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第二章 第六十三話 夜襲

慣れた野営地でも、外の世界に“絶対安全”はありません。

だからこそ旅人達は、自然と協力し合うのでした。

深夜。

焚き火は小さくなり、野営地も静かになっていた。

見張りだけが、外周を歩いている。

荷車は円形に並べられ、即席の防壁になっていた。

リディアはまだ起きていた。

荷車へ背を預けながら、周囲を見ている。

その横では、ルナが毛布に包まりながら半分眠っていた。

「寝ろ」

リディアが小さく言う。

「まだ起きてるにゃ……」

全然起きていなかった。

その時だった。

森側。

ガサ……と音が鳴る。

リディアの目が細くなる。

同時に、外周見張りの商人も気付いた。

「……止まれ」

空気が変わる。

次の瞬間。

低い唸り声。

「魔物だ!」

叫び声が上がった。

森から飛び出してきたのは、大型の狼型魔物だった。

一体ではない。

五。

六。

かなり多い。

「荷車内側へ寄れ!」

ミレーヌの声が飛ぶ。

一瞬で空気が切り替わる。

「馬押さえろ!」

「火消すな!」

「弓持て!」

商人達も慣れていた。

混乱しながらも、ちゃんと動く。

カイは即座に荷車固定を確認していた。

「右側少し開いてます!」

「埋めるよ!」

商人達が荷車を押す。

円陣が閉じる。

完全に即席防衛陣地だった。

その時。

狼型魔物が飛び込んでくる。

だが。

「遅いにゃ」

ルナが消えた。

次の瞬間。

ドガッ!!

魔物が横へ吹き飛ぶ。

「なっ!?」

商人達が目を見開く。

ルナは既に次へ飛び込んでいた。

速い。

完全に獣人の戦闘速度だった。

その横を、リディアが静かに前へ出る。

剣が抜かれる。

青白い光。

「……!」

商人達が息を呑む。

一閃。

魔物の爪が弾かれる。

二撃目。

最小動作で喉を断つ。

無駄がない。

近衛騎士の剣だった。

「左から来るよ!」

ミレーヌが全体を見ながら叫ぶ。

「弓!」

「おう!」

商人達も動く。

完全にミレーヌが現場を回していた。

「荷車動かすな!」

「火は維持!」

「慌てるんじゃないよ!」

その声で空気が落ち着く。

カイは荷車側面を確認しながら叫ぶ。

「隙間閉じてください!」

「こっち支えろ!」

完全に防衛戦になっていた。

だが。

崩れない。

荷車。

焚き火。

人。

全部がちゃんと機能している。

その間にも、ルナが魔物を吹き飛ばす。

「次にゃ!」

「お前楽しんでるだろ!」

リディアが呆れながら、横から飛び込んできた個体を切り払う。

商人達はもう完全に驚いていた。

「なんだあの二人……!」

「紅陽ってこんなのいるのか!?」

そして数分後。

最後の一体が倒れる。

静寂。

焚き火の音だけが残った。

誰かが息を吐く。

「……助かった」

「被害確認!」

ミレーヌの声。

すぐに商人達が動き始める。

荷車。

馬。

怪我人。

確認。

その横で、ルナが魔物を見下ろしていた。

「肉食べられるにゃ?」

「まず安全確認だ」

リディアが即答する。

野営地に、ようやく笑いが戻り始めた。

今回は“共同野営での魔物襲撃”回でした。

旅慣れた商人達と紅陽メンバーの連携で、野営地はしっかり守られました。

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