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第二章 第十六話 紅陽の背骨

道を作るということは、未来を作るということ。

紅陽は少しずつ、“街”として形を変え始めます。

翌朝。


紅陽の中央通りには、朝から人が集まっていた。


「石材こっち運べ!」


「木杭まだ足りねぇぞ!」


「そこ掘りすぎるな!」


普段は荷車が行き交うだけの道が、今日は完全に工事現場になっている。


正門からローク武器屋前。


そこから広場。


そして蒼月亭へ続く中央通り。


紅陽の“背骨”。


最初に整備されるのは、この区画だった。


「……なんか、すごいことになってきたにゃ」


ルナが高い木箱の上から眺める。


「人多い」


「住民参加型ですから」


カリナが資料を確認しながら答えた。


「職人だけでは足りません」


実際、かなりの人数が動いている。


大工。


石工。


荷運び。


冒険者。


移住してきた者達まで手伝っていた。


「街作ってる感あるな」


レオンが石材を抱えながら言う。


「冒険者の仕事じゃねぇ」


「お前今ただの運搬係だぞ」


レンが即答した。


「重っ……!」


フィオはすでに限界そうだった。


「なんで弓使いが石運んでんの!?」


「人手不足」


「理不尽!」


その近くでは、カイとロークが道幅を確認している。


「ここ、荷車二台すれ違えますかね」


「ギリだな」


ロークは地面へ線を引いた。


「広げすぎると今度は店側削ることになる」


「排水も必要ですよね」


「ああ。雨で流れねぇとまた泥だ」


カイは頷きながら周囲を見る。


少し前まで、ここはただの土道だった。


雨が降ればぬかるみ、荷車が埋まり、靴は泥だらけになる。


だが今は違う。


石材が並び、地面が均され、街としての形が少しずつでき始めていた。


その時。


「ほう……」


低い感嘆の声。


振り向くと、ヴェルディア商業同盟のエドガーが立っていた。


後ろには商人達もいる。


「ずいぶん本格的ですね」


「やるならちゃんとやる」


ロークが答える。


エドガーは石材の並びを見る。


「これは街道都市規模ですよ」


「そのつもりだからねぇ」


ミレーヌが笑いながら近付いてきた。


大鍋を抱えている。


「はい休憩!」


工事していた人達から歓声が上がった。


「ミレーヌさん神!」


「飯だー!」


「働け若者共」


そう言いながらも、ミレーヌは楽しそうだった。


蒼月亭の炊き出し。


煮込みとパン。


工事中の人員へ無料配布されている。


「完全に前線飯だな」


レオンが苦笑する。


「前線みたいなもんだよ」


ロークが即答した。


「街作りは戦争より疲れる」


「それはわかる気がします」


カイも少し笑った。


エドガーはその光景を静かに見ていた。


働く住民。


笑う冒険者。


炊き出し。


整備されていく道。


そして、その中心にある蒼月亭。


「……面白い街だ」


ぽつりと呟く。


ルミアが隣へ立った。


「でしょう?」


少し誇らしげだった。


「普通、ここまでまとまりません」


エドガーは真面目な顔で言う。


「新興都市は大抵、利権で揉める」


「今後は揉めるかもしれないわよ」


ルミアは静かに答えた。


「でも、今はまだ前へ進めている」


その時だった。


遠くから、何か重い音が響いた。


――ズシン。


ほんの小さく。


だが確かに地面が揺れる。


工事中の手が止まる。


「……今の何だ?」


レオンが振り返る。


レンの目が細くなる。


森側。


遠く。


何かが動いた気配。


フィオも耳を動かす。


「……でかいな」


空気が少しだけ変わった。


だが、揺れはすぐ止まる。


ロークはしばらく遠くを見ていたが、やがて肩をすくめた。


「まぁいい。今は工事優先だ」


人々も再び動き始める。


石が運ばれ、地面が均され、道が形になっていく。

今回は道路整備開始回でした。


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