↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
228/264

第二章 第十九話 川辺の村からの相談

街が大きくなると、その影響は周囲にも広がっていきます。

良いことも、困ることも、少しずつ。

昼前。


蒼月亭は、いつもより少し静かだった。


工事組が外へ出ている時間帯だからだ。


「今日は落ち着いてるねぇ」


ミレーヌが皿を拭きながら言う。


「最近ずっと忙しかったですし」


カイも少し苦笑する。


その時。


入口の扉が開いた。


入ってきたのは、見覚えのある男だった。


「……あ」


レオンが気付く。


「川辺の村の」


「お久しぶりです」


男は軽く頭を下げた。


以前、《黎明の風》が立ち寄った川辺の村の村人だった。


「どうしたにゃ?」


ルナが椅子の上で首を傾げる。


男は困ったように笑った。


「ちょっと、相談がありまして……」


その後。


蒼月亭の奥テーブルには、主要メンバーが集まっていた。


「橋が限界?」


ロークが眉をひそめる。


「はい」


村人は頷いた。


「最近、荷車の数が急に増えまして」


「紅陽行きが?」


「ええ」


川辺の村は、紅陽と外を繋ぐ中継地点になり始めている。


以前は小規模な往来しかなかった。


だが今は違う。


交易。


移住。


商人。


冒険者。


流れそのものが増えている。


「橋板が割れ始めてるんです」


村人は続けた。


「宿も足りないし、荷物置き場も不足してて……」


「嬉しい悲鳴ってやつか」


レオンが言う。


「正直、最初は驚きました」


村人は苦笑する。


「こんな急に人が増えるなんて」


カリナは静かに資料へ書き込んでいた。


「予想より早いですね」


「完全に紅陽の影響だねぇ」


ミレーヌが腕を組む。


ロークは大きくため息を吐いた。


「道作ったら次は橋かよ……」


「繋がれば流れる」


ルミアは静かに言う。


「当然の結果よ」


その視線は冷静だった。


国家運営視点。


道が整えば、物流は加速する。


物流が加速すれば、周辺も変わる。


「放置はできませんね」


カリナが言った。


「川辺の村が止まれば、紅陽も鈍る」


「でも人足りる?」


フィオが聞く。


「今、工事中だぞ?」


確かに紅陽側も余裕はない。


石畳工事はまだ途中。


広場側も完成していない。


そこで。


レンが静かに口を開いた。


「確認だけなら行ける」


全員の視線が向く。


「橋の状態、必要資材、荷車数」


「見て帰るだけなら一日」


レオンも頷く。


「まぁ、それなら」


「また遠征にゃ?」


ルナが少し嬉しそうに聞く。


「遠征ってほどじゃない」


フィオが笑う。


「散歩よりは遠いけど」


ミレーヌは少し考え、それから頷いた。


「じゃあお願いしようか」


「了解」


《黎明の風》は即答だった。


以前と違う。


もう彼らは、単なる冒険者ではない。


紅陽の“外担当”になり始めている。


その時だった。


村人が少し迷うように口を開く。


「……あと、もう一つ」


空気が少し変わる。


「森側の村から、変な話を聞きまして」


レンの目が細くなる。


「どんな?」


「夜に、森の奥で灯りが見えるって」


静かになる。


「荷車の音もするらしいです」


「またか」


フィオが呟く。


「しかも、魔物が妙に森から離れてるって」


レオンとレンが視線を交わした。


以前見つけた野営跡。


魔物避け薬。


古い貴族紋。


点が、少しずつ繋がり始めている。


だが。


カリナは即座に結論を出さなかった。


「まずは川辺の村優先です」


冷静だった。


「今は物流停止の方が危険」


「森側は?」


セラが聞く。


「監視継続」


カリナは短く答える。


「動くにはまだ情報不足です」


ダリウスも頷く。


「慌てて踏み込む話ではない」


空気が少し落ち着く。


ミレーヌは立ち上がった。


「はいはい、難しい話終わり!」


「昼食準備するよ!」


「助かる!」


フィオが即答した。


その様子に、小さな笑いが起きた。

今回は“紅陽の影響が周辺へ広がる回”でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。