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第96話 蒼月亭、血の夜 ― 守れなかった記憶

守ると決めた場所がある。

守れなかった過去がある。


その二つが交わるとき、人は本気になる。

裏口側。


「捕まえたぞ!」


暗殺部隊の男がアリアの腕を掴み、地面に押さえつける。


「エルフの女は高く売れる!」


下卑た笑い。


その瞬間。


青白い閃光が横一線に走った。


男の腕が宙を舞う。


「……触るな」


リディアだった。


魔力を一定に流した細身の剣。


強盾は断てない。

だが無防備な肉体は容易く裂ける。


捕縛していた男はそのまま崩れ落ちる。


「リディアさん!」


アリアが息を呑む。


リディアの目は冷たい。


感情が消えている。


「エルフを売る?

 ――その口、二度と利けないようにしてやる」


舞うように斬る。


深追いしない。

確実に無力化。


正面ではダリウスが老兵と激突していた。


だが裏。


ロークの店の中。


刃が交差する。


「下がれ、カイ!」


ロークが叫ぶ。


その瞬間。


ミレーヌに向けて振り下ろされた剣。


カイは反射的に飛び込んだ。


――鈍い音。


「……ッ!」


刃が脇腹を裂いた。


深い。


血が一気に溢れる。


「カイ!」


ミレーヌの叫び。


時間が歪む。


床に落ちる血の色。


鉄の匂い。


その瞬間。


カイの意識の奥で何かが弾けた。


――白い光。


無機質な空間。


“前世の記憶”。


手術室。


薬品の匂い。


数式。


構造式。


分解と再構築。


「……等価交換じゃない。媒介が要る……触媒……」


口から無意識に言葉が漏れる。


錬金術。


理論の断片が脳裏に浮かぶ。


ロークが敵を蹴り飛ばす。


レンが背後から刺し貫く。


だがカイは倒れたまま。


血が止まらない。


その気配が、戦場に伝わる。


「……カイが斬られた!」


誰かの声。


リディアの手が止まる。


「……また、守れないのか?」


視界が揺らぐ。


王都。


炎。


倒れる王女。


間に合わなかった記憶。


剣が鈍る。


老兵が隙を見逃さない。


だが――


ドン、と衝撃。


ダリウスが老兵を弾き飛ばした。


「下を向くな、リディア!」


怒号。


「今は守る時だ!

 過去を見るな!」


「……!」


リディアの目に光が戻る。


呼吸を整える。


魔力を一定に。


冷静に。


「私は……今度は守る!!」


老兵が再び斬りかかる。


だがダリウスの豪剣がそれを叩き折る。


重い一撃。


防御を崩し、


横薙ぎ。


老兵の胸を深く裂いた。


「クローディア家は……終わらん……」


老兵は崩れ落ちる。


残る暗殺部隊は数名。


その時。


地鳴り。


森の奥から、異様な気配。


大型の魔物が三体。


巨躯。


赤黒い皮膚。


暗殺部隊の一人が掴まれ、


そのまま潰された。


「な……なんだ!?」


混乱。


「こんな時に魔物とはな」


ダリウスが舌打ちする。


魔族領側から来た。


戦場の血の匂いに引き寄せられたのだ。


暗殺部隊は魔物に襲われ、


隊形が崩れる。


リディアは剣を握り直す。


カイは血に濡れたまま、意識が揺れている。


錬金の理論が断片的に浮かび続ける。


「媒介……血……違う……」


ミレーヌがカイを抱える。


「死ぬんじゃないよ……!」


ダリウスが前に出る。


「連戦だ。

 だが、ここで引くわけにはいかん」


レオンが大剣を握り直す。


フィオが弓を引く。


セラが詠唱に入る。


「……来るぞ!」


大型魔物が咆哮を上げた。


蒼月亭を巡る戦いは、

まだ終わらない。


カイが切られ、意識が混沌………その時に転生前の知識が………

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