表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/106

第74話 静かな帰還と、剣に込めた誓い

王都への買い出しを終え、リディアは蒼月亭へ戻ってきた。


必要な物資は揃い、表向きは何事もない旅だった。

だが――王都には、確かに不穏な空気が漂っていた。


王と王妃の暗殺未遂。


表には出ない不安。

そして、それでも続いていく日常。


守るべき場所へ戻ったリディアは、改めて己の役目を見つめ直す。

「ただいま」


蒼月亭の前に立ち、リディアは静かに言った。


畑の方から、ミレーヌが振り返る。


「おかえり」


その声は、いつもと同じだった。


「どうだった?」


リディアは少しだけ考え、そして笑った。


「楽しかった(^^)」


ミレーヌは安心したように頷いた。


「そりゃよかった」


カイも工具を手にしたまま近づいてくる。


「お疲れ様です、リディアさん」


「頼まれたものは全部あるよ」


背負っていた荷袋を下ろす。


塩、乾物、油、布。

蒼月亭で必要なものが揃っている。


カイは中を見て、嬉しそうに目を輝かせた。


「助かります。本当に」


その顔を見て、リディアは胸の奥が少しだけ温かくなるのを感じた。


(戻ってきた)


そう思った。


守るべき場所へ。


王都は、いつも通り賑わっていた。


市場は人で溢れ、商人は声を張り上げ、兵は巡回している。


だが。


空気が違った。


見えない緊張。


抑え込まれた不安。


誰も口には出さない。


だが誰もが感じている。


王都は、不穏な空気が漂っているのをひしひしと感じていた。


王様王妃の暗殺未遂もあった。


真偽は分からない。


だが警備は増え、兵の目は鋭くなっていた。


何かが動いている。


確実に。


(……)


リディアはその時、改めて思った。


ここに戻ってきてよかった、と。


蒼月亭の広場を見渡す。


カイが水路を調整している。


ミレーヌが布を干している。


遠くでは、レオン達の家の煙突から煙が上がっている。


エルフの森も、静かだ。


平穏だった。


当たり前のようで、当たり前ではない日常。


それを、リディアは知っている。


失ったことがあるから。


守れなかったことがあるから。


リディアは腰の剣に手を置いた。


カイが直した剣。


魔力を流すと、青白く応える感覚がある。


まだ完全ではない。


だが、確かに戻りつつある。


(守れる)


そう思えた。


以前よりも強く。


以前よりも確かに。


ミレーヌが振り返った。


「どうしたんだい?」


「……いいえ」


リディアは小さく首を振る。


「少し、安心しただけ」


ミレーヌは笑った。


「ここは安心できる場所さ」


その言葉は、自然だった。


だがリディアにとっては、重みがあった。


守る価値のある場所。


守るべき人たち。


それが、ここにある。


風が吹いた。


蒼月亭の看板が、静かに揺れる。


リディアはその音を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。


王都は変わり始めている。


いずれ、その波はここにも届くかもしれない。


だが。


それでも。


(今度は)


守る。


必ず。


守り抜く。


リディアは目を開き、いつものように歩き出した。


蒼月亭の日常の中へ。


剣と共に。


誓いと共に。

王都では暗殺未遂という不穏な出来事が起きていました。

その空気を感じながらも、リディアは蒼月亭へ帰還します。


蒼月亭の平穏な日常。

仲間たちの存在。

そして守るべき場所。


過去に守れなかった経験を持つリディアだからこそ、

この場所を守る決意は、より強くなっていきます。


静かな日常の中で、物語は次の波へと向かっていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ