第203話 警備隊始動
守る側に立つなら、甘さは捨てろ。
朝の広場。
紅陽の中央に、人が集まっていた。
「整列!」
ダリウスの声が響く。
一瞬で空気が締まる。
冒険者たちが慌てて並ぶ。
「遅い」
短い一言。
それだけで背筋が伸びる。
「ここは戦場じゃねぇ」
「だが、気を抜けば同じだ」
低く言う。
「守る側に回るってのは」
一拍。
「自分の判断で、人の命を左右するってことだ」
沈黙。
誰も軽く返事できない。
「覚悟はあるな」
「……あります」
一人が答える。
「声が小せぇ」
「あります!!」
全員が声を揃える。
「よし」
ダリウスが頷く。
「まずは基礎だ」
剣を抜く。
「構えろ」
訓練が始まる。
「遅い」
「力みすぎだ」
「足が死んでる」
容赦がない。
一人、弾き飛ばされる。
「ぐっ……!」
「それで守れると思うな」
手加減はしている。
だが甘くはない。
その様子を、ルナが見ていた。
「にゃはは」
「スパルタだね」
リディアが言う。
「……必要だ」
短く。
その通りだった。
少し離れた場所では。
「こちらもいきます!」
レンとレオンが動く。
連携訓練。
「間合いがズレてます!」
「すぐ修正します!」
実戦的だ。
「魔法いきます!」
セラの声。
後衛訓練も同時に進む。
ルミアは全体を見る。
「……形になってきましたね」
カリナが頷く。
「はい」
一方。
村の入口付近。
「おい、順番だろ!」
怒鳴り声。
揉めていた。
「俺が先に来てたんだ!」
「知らねぇよ!」
道具屋の前で、冒険者同士が言い争っている。
「……始まったね」
ロークがため息をつく。
ミレーヌが腕を組む。
「行きな」
ダリウスが一歩踏み出す。
そのまま近づく。
「やめろ」
低い声。
二人が振り返る。
「……なんだお前」
次の瞬間。
ガシッ
肩を掴まれる。
「痛っ!?」
「順番守れねぇなら」
静かに言う。
「利用する資格はねぇ」
一瞬で空気が変わる。
「……わ、悪かった」
片方が引く。
「……俺も」
もう一人も目を逸らす。
ダリウスが離す。
「次からは守れ」
「はい……」
完全に押さえ込んだ。
それを見ていた冒険者たちが呟く。
「すげぇな……」
「一言で終わらせたぞ」
ルナが笑う。
「にゃはは、怖いからね」
「お前が言うな」
ロークがツッコむ。
ダリウスが戻る。
「こういうのは増える」
ルミアが頷く。
「はい」
「ですので」
一歩前に出る。
「ルールを明文化します」
全員が見る。
「順番、利用時間、優先順位」
「違反者には制限をかけます」
「いいね」
ミレーヌが笑う。
「やっと街っぽくなってきた」
ダリウスが言う。
「守るだけじゃ足りねぇ」
一拍。
「回す必要がある」
「はい」
ルミアが答える。
訓練に戻る。
再び声が響く。
「もう一回だ!」
「はい!!」
冒険者たちの動きが変わる。
さっきよりも、少しだけ。
確実に。
紅陽は強くなる。
戦う力だけじゃない。
守る力も。
そして――
維持する力も。




