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覇狼、地を貫く  作者: 神箭花飛麟
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Ⅵ 兄弟の道

時代考証などはすべて集英社「アジア人物史 第5巻 モンゴル帝国のユーラシア統一」に拠ります。

1251年、春。

カラコルム。

モンケが、フレグを呼んだ。

「フレグ」

「はい、兄上」

「準備はできたか?」

「はい」

フレグが頷いた。

「兵も、物資も整いました」

「よし」

モンケが地図を広げた。

「ペルシャを攻める」

「アッバース朝を滅ぼし、西方を完全に征服しろ」

「承知しました」

フレグが頭を下げた。


遼西が、フレグの天幕に来ていた。

十六歳になった次男は、もう立派な技術者だった。

「フレグ様」

「ああ、遼西か」

フレグが笑顔で迎えた。

「投石機の準備は?」

「完璧です」

遼西が答えた。

「新型を二十台、用意しました」

「従来のものより、射程が二倍です」

「...!」

フレグが驚いた。

「二倍か」

「はい」

遼西が図面を見せた。

「この機構を改良して...」

フレグは、感心して聞いていた。

「遼西」

「はい」

「お前は、天才だな」

「ありがとうございます」

遼西が微笑んだ。

「フレグ様の遠征に、役立てれば嬉しいです」


遼舜の家。

遼西が、家族に報告していた。

「フレグ様の遠征に、同行することになった」

「...!」

星歌が驚いた。

「西方へ?」

「うん」

遼西が頷いた。

「技術者として」

「でも、危ないんじゃ...」

「大丈夫だよ、母上」

遼西が笑った。

「俺は戦わない」

「兵器を作るだけだ」

遼海が言った。

「遼西、気をつけろよ」

「うん、兄さん」

遼西が頷いた。

「兄さんこそ、南宋戦で気をつけて」

「ああ」

遼高が聞いた。

「遼西兄さん、いつ出発するの?」

「来月だ」

「...そっか」

遼高が寂しそうに言った。

遼希が、遼西の服を握った。

「西兄ちゃん...」

「うん?」

「寂しくなる」

「...ごめんな」

遼西が遼希を抱きしめた。

「でも、必ず帰ってくるから」

「手紙、書く?」

「うん」

遼希が頷いた。

「書くよ」


数週間後。

遼海が、クビライの元へ向かっていた。

二十三歳になった長男は、もう中堅の将軍だった。

バートルが、一緒に来ていた。

「遼海」

「はい」

「クビライ様は、どんな方だ?」

「聡明な方です」

遼海が答えた。

「知識が豊富で、判断も的確です」

「そうか」

バートルが頷いた。


中原。

大都(現在の北京)。

クビライが、宮殿にいた。

三十代の男で、知的な雰囲気があった。

「遼海」

「はい」

「よく来た」

クビライが笑顔で迎えた。

「お前の父、遼舜から聞いている」

「お前は、優れた将軍で、記録者だと」

「恐れ入ります」

遼海が頭を下げた。

「これから、よろしく頼む」

クビライが言った。

「南宋を攻めるには、時間がかかる」

「お前の知恵と経験が、必要だ」

「承知しました」

遼海が深く頭を下げた。


同じ頃。

フレグ軍が、出陣していた。

十万の大軍だった。

遼西も、その中にいた。

技術部隊を率いていた。

「遼西様」

部下の一人、アリフが報告に来た。

ペルシャ人の技術者だった。

「投石機の準備、完了しました」

「よし」

遼西が頷いた。

「次は、破城槌だ」

「はい」

アリフが走った。

遼西は、西の空を見た。

(これから、どんな土地に行くんだろう)


数ヶ月後。

フレグ軍は、ペルシャに到着していた。

最初の標的は、アラムート。

暗殺教団、イスマーイール派の本拠地だった。

フレグが、将軍たちを集めた。

「アラムートは、山の上にある」

フレグが地図を指差した。

「攻めるのは、困難だ」

「ですが」

副将のキトブカが言った。

モンゴル系キリスト教徒の将軍だった。

「遼西の投石機があれば、落とせます」

「そうだな」

フレグが頷いた。

「遼西」

「はい」

遼西が前に出た。

「投石機を、山の麓に設置しろ」

「城を、徹底的に叩け」

「承知しました」


アラムート包囲。

遼西の投石機が、火を吹いた。

巨大な石が、空を飛ぶ。

山の上の城に、次々と当たる。

「すごい...」

キトブカが呟いた。

「あんな高い所まで、届くのか」

「遼西の新型ですから」

アリフが誇らしげに言った。

数週間で、城壁が崩れた。

フレグ軍が、突入した。

アラムートは、陥落した。

暗殺教団の長、ルクン・アッディーンが、捕らえられた。

「フレグ...」

ルクン・アッディーンが震えていた。

「お前たちの時代は、終わった」

フレグが冷たく言った。

「処刑しろ」

ルクン・アッディーンは、処刑された。

暗殺教団は、滅亡した。


遼西は、この戦いを記録していた。

(兄さんと同じように、俺も記録する)

(俺が見たことを)


中原。

遼海が、クビライと話していた。

「クビライ様」

「うむ」

「南宋の情報です」

遼海が報告書を見せた。

「兵力は、約五十万」

「将軍は、賈似道が中心です」

「賈似道か」

クビライが考え込んだ。

「有能なのか?」

「...いえ」

遼海が首を振った。

「むしろ、無能だと聞いています」

「ほう」

クビライが興味を示した。

「ならば、付け入る隙がある」

「はい」

「だが、急がない」

クビライが言った。

「南宋は、大国だ」

「時間をかけて、確実に攻める」

「承知しました」

遼海が頭を下げた。


カラコルム。

遼高が、訓練場にいた。

十六歳になった三男は、筋骨隆々としていた。

「遼高!」

師匠のスゲデイが叫んだ。

古参の将軍だった。

「もっと速く!」

「はい!」

遼高が馬を駆った。

弓を引き、矢を射る。

的に、命中する。

「よし!」

スゲデイが笑った。

「お前は、もう一人前だ」

「ありがとうございます」

遼高が頭を下げた。

「師匠」

「うむ」

「俺も、遠征に出たいです」

「...そうか」

スゲデイが頷いた。

「では、モンケ様に推薦しよう」

「お前なら、十分戦える」


遼希が、書斎にいた。

十四歳になった四男は、本を読んでいた。

「遼希」

遼舜が来た。

「父上」

「お前は、どうしたい?」

遼舜が聞いた。

「...」

遼希は、考え込んだ。

「俺は...」

「兄たちみたいに、将軍になりたいわけじゃない」

「そうか」

「でも、何かしたい」

遼希が続けた。

「帝国のために」

「...そうだな」

遼舜が微笑んだ。

「焦らなくていい」

「ゆっくり、考えればいい」

「はい」


1253年、冬。

フレグ軍は、バグダードに迫っていた。

アッバース朝の首都だった。

遼西は、投石機を準備していた。

「アリフ」

「はい」

「全ての投石機を、集中させろ」

「バグダードの城壁を、徹底的に叩く」

「承知しました」

遼西の目が、光っていた。

(これが、俺の仕事だ)


中原。

遼海が、クビライと共に南宋の国境を視察していた。

「遼海」

「はい」

「いずれ、この川を越える」

クビライが揚子江を見ながら言った。

「そして、南宋を滅ぼす」

「はい」

遼海が頷いた。

(その時が、来る)


1253年の冬は、終わろうとしていた。

遼海は、クビライと共に中原にいた。

遼西は、フレグと共に西方にいた。

遼高は、カラコルムで訓練を続けていた。

遼希は、まだ自分の道を探していた。

兄弟は、それぞれの道を歩んでいた。

遼舜は、記録を続けた。

「1251年、フレグ西征開始」

「遼西、フレグに同行」

「遼海、クビライを補佐」

「1253年、アラムート陥落、バグダード包囲開始」

遼舜は、筆を置いた。

(子供たちが、離れていく)

(だが、それぞれの道を歩んでいる)

草原の風が、吹いていた。

それぞれの未来へ向かう風だった。

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