第86話 焼け跡の再会、迫る群れ
王都で不穏な情報を得たロークは、廃村へ戻る前にオルフェンへ立ち寄った。
かつて蒼月亭があった街。
焼け落ちた場所は、今どうなっているのか――
そしてそこで、思いがけない再会が待っていた。
それは偶然ではなく、次の戦いへ繋がる合図だった。
王都を後にしたロークは廃村への帰り道でオルフェンの街に来ていた。
オルフェンの街は、いつもと変わらぬ賑わいを見せていた。
商人の呼び声。
鍛冶場の金属音。
酒場から漏れる笑い声。
だがロークは、その中にわずかな違和感を感じていた。
空気が重い。
目に見えない何かが、街の奥で動いているような感覚。
(……考えすぎか)
そう思いながらも、ロークは自然と足を蒼月亭の跡地へ向けていた。
焼け落ちた建物は、すでに瓦礫の多くが片付けられていた。
地面は均され、焦げた柱の残骸もほとんどない。
「もうここにいた思い出もなくなっちまったな…」
ロークが呟いた、その時。
「ローク?」
聞き慣れた声がした。
振り返ると、そこには――
「レオンか!」
黎明の風の四人が立っていた。
レオン、レン、フィオ、セラ。
「どうしてここに?」
セラが驚いた顔をしている。
「王都からの帰りだ。廃村に戻る途中だよ」
レオンが頷いた。
「俺たちは依頼を受けに来たんだ」
セラが足元を見た。
「……ここは蒼月亭だった場所だよね」
少しの沈黙。
「ここから今の場所が始まったんだね」
レオンも周囲を見る。
「周りは変わらないな」
フィオの顔が明るくなる。
「俺たちの家もできたし。今のほうがいい。」
ロークが笑う。
「ミレーヌさんが喜ぶな」
レオンも笑った。
「ああ。絶対に喜ぶ」
ロークが馬を引いてくる。
ロークは手綱を握る。
「俺は廃村に戻る」
レオンが頷く。
「俺たちはギルドだ」
その時だった。
遠くから、叫び声が聞こえた。
「魔物だ!」
「群れが来るぞ!」
「門を閉じろ!」
空気が変わった。
ロークとレオンは同時に顔を上げた。
走ってきた冒険者が叫ぶ。
「森の向こうから魔物の群れが来てる!」
「規模は!?」
レオンが叫ぶ。
「わからねぇ! だが数が多い!」
周囲の冒険者たちが走り始める。
ギルドの鐘が鳴り響いた。
ロークが即座に言う。
「俺は廃村に知らせに戻る」
レオンが頷く。
「頼む」
レンが静かに言う。
「俺たちは参戦する」
フィオが笑う。
「久しぶりの大仕事だ」
セラが杖を握る。
「準備はできてる」
ロークは馬に跨った。
「死ぬなよ」
レオンが笑った。
「お互いにな」
ロークは手綱を引いた。
馬が走り出す。
廃村へ――蒼月亭へ。
レオンたちはギルドへ走る。
守るために。
戦うために。
焼け跡での再会は、終わりではなく――
始まりだった。
オルフェンの焼け跡での再会。
それは過去の象徴であると同時に、未来への繋がりでもありました。
失われた蒼月亭の残骸は、廃村の蒼月亭へと受け継がれていきます。
そして同時に迫る魔物の群れ。
ロークは知らせるために走り、黎明の風は守るために戦場へ向かう。
それぞれの役目が、物語を動かし始めています。
次は――
オルフェンの戦場。
そして、もう一つの強き存在との、遠い邂逅が描かれます。




