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第180話「変質する迷宮」

同じ場所のはずなのに、違って見える。

それは気のせいではなく――変わっている証だ。

黒影洞、内部。


三人はさらに奥へ進んでいた。


「……」


フィオが足を止める。


「どうしたの?」


セラが小さく聞く。


「……違う」


短く呟く。


「何が?」


フィオは周囲の壁を見る。


「前に来た時と、配置が違う」


「……え?」


セラも辺りを見回す。


「でも、ここって……」


「一本道だったよね?」


「うん」


フィオが頷く。


「でも、今は……」


視線の先。


分岐。


「……増えてる」


ルナが興味深そうに笑う。


「へぇ」


「迷路になってきたってこと?」


「それだけじゃない」


フィオがしゃがむ。


地面を指でなぞる。


「足跡、残ってない」


「なのに……」


顔を上げる。


「魔物はいる」


「……つまり」


セラが小さく言う。


「中で動いてる?」


「……ああ」


ルナの目が細くなる。


「誰かが弄ってるね」


軽い口調。


だが、完全に警戒している。


「にゃはは」


「面白くなってきた」


さらに進む。


空気が重くなる。


「……濃い」


セラが呟く。


「さっきより、魔素が……」


「上がってる」


フィオも頷く。


「この先、中心に近い」


その時。


ガラッ


横の壁が崩れる。


「っ!」


魔物が飛び出す。


だが――


「遅い」


スゥ――


ルナの一閃。


即座に沈む。


「壁から来るのか」


「面倒だね」


「構造が変わってる証拠」


フィオが言う。


「固定じゃない」


「……動くダンジョン?」


セラが小さく言う。


「……それに近い」


ルナが笑う。


「いいじゃん」


「壊しがいある」


「壊すな」


フィオが即答する。


「帰れなくなる」


「にゃはは」


軽く笑う。


だがその時。


奥から、重い気配。


「……来る」


フィオが弓を構える。


セラも手を当てる。


「……止める準備」


ルナが前に出る。


スゥ……


剣が青白く光る。


現れたのは――


さっきよりもさらに異質な個体。


体の一部が歪んでいる。


「……変異してる」


フィオが呟く。


「魔素の影響……だけじゃない」


「人の手、入ってるね」


ルナの声が低くなる。


「……いいね」


「やっと“面白い”の来た」


完全に上から。


「セラ」


「……うん!」


スゥ……


足元固定。


だが――


「……っ!」


「効きが弱い!」


「硬いね」


フィオが矢を放つ。


ヒュンッ!


だが弾かれる。


「……防御も上がってる」


ルナが踏み込む。


スゥ――


斬る。


だが浅い。


「へぇ」


「耐えるんだ」


少し笑う。


「じゃあ――」


もう一歩踏み込む。


スゥ……


剣の光が強くなる。


「通すよ」


一閃。


ズバッ


深く入る。


「……効いた」


もう一撃。


スゥ――


崩れる。


静寂。


セラが息を吐く。


「……今の、ちょっと怖かった」


「前のと違うね」


フィオも頷く。


「明らかに変わってる」


ルナが軽く剣を振る。


スゥ……


光が消える。


「……確定だね」


「誰かが、このダンジョン弄ってる」


一拍。


「しかも結構近い」


セラ

「……どうする?」


フィオ

「戻る?」


ルナは奥を見る。


暗い通路。


わずかに揺れる気配。


「……」


少しだけ笑う。


「もう少しだけ行く」


「原因、見てから帰る」


フィオがため息をつく。


「……予想通り」


セラも小さく頷く。


「……うん」


三人はさらに奥へ進む。


変わってしまった迷宮の中へ。


そして――


その“中心”へ。

違和感は、入口に過ぎない。

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