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第199話 紅陽防衛戦

守ると決めたなら、守りきるだけだ。

夕暮れ前。


紅陽の外れ。


「……止まれ」


ダリウスが低く言った。


全員の動きが止まる。


「どうしました?」


カイが問う。


ダリウスは遠くを見る。


「……来るぞ」


一拍。


「数が多い」


次の瞬間。


――ドォォォン!!


地面が揺れた。


「なっ……!?」


レンが振り返る。


森の奥から、土煙。


そして。


「魔物……!?」


セラの声が震える。


群れ。


いや――群れではない。


波だ。


数十、いや百に近い。


ゴブリン、ウルフ、混成。


統率はないが、数が異常だった。


「スタンピードではありませんが……」


ルミアが即座に分析する。


「規模は同等です」


「十分すぎるだろ」


ロークが吐き捨てる。


その時。


蒼月亭側から声。


「なんだこの数!?」


「やべぇぞ!」


宿泊していた冒険者たちがざわつく。


「逃げるか!?」


「いや、間に合わねぇ!」


混乱が広がる。


その前に――


「騒ぐな」


ダリウスが一歩出る。


低い声。


だが、通る。


「防衛する」


一言だった。


冒険者たちが見る。


「できるのか……?」


「この数を?」


ルナが笑う。


「にゃはは」


「できるよ」


その目は、戦闘のそれだった。


空気が変わる。


「配置を決めます」


ルミアが即座に指示を出す。


「前衛、ダリウス・リディア」


「機動、ルナ・レン」


「中衛支援、フィオ・レオン」


「後衛、セラ・アリア」


「私は全体指揮を取ります」


迷いがない。


「冒険者の方々は」


一瞬だけ見る。


「無理に前に出ないでください」


「防衛線の維持を優先します」


その言葉に、逆に空気が締まる。


「……やるしかねぇな」


冒険者の一人が呟く。


ダリウスが剣を抜く。


「来るぞ」


次の瞬間。


魔物が雪崩れ込む。


「――行くぞ!」


ダリウスが突っ込む。


速い。


一撃で二体を斬り捨てる。


「……強ぇ」


冒険者が息を呑む。


リディアが横を抜ける。


青白い光。


一閃。


まとめて切断。


「何だあれ……」


次の瞬間。


「にゃはは!」


ルナが飛び込む。


完全に上から。


「遅いね」


軽い声。


だが動きは異常。


三体、四体、瞬時に崩れる。


「嘘だろ……」


冒険者たちの目が変わる。


「援護します!」


レンとレオンが動く。


フィオの弓矢が動きを止める。


連携。


隙を作らせない。


「魔法、いきます!」


セラが詠唱。


広範囲制圧。


アリアが補助。


「前線安定してます!」


「押し返せます!」


ルミアが判断する。


「押し込みます」


「ルナ、左を掃討」


「了解!」


「ダリウス、中央維持」


「任せろ」


「リディア、突破を」


「……ああ」


一瞬で戦線が変わる。


押し返す。


崩れる。


魔物の波が止まる。


最後の一体が倒れる。


静寂。


「……終わった?」


誰かが呟く。


ダリウスが周囲を見る。


「……ああ」


剣を納める。


「全滅だ」


その一言で理解する。


冒険者たちは言葉を失っていた。


「なんだよ……今の」


「強すぎるだろ……」


ルナが笑う。


「にゃはは、普通だよ?」


「どこがだ!」


思わずツッコミが入る。


カイが息を吐く。


「被害は?」


「軽微です」


ルミアが答える。


「ほぼゼロです」


ダリウスが冒険者を見る。


「わかっただろ」


一言。


「ここは守れる」


その言葉に、全員が黙る。


紅陽は、証明した。


ただの村ではない。


守れる場所だと。

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