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第205話 巡回と証明

守る力は、目に見える形で示してこそ信頼になる。

昼過ぎ。


紅陽の通りを、警備隊が巡回していた。


「異常なし……」


先頭の隊員が呟く。


まだ動きは硬い。


だが、周囲を見る目は以前よりも鋭くなっていた。


その後ろを、ダリウスが歩く。


無言。


それだけで十分な圧だった。


「……落ち着いてますね」


隊員が小声で言う。


「嵐の前かもしれねぇぞ」


ダリウスが返す。


その言葉通り――


「おい、ふざけんな!」


怒鳴り声が響く。


通りの一角。


露店の前で、二人の男が揉めていた。


「こっちは金払ってんだ!」


「知らねぇよ!順番守れ!」


人が集まり始める。


「行くぞ」


警備隊が前に出る。


「お二人とも、落ち着いてください!」


隊員が間に入る。


「順番は記録されています。こちらが先です」


紙を見せる。


「……ちっ」


片方が舌打ちする。


「わかったよ」


もう一人も肩をすくめる。


「最初からそう言えよ」


大事にはならない。


「……よし」


ダリウスが小さく言う。


だが――


その時。


「待て!」


別の声が上がる。


「そいつだ!」


人混みの中を、一人の男が走り抜ける。


手には――袋。


「盗みだ!」


「捕まえろ!」


一瞬で空気が変わる。


「追え!」


ダリウスが叫ぶ。


警備隊が走る。


「止まれ!」


逃げる男。


人をかき分け、裏路地へ。


「速い……!」


隊員が息を切らす。


その瞬間。


「にゃはは」


上から声。


ルナが屋根の上にいた。


「そっちだよ」


軽く跳ぶ。


着地。


逃走ルートを塞ぐ。


「くっ……!」


男が方向を変える。


だが――


その先にダリウス。


「終わりだ」


短い一言。


男が飛びかかる。


「どけ!」


振りかぶる。


だが。


ガシッ


腕を掴まれる。


「甘い」


一瞬で体勢を崩される。


ドンッ


地面に押さえつける。


「ぐっ……!」


完全に制圧。


「動くな」


低い声。


男は動けない。


警備隊が追いつく。


「確保しました!」


「よし」


ダリウスが頷く。


袋を確認する。


「被害品だな」


「はい」


持ち主が駆け寄る。


「それ俺のだ!」


「確認を」


ルミアが来ていた。


冷静に対応する。


「特徴は?」


「中に銀貨と……青い布が」


袋を開ける。


一致。


「問題ありません」


「ありがとうございます!」


持ち主が頭を下げる。


周囲から声が上がる。


「ちゃんと捕まえたな」


「仕事してるじゃねぇか」


「さっきの揉め事もすぐ収めてたしな」


空気が変わる。


見られている。


そして――


評価されている。


隊員たちが少しだけ胸を張る。


ダリウスが男を立たせる。


「牢に入れる」


短く言う。


「はい!」


隊員が応じる。


連れていく。


その背を、ルナが見ていた。


「にゃはは、いいじゃん」


「ちゃんと“警備隊”してるね」


ロークも頷く。


「これなら任せられるな」


ミレーヌが腕を組む。


「最初はどうなるかと思ったけどね」


ルミアが静かに言う。


「信頼は、これで積み上がります」


ダリウスが周囲を見る。


人々の視線。


先ほどとは違う。


警戒ではない。


「……ああ」


小さく呟く。


「これでいい」


巡回が再開される。


通りはいつもの活気を取り戻す。


だが一つ違う。


安心感。


紅陽は――


守られていると、理解され始めていた。

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