表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覇狼、地を貫く  作者: 神箭花飛麟
西域へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/74

Ⅶ 陥落

時代考証などはすべて集英社「アジア人物史 第5巻 モンゴル帝国のユーラシア統一」に拠ります。

1220年、夏。

グルガンジ。

ホラズムの首都だった。

モンゴル軍、十万が街を包囲していた。

チンギス、トルイ、オゴデイ。

そして、チャガタイも合流していた。

「見事な街だな」

チンギスが呟いた。

アムダリヤ川のほとりに建つ、美しい都。

だが。

「破壊する」

チンギスが冷たく言った。

「ムハンマドの都だ」

「徹底的に、破壊する」

将軍たちが、頷いた。

城内。

テルケン・ハトゥンが、兵たちを集めていた。

三万の兵がいた。

「諸君」

テルケン・ハトゥンの声が響く。

「ムハンマドは、逃げた」

兵たちが、ざわついた。

「だが、我らは逃げない」

テルケン・ハトゥンが続けた。

「この街を、守り抜く」

「家族のために」

「国のために」

「おおおお!」

兵たちが雄叫びを上げた。

守将の一人、アブドゥルが前に出た。

四十代の歴戦の将軍だ。

「テルケン様」

「うむ」

「我らは、最後まで戦います」

「ありがとう、アブドゥル」

テルケン・ハトゥンが微笑んだ。

「お前たちがいれば、心強い」

アブドゥルの副将、アジズが聞いた。

かつてイナルチュクの部下だった男だ。

オトラルから脱出して、ここに来ていた。

「テルケン様、モンゴル軍は十万です」

「我らは、三万」

「勝てるでしょうか」

「勝たなくていい」

テルケン・ハトゥンが答えた。

「持ちこたえればいい」

「時間を稼げば、援軍が来る」

だが。

もう、誰も援軍など信じていなかった。


翌朝。

モンゴル軍の攻撃が始まった。

投石機が、石を放つ。

城壁に、次々と当たる。

「くっ...」

アブドゥルが歯噛みした。

「持ちこたえろ!」

ホラズム兵が、必死に守る。

トルイが、前線で指揮を執っていた。

「梯子を立てろ!」

モンゴル兵が、梯子を立てる。

「登れ!」

ホラズム兵が、矢を射る。

「ぐあっ!」

モンゴル兵が倒れる。

だが。

トルイは、止まらなかった。

「続けろ!」

オゴデイが、別の方向から攻めていた。

「破城槌、前へ!」

巨大な破城槌が、城門を叩く。

ドーン!ドーン!

城門が、震える。

「城門を守れ!」

アジズが叫んだ。

「内側から、補強しろ!」

ホラズム兵が、木材を城門に押し当てる。

だが。

破城槌の攻撃は、容赦なかった。


数日後。

城壁の一部が、崩れた。

「やったぞ!」

モンゴル兵が歓声を上げた。

「突入しろ!」

チャガタイが叫んだ。

モンゴル軍が、崩れた城壁から雪崩れ込む。

「敵だ!」

ホラズム兵が迎え撃つ。

市街戦が始まった。

アブドゥルが、先頭で戦う。

「押し返せ!」

アブドゥルの剣が、敵を斬る。

だが。

モンゴル兵の数が、多すぎた。

じわじわと、押されていく。

「くっ...」

アブドゥルが歯噛みした。


テルケン・ハトゥンは、宮殿にいた。

報告を受けていた。

「城壁の一部が、破られました」

側近が震えながら言った。

「...そうか」

テルケン・ハトゥンは、静かに答えた。

「では、もう時間がないな」

「テルケン様...」

「私も、戦う」

テルケン・ハトゥンが立ち上がった。

「剣を」

「ですが、テルケン様は女性...」

「関係ない」

テルケン・ハトゥンが剣を取った。

「私は、ホラズムの母だ」

「最後まで、戦う」

テルケン・ハトゥンが、宮殿を出た。


市街戦は、激しさを増していた。

モンゴル軍が、街の半分を占領していた。

アブドゥルの部隊は、必死に抵抗していた。

「アブドゥル将軍!」

アジズが叫んだ。

「もう、持ちません!」

「...分かっている」

アブドゥルが答えた。

その時。

テルケン・ハトゥンが現れた。

「テルケン様!」

アブドゥルが驚いた。

「なぜ、こちらに!」

「私も、戦う」

テルケン・ハトゥンが剣を構えた。

「共に、戦いましょう」

アブドゥルは、涙を流した。

「...承知しました」

テルケン・ハトゥンが、先頭に立った。

「我に続け!」

ホラズム兵が、勇気を得た。

「テルケン様がおられる!」

「最後まで、戦うぞ!」

反撃が始まった。

テルケン・ハトゥンの剣が、モンゴル兵を斬った。

「ぐあっ!」

女性とは思えない剣技だった。

だが。

モンゴル兵の数は、圧倒的だった。


チンギスが、戦場に現れた。

「あれは...」

チンギスが遠くを見た。

「女性が、戦っている?」

「はい」

ムカリが答えた。

「テルケン・ハトゥンです」

「ムハンマドの母」

「...ほう」

チンギスが興味を示した。

「立派な女性だな」

チンギスが馬を進めた。


テルケン・ハトゥンは、疲れていた。

傷を負い、血が流れている。

だが。

まだ、剣を握っていた。

「来い、モンゴル!」

その時。

チンギスが現れた。

「止めろ」

チンギスが命じた。

モンゴル兵が、攻撃を止めた。

チンギスが、テルケン・ハトゥンの前に立った。

「テルケン・ハトゥン」

「...チンギス・ハンか」

二人が、対峙した。

「お前は、立派な女性だ」

チンギスが言った。

「息子は逃げたが、母は戦った」

「敬意を表する」

「...」

テルケン・ハトゥンは、黙っていた。

だが。

「チンギス・ハン」

テルケン・ハトゥンが言った。

「お前は、強い」

「だが、お前のやり方は間違っている」

「...ほう」

「破壊するだけでは、何も残らない」

テルケン・ハトゥンが続けた。

「建設しなければ、意味がない」

「...」

チンギスは、黙った。

そして。

「その通りかもしれん」

チンギスが答えた。

「だが、今は破壊の時だ」

「ホラズムが、俺の商人を殺した」

「だから、滅ぼす」

「...そうか」

テルケン・ハトゥンが剣を構えた。

「ならば、私は戦う」

「分かっている」

チンギスが剣を抜いた。

二人が、激突した。

老女と、草原の覇者。

剣が、ぶつかり合う。

だが。

テルケン・ハトゥンは、傷が深かった。

動きが、鈍る。

チンギスの剣が、テルケン・ハトゥンの剣を弾いた。

そして。

チンギスの剣が、テルケン・ハトゥンの胸を貫いた。

「...!」

テルケン・ハトゥンが、倒れた。

血が、大地に流れる。

「よく...戦った...」

テルケン・ハトゥンが呟いた。

「ホラズムは...誇り高き国だった...」

テルケン・ハトゥンは、息絶えた。

チンギスは、剣を納めた。

「立派な女性だった」

チンギスが呟いた。

「丁重に、葬れ」

「はっ」

モンゴル兵が、テルケン・ハトゥンの遺体を運んだ。


アブドゥルは、テルケン・ハトゥンの死を見ていた。

「テルケン様...」

アブドゥルが涙を流した。

「もう、終わりだ」

アブドゥルが剣を捨てた。

「降伏する」

ホラズム兵たちも、剣を捨てた。

「降伏します...」

グルガンジは、陥落した。


数日後。

チンギスは、グルガンジを見て回った。

美しい建物。

豊かな街。

だが。

「全て、破壊しろ」

チンギスが命じた。

「...!」

将軍たちが驚いた。

「殿、この街は...」

「破壊しろ」

チンギスが繰り返した。

「ムハンマドの都だ」

「見せしめにする」

「モンゴルに逆らえば、どうなるか」

「...承知しました」

将軍たちが頭を下げた。


グルガンジの破壊が始まった。

建物が、次々と壊される。

火が放たれる。

美しい都が、灰になっていく。

遼舜は、その様子を見て震えた。

(これが...戦の結末か)

(美しい街が、消えていく)

遼舜は、記録を取った。

「1220年夏、グルガンジ陥落」

「テルケン・ハトゥン、戦死」

「グルガンジ、破壊される」

「ホラズム、滅亡」


1220年の秋。

ホラズムは、完全に滅亡した。

ムハンマドは、まだ逃げている。

だが、もう王のいない国だった。

チンギスは、勝利を宣言した。

「ホラズムを、滅ぼした」

将軍たちが、歓声を上げた。

だが。

チンギスは、テルケン・ハトゥンの言葉を思い出していた。

(破壊するだけでは、何も残らない)

(建設しなければ、意味がない)

チンギスは、考え込んだ。

(俺は...何をしているんだ)


遼舜は、記録を閉じた。

(ホラズムが、滅んだ)

(チンギスは、また勝った)

(だが、次は?)

遼舜は、空を見上げた。

西の空が、広がっていた。

(まだ、戦は続くのか)


アウラガ。

星歌が、遼海と遼西を抱いていた。

「舜、早く帰ってきて」

星歌が呟いた。

遼海が言った。

「母上、父上は強いから大丈夫」

「うん...」

星歌が微笑んだ。

「そうね」

遼西は、何も分からず、ただ笑っていた。

草原の風が、静かに吹いていた。

レビュー、評価、感想をしてくだされば嬉しいです!!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ