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第二章 第二十一話 川辺の流れ

人が増え、物が流れれば、街道の空気も変わっていきます。

良い流れだけではない――それもまた現実でした。

川辺の村は、以前とは別の場所のようだった。


荷車。


商人。


積み上がった木箱。


橋を渡る人の列。


「……本当に増えたな」


レオンが改めて呟く。


「紅陽できてから、一気だよ」


村長が苦笑する。


「ありがたいんだけどなぁ」


その声には、本当に困っている実感も混じっていた。


橋の近くでは、大工達が応急補強をしている。


だが、追いついていない。


「このままだと折れる」


レンが橋板を軽く踏みながら言った。


軋む音。


かなり危ない。


「大型荷車増えすぎだ」


「前は週に数台だったんだよ」


村長が頭を掻く。


「今は毎日だ」


セラは川沿いを見回す。


「倉庫も足りてないですね」


「だから仮置きしてる」


指差した先。


川辺には、急造の荷置き場が並んでいた。


木材も雑。


雨が来れば崩れる。


「完全に中継地点化してるな」


フィオが呟く。


以前は静かな村だった。


だが今は、紅陽と外を繋ぐ“流れ”の一部になっている。


その時。


「……また来た」


橋近くの村人が小さく言った。


全員の視線が向く。


川向こう。


黒布をかけた荷車。


さっき見えたものと同じだった。


ゆっくり進んでくる。


護衛が四人。


妙に静かだ。


「商隊?」


セラが聞く。


「最近よく見る」


村長が答えた。


「夜に通ることも多い」


レンの目が細くなる。


「積荷は?」


「わからん」


「止まらないんだ」


村人も少し不安そうだった。


「紅陽には行かないの?」


フィオが聞く。


「いや……」


村長は少し迷った。


「森側へ抜けてる」


空気が少し変わる。


レオンとレンが視線を交わした。


森側。


裏道。


魔物避け薬。


古い貴族紋。


全部、少しずつ繋がっていく。


だが。


「今は追わない」


レンが静かに言った。


「優先順位違う」


「だな」


レオンも頷く。


ここで不用意に動けば、本来の目的が崩れる。


紅陽は今、“維持”の段階に入っている。


橋が落ちれば、流れも止まる。


それは街全体へ影響する。


「必要資材、まとめよう」


レンが地図を開く。


「橋板交換」

「補強杭」

「荷置き場拡張」


セラも書き込みを始める。


「仮設倉庫も必要かも」


「あと宿」


村長が真顔で言った。


「最近、泊まりきれん」


フィオが笑う。


「蒼月亭と同じこと言ってる」


「笑えんわ!」


そのやり取りに、小さな笑いが起きた。


だが、その空気の裏側で。


黒布の荷車は、静かに森側への道へ消えていく。


レンはそれを最後まで見ていた。


「……絶対何かやってる」


ぽつりと呟く。


「うん」


セラも静かに頷いた。


「でも今は、街を止めない方が先」


その言葉は、以前なら出なかった。


今の彼らは、“戦うだけ”ではない。


流れを維持すること。


街を回すこと。


それもまた、自分達の役目になっている。


その頃。


紅陽では、石畳工事が続いていた。


「そこ固定しろー!」


「荷車通るぞ!」


「水流すなまだ!」


ロークが怒鳴っている。


カイは石材の高さを確認していた。


ミレーヌは炊き出し準備。


住民達も総出で働いている。

今回は“発展と不穏さが並行して進む回”でした。


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