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第二章 第五十九話 橋の先

道というものは、繋がっているからこそ意味があります。

そして時々、人はその“先”を見たくなるのでした。

翌朝。


紅陽を出た一行は、以前と同じように街道脇で野営していた。


焚き火。


鍋。


焼いた魔物肉の匂い。


ルナが完全に上機嫌だった。


「やっぱ外飯にゃー」


「お前ほんと元気だな……」


リディアが少し呆れる。


その横で、カイは荷車を確認していた。


「……問題なし」


「毎回点検するねぇ」


ミレーヌが苦笑する。


「長距離なので」


いつも通りだった。


夜は静かだった。


以前のような山賊も出ない。


聞こえるのは川音と虫の声くらい。


「平和だねぇ」


ミレーヌが空を見上げる。


「人増えたからかも」


カイが言った。


「前より道に流れあります」


リディアも頷く。


確かに以前より、人の気配が多い。


荷車の轍。


焚き火跡。


通った痕跡。


少しずつ、この道は使われ始めている。


そして翌日。


昼過ぎ。


川辺宿が見えてきた。


「ミレーヌさん!」


最初に気付いたのはリナだった。


入口から勢いよく飛び出してくる。


「来たんですね!」


「様子見にねぇ」


ミレーヌが笑う。


そのまま宿の中へ入る。


昼時を少し過ぎているが、まだ客は多かった。


商人。


旅人。


川沿いの村人。


以前より明らかに人が増えている。


「ちゃんと回してるじゃないか」


ミレーヌが周囲を見ながら頷く。


リナが少し照れくさそうに笑った。


「みんな頑張ってくれてるので……」


「いや、あんたがちゃんと仕切れてる」


その言葉に、リナが少し固まる。


ミレーヌは食堂全体を見ていた。


配膳の流れ。


厨房の動き。


客の回転。


全部見ている。


「無駄に慌ててない。いい回し方してるよ」


リナの顔が少し赤くなった。


「ミレーヌさんに褒められると緊張します……」


「褒める時は褒めるさ」


ミレーヌは笑う。


その横で、ルナは既にパンを食べていた。


「お前、着いてすぐ食うな」


「宿だから当然にゃ」


カイは橋の方を見ていた。


以前補強した橋。


そこを渡る荷車は、前よりかなり増えている。


「……橋、結構使われてますね」


「最近かなり増えたよ」


リナが答える。


「商人さん達も通るようになったから」


カイは橋板を見る。


固定具。


軋み。


木材の負荷。


「前より負担増えてます」


「やっぱり?」


リディアも橋を見る。


確かに揺れが少し大きい。


人流が増えている証拠だった。


その時。


ルナが橋の向こうを見た。


川の先。


森沿いへ続く細道。


「……行くにゃ?」


ミレーヌもそちらを見る。


少しだけ目を細めた。


「まぁ、せっかく来たしねぇ」


リナが目を丸くする。


「え、本当に行くんですか?」


「ちょっと先見るだけさ」


ミレーヌは軽く言う。


だが興味は本物だった。


橋が繋がった。


人が流れ始めた。


なら、その先はどうなっているのか。


「今日は泊まって、明日から行くか」


ミレーヌが言う。


その言葉に、ルナが嬉しそうに耳を立てた。


「旅にゃ!」


「探索だよ」


いつもの訂正だった。


その夜。


川辺宿は以前よりずっと“宿”になっていた。


笑い声。


食器の音。


行き交う人。


そして橋の向こうへ続く道。


紅陽の流れは、少しずつ外の世界へ伸び始めていた。

今回は“川辺宿再訪”回でした。

川辺宿も少しずつ、“開いたばかりの宿”から、“人が集まる場所”へ変わり始めています。

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