第87話 オルフェン防衛戦、冒険者たちの集結
オルフェンの街に迫る、大量の魔物の群れ。
鐘が鳴り、冒険者たちはギルドへと集められる。
個々の強さではなく、“連携”が求められる戦い。
黎明の風もまた、その渦の中にいた。
それは彼らにとって、久しぶりの大規模戦闘だった。
オルフェンの冒険者ギルドは、かつてないほどの緊張に包まれていた。
普段は依頼の確認や酒の匂いで満ちている広間も、今はざわめきと武具の擦れる音だけが響いている。
「B級以上は全員参戦だ!」
受付の男が叫ぶ。
「魔物の群れが接近中! 街の外で迎撃する!」
冒険者たちが次々と武器を手に取る。
レオンたち黎明の風も、その中にいた。
レオンが静かに言う。
「……大規模戦闘だな」
レンはすでに周囲の動きを観察している。
「斥候が多い。魔法使いも多いな。」
フィオが弓の弦を確かめる。
「問題は数だな」
セラは杖を握り直した。
「カイさんの修理がなかったら、少し不安だったかも」
レオンが笑う。
「今は不安か?」
セラは首を振った。
「全然」
その時、ギルドの奥の扉が開いた。
現れたのは、ギルドマスターだった。
白髪混じりの男が、全員を見渡す。
「静かにしろ」
ざわめきが止まる。
「魔物の群れが街の外へ接近している」
誰かが息を呑む。
「規模は――不明だ」
ざわつきが広がる。
ギルドマスターは続ける。
「斥候が確認した限りでも、相当数いる」
そして、はっきりと言った。
「単独行動は禁止だ」
空気が張り詰める。
「複数のパーティでまとまって対応しろ」
「連携して迎撃する」
「街に入れるな」
沈黙。
そして――
「以上だ。行け」
その瞬間、冒険者たちが一斉に動き出した。
武器を手に。
仲間と合流し。
街の外へ。
黎明の風も歩き出す。
少し離れた場所から、若い女性の声が聞こえた。
「今回は斥候もいるし、索敵は苦労しないわね」
落ち着いた声だった。
自信と、冷静さが混じっている。
隣にいた大柄な男が答える。
「ああ」
短い返事。
無駄がない。
レオンはそちらを見た。
猫耳の獣人少女。
その隣に立つ、大きな男。
さらに弓を背負った男。
どこか――空気が違う。
レンは小さく呟いた。
「……油断してる」
レオンが答える。
「油断するな。だが怯えるな」
フィオが笑う。
「いつも通りだな」
セラも頷いた。
「ええ」
ギルドを出ると、すでに多くの冒険者が街の外へ向かっていた。
門を抜ける。
風が変わる。
森の匂い。
土の匂い。
そして――
微かな、異臭。
レンが止まった。
「……来る」
レオンが頷く。
「位置は?」
レンが目を閉じる。
「森の中。数は……多い」
フィオが弓を構える。
セラも杖を握る。
周囲の冒険者たちも、それぞれ位置につく。
森の出口を囲むように。
息を殺して待つ。
そして――
動いた。
茂みが揺れた。
次の瞬間。
魔物が現れた。
牙を剥き、唸り声を上げながら。
「今だ!」
誰かが叫ぶ。
弓が放たれる。
魔法が放たれる。
剣が振るわれる。
一斉攻撃。
魔物が倒れる。
だが――
次が来る。
さらに次。
さらに。
森の奥から、次々と。
レオンが低く言う。
「……多いな」
レンが答える。
「予想以上だ」
フィオが矢を放ちながら言う。
「だが止められる」
セラの魔法が放たれる。
風が魔物を切り裂く。
周囲の冒険者たちも戦っている。
連携は取れている。
統制もある。
(確かにこれだけの人数がいれば大丈夫だろう)
レオンはそう思った。
だがその時――
森の奥で。
別の場所で。
異様な気配が動いた。
それはまだ、誰もはっきりとは認識していなかった。
だが確かに。
この戦場には――
“ただの戦いでは終わらない何か”が、混じっていた。
オルフェン防衛戦が始まりました。
ギルドの指示のもと、冒険者たちは連携して迎撃にあたります。
黎明の風もまた、その中で冷静に戦場を見据えています。
次回――
戦場の奥で見える、“異質な戦い”。
黎明の風が目にする、本当の強さとは。




