↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
190/282

第190話 命令と選択

守るために、斬られることを選ぶ男がいる。


夜風が吹く。


紅陽の外れ、広場。


向かい合うのは二人。


リディアとダリウス。


「……随分と、静かだな」


ダリウスが口を開く。


軽く肩を回し、剣を抜く。


いつものように豪快に――


だが、その目は笑っていなかった。


「無駄な音はいらん」


リディアが答える。


「そうかよ」


ダリウスは鼻で笑う。


一拍。


「……お前、わかってるな」


「……ああ」


短い返答。


それで十分だった。


ダリウスは小さく息を吐く。


「ったく……」


「面倒なことになっちまったな」


軽口のようで、その実重い。


「命令、か」


リディアが言う。


「おう」


ダリウスは即答する。


「フェルディア王の勅命だ」


「俺は従うしかねぇ」


「だが」


一拍。


「納得はしてねぇ」


はっきり言い切る。


ルナが小さく笑う。


「にゃはは、やっぱりね」


ダリウスは視線を外さない。


「ここを放っておけばどうなるか……お前もわかるだろ」


リディアは何も言わない。


「今は様子見だ」


「だが次は違う」


「大軍が来る。容赦なく潰しに来る」


低く、だが確実に言う。


「そうなりゃ――」


一瞬だけ言葉が詰まる。


だが、続ける。


「ここは終わりだ」


静かな断言。


風が止まったように感じた。


「だから来た」


ダリウスが言う。


「ここで終わらせる」


「問題は“解決した”って形にする」


「……お前が死ねば、か」


リディアが言う。


ダリウスは笑った。


「違ぇよ」


一歩踏み出す。


「俺が死ぬんだ」


場の空気が固まる。


「そうすりゃ、全部丸く収まる」


「命令は果たした」


「問題も消えた」


「ここも守れる」


「……馬鹿だな」


リディアが言う。


「知ってる」


ダリウスは即答する。


「だが、これしかねぇ」


剣を構える。


「俺は近衛だ」


「命令も守る」


「守るべきも守る」


「両方やるなら、こうするしかねぇ」


リディアは黙る。


数秒。


「……覚悟はできているな」


「ああ」


迷いはなかった。


ダリウスは笑う。


ほんの少しだけ。


「悪いな」


「後は任せる」


その一言に、全てが詰まっていた。


次の瞬間。


二人が消える。


鋼の音が一度だけ響く。


そして――


静寂。


ダリウスの体が崩れ落ちた。


「……隊長が……」


兵士の声が震える。


「ダリウス隊長が戦死した!!」


一気に場が動く。


「確認しろ!」


「……脈なし!」


「……間違いない!」


「隊長、戦死……!」


別の兵士が叫ぶ。


「全員撤退! 王都へ報告する!」


兵達は迷いなく動き出す。


誰一人疑わない。


それが“事実”になる。


ルナが小さく笑う。


「にゃはは……完璧」


リディアは答えない。


ただ、倒れた男を見る。


「ダリウスさん!!」


カイが駆け寄る。


ここから先は――まだ終わっていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。