第二章 第七十七話 川辺宿増築計画
人が集まる場所は、少しずつ広がっていきます。
それは建物だけではなく、“役割”そのものが大きくなるからでした。
「……でっか」
川辺宿へ到着した瞬間。
リナの第一声はそれだった。
紅陽式荷車 初号車。
実際に目の前で見ると、普通の荷車との差はかなり大きい。
広い荷台。
太い車輪。
側面防御板。
さらに荷台内部まで作り込まれている。
「なんかもう移動拠点ですね……」
リナが荷台を見回しながら言う。
「それ、結構正しい」
レンが苦笑した。
その頃には、川辺宿を利用していた商人達まで集まり始めていた。
「これ噂の新型か!」
「防御板付きってやつ?」
「思ったより本格的だな……」
完全に注目の的だった。
その横で、カイは荷車を確認している。
「車輪問題なし」
「軸も大丈夫そうですね」
「お前ほんとそればっかだな」
レンが笑う。
だが実際、かなり順調だった。
悪路。
野営。
長距離。
全部問題なくこなしている。
その時。
「それで?」
リナが首を傾げる。
「今日は試験だけですか?」
その問いに、カイは少し周囲を見回した。
馬小屋。
荷物。
停められた荷車。
増えた商人。
以前より、明らかに手狭になっている。
「……増築した方がいいと思います」
「え?」
リナが目を丸くする。
カイは続けた。
「馬小屋」
「荷置き場」
「あと、野営設備も必要です」
その言葉に、周囲の商人達が一斉に頷いた。
「それな!」
「荷物置く場所足りないんだよ!」
「馬休ませる場所も欲しい!」
「雨の日かなり困る!」
完全に利用者目線だった。
リナは少し驚いた顔で周囲を見る。
ここまで需要が出ているとは思っていなかった。
その横で、職人達は既に土地を見始めていた。
「こっち広げられそうだな」
「裏側使えるぞ」
「水場近いの便利だ」
完全に仕事モードだった。
カイは少しだけ考え――
そして言った。
「資金は、ミレーヌさんも出すからどうだい?って」
その瞬間。
リナが完全に止まる。
「……え?」
「川辺宿はもう、橋の先との中継点になってます」
「だから必要だと思います」
真面目な説明だった。
その横で、レンが笑う。
「つまり、“もっとデカくしよう”って事だな」
「雑です」
「意味は合ってるだろ?」
合っていた。
リナはしばらく周囲を見回していた。
増えた商人。
停まる荷車。
橋を渡ってくる人。
以前とは、もう全然違う。
少し前までは、ただの実家だった。
だが今は違う。
ここには、人の流れが出来始めている。
「……それなら」
小さく息を吐く。
そして笑った。
「やりましょうか」
その瞬間。
「よっしゃ!」
「仕事増えたぞ!」
「まず測るか!」
職人達が一気に動き始める。
商人達も嬉しそうだった。
「これ絶対便利になるぞ」
「長距離組助かるな」
「橋側の拠点になるぞ」
話は一気に進み始める。
その中心で。
カイは少しだけ安心したように、川辺宿を見上げていた。
橋。
荷車。
川辺宿。
少しずつだった流れが、今、確かな形になり始めている。
今回は“川辺宿増築決定”回でした。
川辺宿が、橋の先へ繋がる物流拠点として本格的に動き始めています。




