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第92話 闇に潜む百の刃

森は静かだった。

あまりに静かすぎた。


その静寂を裂くのは――

百の足音と、歪んだ命令。


月は雲に隠れ、森は闇に沈んでいた。


その闇の中を、音もなく進む影がある。


およそ百。


革鎧に黒布を巻き、松明すら持たない。


剣、槍、弓、そして油壺。


統率は乱れていない。


統率されすぎている。


彼らは傭兵。


だが、ただの傭兵ではない。


クローディア家の息がかかった者達だった。


先頭を歩く老兵は、顔に深い傷を刻み、白髪交じりの顎髭を揺らしながら進む。


歩幅は小さいが、重心は揺れない。


暗殺部隊の指揮官――。


森の匂いを嗅ぐように、ゆっくりと手を上げる。


部隊が止まる。


「ここからは慎重に行く。村まではすぐだ」


低い声。


無駄がない。


背後に控える若い傭兵が小声で問う。


「本当にいるんですか? こんな山奥に」


老兵は鼻で笑う。


「いる。王都で逃した獲物は、必ず尻尾を出す」


目が冷たい。


そこに感情はない。


あるのは命令だけだ。


やがて、斥候が戻る。


息を整えながら膝をつく。


「廃村を確認しました。灯りはありますが……人影は三、四人ほど。戦力は少ない様子」


周囲にざわめきが走る。


「勝ったな」


誰かが呟く。


老兵の口角がわずかに上がる。


「油断するな」


それでも声には余裕が混じる。


「カイ様は生かして連れて帰る。多少痛めつけても構わん。他は――」


一拍。


「皆殺しだ」


空気が凍る。


「クローディア家に楯突くとはどういうことか、思い知らせてやれ」


さらに続ける。


「女はなるべく殺すな。売れば金になる」


傭兵達の一部が、低く笑った。


理性はある。


だが、倫理はない。


彼らは命じられれば動く刃だ。


森を抜け、坂を下る。


廃村の影が見え始める。


広場の向こうに灯りが揺れている。


静かすぎる。


老兵は足を止め、地形を眺める。


一本道。


広場。


正面に建物。


「店か……?」


かつての村の名残だろう。


だが、今は人の気配が薄い。


「斥候の報告通り、少人数だ」


老兵は手を振る。


隊列が展開する。


左右に分かれ、広場を包囲する形。


弓兵が前へ。


油壺を持つ者が後ろへ。


「まずは火だ」


誰かが言いかけた。


老兵は首を振る。


「いや、突入だ」


目が細まる。


「逃げ道を塞げ」


広場の入り口付近まで進軍する。


息を殺す百人。


村は、静まり返っている。


灯りはある。


だが、動きがない。


「拍子抜けだな」


若い傭兵が笑う。


老兵は短く命じる。


「行け」


剣が抜かれる音が一斉に重なる。


「歯向かう者は皆殺しだ」


号令が落ちる。


百の影が、広場へと雪崩れ込もうとした――。


その瞬間。


二階の窓に、かすかな影が揺れた。


だが、まだ誰も気づいていない。


闇は、彼らの味方ではない。


それを知るのは――


次の瞬間だ。



ついに本体が動きました。


・傭兵 約100

・目的:カイを生捕り、他は殲滅

・倫理ゼロの命令


そして、敵は“少人数しかいない”と誤認しています。


迎撃砦の真価が問われるのは、次の一手。


いよいよ――本格戦闘です。

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