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第二章 第四十九話 街道の山賊

道が賑わえば、人も集まります。

それは商人だけではありませんでした。

深夜。


焚き火の火は小さくなっていた。


レオンが見張り番をしている。


荷車の横ではルナが毛布に包まり、完全に眠っていた。


「すげぇな……」


フィオが苦笑する。


「あの状況で寝れるの」


「ルナだからな」


レオンも苦笑した。


その時だった。


カサ――


森が揺れる。


レオンの表情が変わる。


「……起きろ」


小さな声。


だが一瞬で空気が変わった。


リディアは既に起きていた。


音もなく立ち上がる。


カイも毛布をどけた。


「何人?」


リディアが低く聞く。


「多分五……いや六」


レオンが答える。


その瞬間。


森の奥から怒声。


「動くな!」


「荷を置いていけ!」


数人の男達が飛び出してきた。


粗末な革鎧。


斧。


短剣。


完全に山賊だった。


だが。


「……あ?」


先頭の男が止まる。


焚き火の光で、こちらが見えた。


リディア。


レオン。


フィオ。


そして。


腰を上げたルナ。


「にゃー……?」


まだ半分寝ている。


山賊達の空気が少し止まった。


「女ばっかじゃねぇか!」


後ろの男が笑う。


「当たりだな!」


その瞬間。


リディアが消えた。


「――え?」


先頭の男の首元へ、剣が突き付けられていた。


誰も動きを見ていない。


「動くな」


静かな声。


空気が凍る。


同時に。


レオンが剣を抜く。


フィオは既に弓を構えていた。


ルナは欠伸しながら立ち上がる。


「寝起きにゃ……」


山賊達の顔色が変わる。


「な、なんだこいつら……!」


その時だった。


後方の山賊が荷車へ走る。


「荷だけでも――」


ガン!


突然、荷車が横へ滑った。


「うおっ!?」


男が転ぶ。


カイだった。


荷車固定を外し、傾斜を使って動かしたのだ。


「左寄せてください!」


カイが叫ぶ。


レオンが即座に反応する。


荷車を盾位置へ。


フィオは矢を放つ。


山賊の足元へ突き刺さる。


「次は当てるよ」


静かな声。


完全に包囲されていた。


しかも。


「な、なんで荷車こんな滑るんだ!?」


山賊が混乱する。


新しい固定具。


軸受。


改良された荷車は、以前より軽く動く。


カイは工具を片手に荷車横へ立つ。


戦ってはいない。


だが。


荷車の位置。


荷崩れ。


動線。


全部を見ていた。


「リディアさん、右から来ます!」


「了解」


一瞬。


リディアの剣が青白く光る。


次の瞬間、山賊の武器だけが弾き飛ばされた。


「ひっ……!」


完全に戦意が折れる。


ルナが前へ出る。


「まだやるにゃ?」


笑っていた。


だが目は笑っていない。


山賊達が後ずさる。


「に、逃げろ!」


一斉に森へ逃げ始めた。


レオンが追おうとする。


だがリディアが止めた。


「深追いはしない」


「……だな」


静けさが戻る。


焚き火だけが揺れていた。


ルナがまた欠伸をする。


「眠いにゃ」


「お前、本当に緊張感ないな……」


フィオが呆れる。


その横で。


カイは荷車を確認していた。


「……大丈夫」


固定具も問題なし。


荷崩れもない。


レオンが感心したように言う。


「マジで壊れてねぇ」


「少しは成功ですね」


カイがほっと息を吐く。


その時。


リディアが森の奥を見ていた。


山賊達が逃げた方向。


そして、その言葉。


『最近この道は荷が増えた』


ただの偶然ではない。


紅陽への流れは、もう周囲に認識され始めている。


風が吹く。


夜はまだ終わっていなかった。

今回は“山賊襲撃”回でした。

戦闘だけでなく、“荷車そのもの”が戦力になり始めています。

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