↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
216/266

第二章 第七話 森側の村

同じ“中継地点”でも、場所が違えば空気も変わる。

《黎明の風》は、二つ目の村へ向かいます。

翌朝。


川辺の村は、朝から静かに動き始めていた。


荷車へ荷物を積む商人。


水を汲む旅人。


簡易露店を開く老人。


決して大きな村ではない。だが、人の流れができ始めているのは確かだった。


「思ったよりちゃんとしてたな」


宿を出ながらレオンが言う。


「うん。休憩地点としては十分」


セラが頷く。


「水場が安定してるの大きい」


レンは地図を確認しながら周囲を見る。


「問題は森側だな」


「まぁ、そっち確認しに来たんだし」


フィオが肩をすくめる。


四人は再び街道へ戻った。


森側の村までは、それほど距離はない。


途中には整備され始めた道が続き、荷車の轍もはっきり残っている。


「……近いな」


レオンが周囲を見回した。


「行き来しようと思えば、一日で何度も行ける距離だ」


「うん」


セラも頷く。


「片方が休憩、片方が補給みたいに分けてもよさそう」


「両方とも機能し合えるといいね」


その言葉に、レンが少しだけ視線を上げる。


「紅陽からの流れが増えれば、自然にそうなる」


「道ももっと整備されるだろうしな」


今はまだ土道だ。


雨が降ればぬかるむ。


荷車が多くなれば削れる。


だが逆に言えば、それだけ人が通り始めているということでもあった。


昼前。


森の匂いが少しずつ濃くなってきた頃、二つ目の村が見えてくる。


こちらは川辺の村よりも小さい。


だが。


「……柵、ちゃんとしてるな」


レオンが目を細めた。


村を囲う木柵は高く、見張り台まである。


入口近くには槍を持った見張りの姿もあった。


「森が近いからだろう」


レンが静かに言う。


その時だった。


フィオの耳がぴくりと動く。


「……いるな」


「うん」


セラも小さく頷いた。


森の奥。


かなり遠い。


だが確かに、魔物の気配がある。


頻繁に襲われるほどではない。


しかし、“近い”。


「こっちは油断できないな」


レオンが周囲を見回す。


「川辺の村より緊張感ある」


「見張り多い理由もわかる」


レンは柵の造りを確認していた。


「補修跡も新しい」


「最近やられたのかも」


フィオが森へ視線を向ける。


「交易路として使うなら、定期巡回必要だな」


四人は村を歩きながら状況を記録していく。


柵の高さ。


見張り位置。


荷車置き場。


逃走経路。


野営向きの場所。


そして、森との距離。


川辺の村とは違い、こちらは“防衛”の空気が強かった。


「でも悪くない」


セラが言う。


「ちゃんと備えてる」


「慣れてるんだろうな」


レオンも頷く。


森と共に生きる。


そんな雰囲気が、この村にはあった。


夕方になる頃には、一通りの確認も終わった。


「今日はここ泊まりだな」


レオンが言う。


「夜の森まで確認する必要はない」


「正解」


レンが即答した。


「今回は調査。無理する必要ない」


村の簡易宿は、昨日よりさらに質素だった。


木の机。


硬い椅子。


薄い毛布。


だが、入口近くには予備槍が立てかけられている。


「あー……」


フィオが部屋を見回す。


「なんか、こっちは冒険者宿って感じ」


「川辺は商人向けだったね」


セラが苦笑する。


「空気が違う」


下の食堂からは、村人達の低い声が聞こえていた。


笑い声は少ない。


代わりに、“慣れ”がある。


森が近い場所の空気だ。


「……やっぱ紅陽って平和なんだな」


フィオがぽつりと言った。


レオンは窓の外を見る。


遠くに森。


その奥から、かすかに魔物の気配。


それでも。


頭に浮かぶのは蒼月亭の灯りだった。


「まぁ、あそこは特別だろ」


そう言って、レオンは小さく笑った。


遠征はまだ続く。


だが、《黎明の風》は少しずつ理解し始めていた。


紅陽が、どれほど恵まれた場所になっているのかを。

今回は森側の村でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。