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第88話 見えない指揮者

オルフェンの街の外縁。

森の前で、討伐隊は展開していた。


ギルドの招集に応じ、数多くの冒険者が集まっている。

A級、B級、そしてそれ以下の者たちまで。


レオン達《黎明の風》もまた、その中にいた。


だが――その戦場で彼らは、後に語り継がれる存在を目撃することになる。


それは、派手に戦う英雄ではない。

ただ「見る」だけの、小さな少女だった。

森の手前、開けた草地に討伐隊は展開していた。


レオンは剣の柄を握り直し、深く息を吐く。


「数は?」


レンが低く答える。


「多い。森の奥で密集してる……まだ出てこない」


フィオは弓を構えたまま、森の影を睨んでいた。


空気が重い。


その時だった。


「来るぞ!」


誰かが叫んだ。


次の瞬間――


森の奥から、魔物の群れが雪崩のように現れた。


ゴブリン。

ウルフ。

混じって、大型のオーガの姿も見える。


「来たか!」


レオンは前へ出た。


「レン、後ろを頼む! フィオ、援護!」


「了解!」


フィオの矢が放たれる。


正確にゴブリンの目を射抜いた。


だが――


「多い……!」


数が、明らかに多すぎる。


討伐隊全体が応戦を開始する。


剣が振るわれ、魔法が放たれ、矢が空を裂く。


その混戦の中――


レオンの視界に、ひとつの光景が映った。


少し離れた位置。


そこに、二人の冒険者が立っていた。


一人は弓使いの少年。

もう一人は、小柄な猫耳の少女。


少女は――動いていなかった。


ただ、森を見ている。


「……?」


その瞬間。


少女の口が動いた。


「左。低い影」


小さな声。


直後――


少年の矢が放たれた。


森の影に潜んでいたウルフの喉を、正確に貫いた。


レオンは目を見開いた。


(見えたのか……?)


さらに。


「右、奥。三体」


少女の声。


矢が三連続で放たれる。


三体のゴブリンが、次々に倒れた。


一切の迷いがない。


「……すごい」


隣でフィオが呟いた。


「あの弓使い……」


だが、すぐに首を振る。


「違う」


フィオの視線は、少女へ向いていた。


「あの斥候だ」


少女は動かない。


剣も抜かない。


ただ――見ている。


その指示だけで、戦場の流れが変わっていた。


「あの索敵能力が……桁外れだ」


レオンは頷いた。


「ああ」


その時――


オーガが前線を突破した。


巨大な棍棒を振り上げる。


討伐隊の一人が反応できない。


「まずい!」


レオンが動こうとした瞬間――


「心臓」


少女の声。


矢が放たれる。


オーガの胸に、深々と突き刺さった。


巨体が止まる。


一歩。


二歩。


そして――


倒れた。


静寂が走る。


討伐隊の一人が呟いた。


「……今の、一撃で……?」


フィオが静かに言った。


「あの二人……」


レオンは目を細めた。


「弓使いと斥候じゃない」


戦場の中心に立つ、その二人。


動くのは弓使いだけ。


だが、戦っているのは――二人だった。


「あれは、一つの戦闘体系だ」


戦いは続いている。


だが――


レオンは確信していた。


この戦場には、自分達より遥かに上の存在がいる。


そして同時に思った。


(蒼月亭にも……あのレベルがいる)


リディアの姿が、脳裏に浮かんだ。


戦場は、広い。


そして、自分達はまだ――強くなれる。


オルフェン防衛戦の最中、レオン達は一組の冒険者を目撃する。


動かずに戦場を支配する斥候と、

その指示に完全に応える弓使い。


それは、単なる技量ではなく、完成された連携だった。


彼らの名を、レオン達はまだ知らない。


だが、この出会いは確実に、未来へと繋がっていく。


そして蒼月亭へと戻った時、彼らは新たな決意を胸にすることになる。


自分達もまた――守る側であるために。


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