでしょ?」

 はっと顔を上げれば、幼い頃から見慣れた弟の顔がこちらを見つめていた。けれどもそれは記憶の中の危なっかしい子どもではなく、周囲に言われるような自身の鏡像でもなかった。ただ真っ直ぐに自分を見つめるその瞳は、遠い昔に兄の眼差しに浮かんでいた優しさを思わせるどこか懐かしい光を滲ませていた。

(ヤク、あなたは____)

 私に最も近い、別人なのね。

「みんなだって、おんなじ気持ちだよ」

 ヤクは不意にそう言って扉の方に目をやった。

「え?」

 つられて見てみれば、扉の影から人影が三つ抜け出してくる。

「ハツ……セナ……それに、シキも……。どうして……」

「ったく、ヤコにそのポンコツが付いたところで何にもならねーだろうが」

「怪我したらすぐに言ってくださいね! 僕が治しますから!」

「朝っぱらから叩き起こしといて今更仲間外れにする気か?」

 各々言いたいことを言ってのける。三人はヤクの隣に並ぶと、同じようにヤコを見つめた。ヤクが大きく頷いてみせる。

「ヤコ、一緒に行こう!」

「冒険の続きだ。今度こそオレが解決してやるよ!」

「調子乗るなよ、剣振り回すしか能ない脳筋のくせに」

「なんだとこの引きこもりっ」

「まあまあ」

 いつものようにいがみ合うシキとハツをセナとヤクが宥める。そんな四人のやり取りに思わず吹き出してしまってから、ヤコはそっと目尻を拭って呟いた。

「……ありがとう」

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