↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
206/266

第206話 価格の攻防

街が育てば、価値を巡る争いも生まれる。

昼の紅陽。


市場は活気に満ちていた。


「小麦、今日はこの値段だ」


外部から来た商人が言う。


提示された価格。


「……高すぎないか?」


ロークが眉をひそめる。


「需要が増えてるんだ」


商人は肩をすくめる。


「運ぶ手間もある」


「だから値上げだ」


周囲の商人たちも同調する。


「最近はここ、稼げるからな」


「値段上げても売れる」


ざわつく空気。


そこに。


「それは困ります」


ルミアが静かに入る。


「現状の流通価格から逸脱しています」


商人が笑う。


「お嬢ちゃん、商売わかってるか?」


「需要があれば値は上がる」


「当然だろ?」


「ええ」


ルミアは頷く。


「ですが」


一歩踏み込む。


「持続しません」


空気が変わる。


「……どういう意味だ」


「短期的な利益は得られます」


「ですが、ここは拠点として機能しています」


一拍。


「価格が不安定になれば、人は離れます」


ロークが腕を組む。


「つまり、長く儲からなくなるって話だな」


商人が舌打ちする。


「理想論だな」


「現実は今儲ける方が大事だ」


その時。


「それで潰れた場所、いくつ見てきた」


ダリウスが口を開く。


静かだが重い。


商人が一瞬黙る。


「……あんた、何者だ」


「通りすがりだ」


短く返す。


だが視線は逸らさない。


「ここは“使い捨ての場所”じゃねぇ」


一歩近づく。


「長く使う場所だ」


商人たちの空気が変わる。


強引には出られない。


「……じゃあどうする」


一人が言う。


「安くしろってか?」


ルミアが答える。


「適正価格での取引を求めます」


「その代わり」


一拍。


「安定した取引量を保証します」


商人たちが顔を見合わせる。


「量……か」


「継続的に、か」


条件が現実的になる。


「……悪くないな」


一人が呟く。


「安定して売れるなら、多少下げてもいい」


「結局そっちの方が儲かるか」


空気が変わる。


対立から交渉へ。


ロークが笑う。


「話が早くて助かる」


その時。


別の声。


「では、その話――」


全員が振り向く。


見慣れない一団。


整った服装。


護衛付き。


「正式に、詰めさせていただきたい」


男が言う。


「アルヴェリアより参りました」


場が静まる。


ざわめき。


「正式……?」


「本物かよ……」


冒険者たちが呟く。


ルミアが一歩前に出る。


「お待ちしておりました」


静かに頭を下げる。


ダリウスが横に立つ。


無言。


だが圧がある。


ミレーヌとロークも来る。


自然と並ぶ。


それが――形になる。


「紅陽の代表か」


使者が見る。


ルミアが答える。


「はい」


一拍。


「我々が、現状の評議を担っています」


ロークが小さく笑う。


「今決まったけどな」


「問題ありません」


ルミアが返す。


「機能していれば十分です」


使者が頷く。


「合理的だ」


一歩進む。


「では」


「正式に話をさせていただこう」


空気が変わる。


市場から――


交渉の場へ。


紅陽は今。


“認められる側”に立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。