第二章 第二十話 道の先へ
繋がった道は、人も物も運びます。
そして時には、“変化”そのものも運んでくるのでした。
翌朝。
《黎明の風》の四人は、西門前で装備確認をしていた。
「今回は本当に確認だけだからな」
レオンが念押しする。
「わかってる」
レンは短く答えた。
「橋の状態確認、荷車数確認、必要資材確認」
「あと飯」
フィオが当然のように言う。
「お前はそこブレないな」
セラが呆れた。
その時。
「はい、今日の分」
ミレーヌが布包みを渡してくる。
「煮込み挟んだパン。あと干し肉」
「やった!」
フィオが即反応する。
「お前、ほんと食べ物絡むと元気だな」
「生きるの大事」
「間違ってないにゃ」
ルナも頷く。
カイは少し笑いながら荷物を確認していた。
「橋、かなり傷んでるんですかね」
「荷車増えてるなら普通に危ないと思う」
レオンが答える。
ロークは腕を組みながら西門側を見る。
作りかけの石畳。
積まれた石材。
行き交う荷車。
「ここだけでも手一杯なんだがなぁ」
「でも止めるわけにはいかない」
ルミアが静かに言う。
「流れは、止まった瞬間に鈍る」
その言葉には重みがあった。
カリナも資料を閉じる。
「川辺の村は今後の中継拠点候補です」
「最低限、機能維持は必要でしょう」
レンは頷き、地図を折りたたむ。
「じゃ、行ってくる」
「気を付けてねぇ」
ミレーヌが手を振る。
四人はそのまま街道へ歩き出した。
完成途中の石畳を踏みながら。
以前の土道とは違う感触。
「歩きやすくなったな」
セラが小さく言う。
「荷車も楽になるだろうね」
フィオが足元を見る。
まだ途中だ。
石が置かれているだけの場所も多い。
だが、それでも違う。
紅陽は確実に変わり始めていた。
しばらく進むと、後ろから荷車の音が近付いてくる。
商隊だった。
「道使いやすくなったな!」
御者が笑いながら言う。
「前より揺れねぇ!」
「まだ途中ですよ」
レオンが返す。
「十分だ!」
商人は機嫌が良さそうだった。
「紅陽経由の流れ、増えてるぞ!」
そのまま荷車は川辺の村方向へ進んでいく。
四人はそれを見送りながら歩き続けた。
途中。
以前野営した場所を通る。
焚き火跡はもう薄れていた。
「なんか変な感じだな」
レオンが言う。
「前来た時より、人の流れ感じる」
「道が生き始めてる」
セラが静かに答えた。
その言葉は妙にしっくりきた。
街だけではない。
道そのものが変わり始めている。
昼前。
四人は川辺の村へ到着した。
前回来た時より、さらに賑わっている。
「……増えてるな」
レオンが思わず呟く。
橋の手前には荷車待ちの列。
仮設の荷物置き場。
川沿いでは、新しく木箱を積む場所まで作られていた。
「完全に中継地点になってる」
レンが周囲を見回す。
村人達も忙しそうだった。
荷運び。
橋補強。
積み下ろし。
以前の静かな村とは空気が違う。
「おお、来てくれたか!」
村長が駆け寄ってくる。
「見ての通りでな……!」
その視線の先。
橋板には、かなり深い亀裂が入っていた。
しかも荷車が通るたびに軋む。
「これは危ないな」
レオンが眉をひそめる。
「大型荷車増えてるからね」
村長が苦笑する。
「最近は紅陽目当ての商人も増えてる」
「完全に繋がったな」
フィオがぽつりと言う。
その時だった。
レンがふと、川向こうを見る。
遠く。
街道脇。
見慣れない荷車が止まっていた。
黒い布で覆われている。
護衛らしき男達もいる。
「……あれ」
フィオも気付いた。
「商隊にしては妙だな」
「確認する?」
セラが小さく聞く。
レンは少しだけ目を細める。
だが。
「先に橋だ」
即答だった。
「今はこっち優先」
その言葉に、全員が頷いた。
紅陽は広がっている。
だからこそ、守るべきものも増えていた。
今回は“紅陽の影響が街道へ広がっている”ことを描く回でした。
少しずつ、外の流れも不穏さを帯び始めています。




