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第93話 静謐の刃

百の刃が闇を裂き、

その瞬間――森が応えた。


境界の村に立つのは、

恐怖ではなく、誇りだった。

「行け!」


老兵の号令と同時に、傭兵達が雪崩れ込む。


その瞬間だった。


――ヒュンッ。


空気を裂く鋭い音。


次の瞬間、最前列の傭兵の喉元に矢が突き立った。


さらに、左右から矢雨。


「ぐあっ!」


「伏せろ!」


闇の中、二階の窓、屋根の影、広場の端――


複数の位置から、正確無比な射撃。


月明かりの中、細い耳が揺れる。


「……エルフか?」


老兵の目が細まる。


広場を囲む建物の影に、弓を構えたエルフ達の姿があった。


アリア、セレナ、エリオス、そして数名。


一斉射撃。


再び数人が倒れる。


だが老兵は怯まない。


「エルフの女は高く売れる! 殺すな!」


命令が飛ぶ。


傭兵達の目が変わる。


「囲め!」


「捕まえろ!」


「エルフの女は奴隷に最高だ!」


「高く売れるぞ!」


わざとだ。


嘲りを込めた声。


挑発。


アリアの指が、わずかに震えた。


「……」


セレナが息を詰める。


怒りと嫌悪。


だが、動揺もまた事実だった。


矢のリズムが一瞬乱れる。


そこを、傭兵達は見逃さない。


数人が地面を転がるように前進し、射線を潜り抜ける。


「詰めろ!」


弓兵の間合いを潰そうとする。


だが。


その瞬間。


広場の中央に、青白い光が走った。


――シュン。


一人の傭兵が、何が起きたかも分からぬまま崩れ落ちる。


「……遅い」


静かな声。


リディアだった。


細身の剣が、淡く青白く光っている。


魔力が、刃に“流れて”いる。


それは派手ではない。


ただ、静かに、確実に切れる。


「エルフを狙うな」


一歩。


踏み出す。


一人、また一人。


刃が閃くたびに、傭兵が崩れる。


躊躇がない。


怒りもない。


ただ、冷徹。


老兵が舌打ちする。


「前に出てきたか」


傭兵達がリディアへ向きを変える。


数十人が一斉に囲む。


だが。


――ヒュン。


横から短い影が滑り込む。


「背中、空いてるよ」


レン。


低い体勢から、急所を的確に突く。


二人が背中合わせになる。


「左、三」


「了解」


レンが動き、リディアが斬る。


連携は完璧。


エルフ達は立て直し、再び矢を放つ。


今度は乱れない。


怒りは、静かな集中へと変わっていた。


「アリア、右の高台!」


「わかった!」


高所からの射撃。


潜り抜けた傭兵が、次々と倒れる。


それでも、数は多い。


弓を掻い潜る者がいる。


広場に踏み込む者がいる。


老兵が叫ぶ。


「数で押せ! 所詮は少数だ!」


その言葉に、リディアの目がわずかに細まった。


「少数?」


足元の血だまりを越え、前へ出る。


青白い刃が強く光る。


魔力が、わずかに増す。


一閃。


盾ごと両断。


傭兵が絶句する。


「……化け物か」


誰かが呟いた。


リディアは一切答えない。


ただ前へ。


蒼月亭へ近づく影を、絶対に通さない。


後方、二階の窓。


カイが拳を握りしめていた。


ミレーヌが低く言う。


「大丈夫さ」


その声は、揺れていない。


広場はすでに、乱戦。


矢、剣、怒号。


だが、傭兵達の想定は崩れ始めていた。


「三、四人しかいない」はずだった。


だが目の前にいるのは――


エルフの弓兵部隊。


A級パーティの斥候。


そして、王女の剣を取り戻した女。


老兵の顔から、余裕が消える。


「……囲め。あの女を潰せ」


次の瞬間、十数人がリディアへ殺到した。


青白い光が、さらに濃くなる。


戦場の空気が変わった。


これはもう奇襲ではない。


正面衝突だ。


・エルフ初撃成功

・傭兵は心理戦を仕掛ける

・リディア、完全に冷徹モード


ここから本格的な乱戦へ。


老兵が本気で潰しにきます。

そしてまだ――ダリウス達は到着していません。


戦局は、ここからが本番です。

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