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第二章 第四十話 流れの交わる場所

道が増えるということは、人が増えるということ。

そして人が増えれば、“隠れていた流れ”もまた交わり始めるのでした。

翌日。


紅陽は朝から騒がしかった。


中央通り。


完成した石畳の上を、荷車が絶え間なく通っている。


商館予定地では、木材搬入も始まっていた。


「本当に建てるんだなぁ」


荷運びの男が感心したように言う。


「ヴェルディア本気じゃねぇか」


その横で、エドガーが静かに指示を飛ばしていた。


「倉庫は奥へ」


「表通り側は開けてください」


「人流を止めないように」


かなり慎重だ。


紅陽側へ配慮しているのがわかる。


その様子を、ロークが腕を組みながら見ていた。


「思ったよりちゃんとしてるな」


「最初に嫌われると終わりですから」


エドガーは淡々としている。


その時だった。


リディアが、北側を見ながら静かに口を開いた。


「また荷車が北へ向かった」


ダリウスが眉をひそめる。


「……北西古道か」


エドガーが顔を上げた。


「古道?」


ルミアが地図へ視線を落とした。


「昔の山越えルートです」


「今は、ほぼ使われていません」


「そんな道が?」


エドガーが少し驚いた顔をする。


カリナが静かに補足した。


「紅陽北西、森を抜けた先です」


「正規街道ではありません」


ルナが首を傾げる。


「どこに繋がってるにゃ?」


少しだけ静かになる。


ダリウスが低く答えた。


「北方山脈を越える」


「ただし、その先は俺も知らん」


ルミアが小さく続ける。


「魔族領よりさらに北……」


「文献でしか見たことがありません」


カイも地図を見ながら言う。


「荷車は、かなり悪路用に補強されてました」


「普通の街道向きじゃないです」


「本当に山越えする気か……」


ダリウスが小さく呟く。


その時。


ミレーヌが腕を組んだ。


「でも、そんな危ない道をわざわざ使う理由あるのかい?」


「隠したいからでしょう」


カリナが即答した。


「正規街道を使えば、必ず記録が残ります」


「ですが古道なら、人目を避けられる」


静かな沈黙。


リディアが続ける。


「最近、頻度が増えてる」


「しかも複数」


「同じ組織とも限らない」


その言葉に、エドガーの表情が少し変わった。


「……興味深い」


静かな声だった。


「正規交易路の近くに、正体不明の流れがある」


「これはヴェルディア商業同盟としても放置できません」


視線が集まる。


エドガーはゆっくり続けた。


「こちらでも調査します」


「ヴェルディア商業同盟の情報網を使いましょう」


ロークが目を細める。


「そんな簡単にわかるか?」


「わかりません」


エドガーは即答した。


「ですが、“記録が残っていない”時点で異常です」


「古道が本当に使われているなら、何らかの痕跡はあるはずです」


ルミアも静かに頷いた。


「魔族領側にも、古い記録くらいは残っているかもしれません」


「私も調べてみます」


カリナが地図へ印を書き込む。


「現状は監視継続ですね」


「はい」


リディアが短く答えた。


まだ正体は見えない。


目的もわからない。


だが一つだけ確かなことがある。


“誰か”が、北方山脈の向こう側へ流れを作っている。


その時だった。


「エドガーさん!」


若い商人が駆け込んできた。


「どうしました」


「木材、追加分届きました!」


空気が少し緩む。


エドガーは軽く息を吐いた。


「……まずは、こちらを完成させましょう」


ミレーヌが笑う。


「急に現実戻ったねぇ」


「商人ですので」


エドガーも少しだけ笑った。


窓の外では、石畳の上を荷車が通っていく。


紅陽は今日も発展している。


その裏側で。


誰にも知られない別の流れもまた、静かに北へ向かっていた。

今回は“北西古道”が正式に共有される回でした。

ただし、まだ誰も正体を掴めていません。

紅陽だけが、“境界の異変”に気付き始めています。

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