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第207話 正論の重さ

正しい意見ほど、時に場の空気を壊す。

蒼月亭の奥。


臨時の会議卓。


「さて」


ミレーヌが腕を組む。


「正式に来たってことは、本腰入れてくるってことだね」


アルヴェリアの使者との会談を前に、主要メンバーが集まっていた。


ローク、ダリウス、ルミア、カイ。


そして――カリナ。


「価格の件は一旦まとまりましたが」


ルミアが言う。


「継続的な交渉は必要です」


「だな」


ロークが頷く。


「流通は増える。揉め事も増える」


「警備隊で抑えきれるかどうかだな」


ダリウスが言う。


「今のままじゃ厳しい」


その時。


「一点、よろしいでしょうか」


カリナが口を開いた。


全員が視線を向ける。


「……どうした?」


ミレーヌが促す。


カリナは淡々と言う。


「現状の紅陽は、過渡期です」


一拍。


「ですが、構造が未整備です」


ロークが眉をひそめる。


「どういう意味だ」


「人が増え、施設が増え、取引が増えています」


「ですが」


一歩踏み込む。


「責任の所在が曖昧です」


空気が少し変わる。


「……回ってるだろ?」


ロークが言う。


「現時点では、です」


カリナは否定しない。


「ですが」


「問題が大きくなった場合、対応が遅れます」


ミレーヌが目を細める。


「つまり?」


「誰が最終判断を下すのか」


「誰が責任を持つのか」


「明確にすべきです」


静かな正論。


だが重い。


「……」


一瞬、場が止まる。


ルナが口を挟む。


「にゃはは」


「細かいこと気にしすぎじゃない?」


「回ってるならいいじゃん」


カリナは即答する。


「今は、です」


「ですが規模が拡大すれば、必ず破綻します」


「にゃ……」


ルナが言葉に詰まる。


ルミアが小さく頷く。


「正しいです」


カリナを見る。


「補足を」


カリナは続ける。


「例えば本日の価格問題」


「ルミア様が対応されましたが」


「不在時は誰が対応しますか?」


一拍。


誰もすぐに答えられない。


「……確かにな」


ロークが腕を組む。


「現場任せになってる」


ミレーヌがため息をつく。


「耳が痛いね」


カイが言う。


「でも必要な話です」


ダリウスが短く言う。


「決めろ」


それだけ。


だが十分だった。


ルミアが立つ。


「では」


一拍。


「評議体制を明確化します」


空気が締まる。


「商業・運営――ミレーヌ」


「建設・現場――ローク」


「治安・防衛――ダリウス」


「生産・技術――カイ」


一つずつ定まる。


「外交は私が担当します」


そして。


「実務統括」


カリナを見る。


「全体調整および管理を、カリナに」


ロークが笑う。


「裏の司令塔ってやつか」


「その通りです」


カリナは否定しない。


ミレーヌがニヤリとする。


「厳しそうだねぇ」


「必要ですので」


即答。


ルナが笑う。


「にゃはは、怖い人増えた」


「秩序です」


カリナが返す。


ダリウスが小さく頷く。


「……悪くねぇ」


ミレーヌも言う。


「これで責任もはっきりする」


ルミアが締める。


「これより紅陽は」


一拍。


「評議によって運営されます」


その言葉に、全員が理解する。


ただの集まりではない。


組織になった。


カリナが最後に言う。


「これで、ようやく“維持できる形”になります」


静かな言葉。


だが確信があった。


紅陽は一段、上に進んだ。

カリナの立ち位置確定回です。これで組織として完全に回せるようになります。

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