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第177話「蒼き刃の夜」

守ると決めた場所には、理由が生まれる。

その理由が――刃の重さを変える。

夜。


紅陽の外れ。


風が止まっていた。


「……来るにゃ」


ルナが前に出る。


その目は、いつもの軽さが消えている。


リディアも並ぶ。


「……ああ」


「数が多い」


闇の奥。


無数の気配。


魔物。


そして、その後ろに立つ影。


「統率あり」


「魔族だ」


レオンが剣を握る。


「迎え撃つぞ」


スゥ……


青白い光が夜闇に浮かぶ。


カイが作った武器。


それぞれの魔力を流すための武器。


「流れ、揃ってるね」


フィオが静かに言う。


「問題ないにゃ」


ルナが一歩踏み出す。


「雑魚は私がやる」


「後ろは任せた」


リディアが短く答える。


「了解」


その瞬間。


ルナが消えた。


スゥ――


一閃。


先頭の魔物がまとめて崩れる。


「遅い」


「その程度で来たの?」


完全に上からだった。


レンも続く。


「俺も行く!」


短剣を抜く。


スゥ……


青白い光が刃を走る。


「軽っ!」


「でも威力落ちてねぇ!」


魔物の間を駆け抜ける。


「ほんとに動きやすいなこれ!」


「無駄が減ってるだけだよ」


後方からカイの声が届く。


蒼月亭の前。


ミレーヌと並びながら戦場を見ている。


「……やれるかい?」


「うん」


カイは静かに頷いた。


「みんな、ちゃんと使えてる」


「自分の戦い方のままね」


■ 後衛


フィオが弓を引く。


視線は戦場全体。


「前、押してる」


ヒュンッ!


矢が飛ぶ。


魔族兵の肩を射抜く。


ヒュンッ!


二射。


三射。


正確無比。


「近づけさせない」


腰には小太刀。


カイから渡されたもの。


だが今は抜かない。


近付かれた時の最後の切り札。


それで十分だった。


■ 中衛


セラが神木の杖を握る。


青白い光が杖を伝う。


以前カイが調整した杖。


魔力の流れが滑らかになっている。


「……届く」


地面へ杖を向ける。


魔力が広がる。


「ここ……通さない」


魔物の足が止まる。


「今!」


アリアが反応する。


「前、行ける!」


矢が放たれる。


ヒュンッ!


魔物の眉間を貫く。


腰には短剣。


カイから貰った仲間の証。


だが今は弓が仕事だった。


■ 前線強襲


レオンが突っ込む。


「押すぞ!」


レンが並ぶ。


「おう!」


スゥ……


青白い光が走る。


「止まらねぇ!」


「軽いから動き続けられる!」


レオンが笑う。


「だから止めるな!」


「止める余裕ねぇよ!」


■ ルナ


「遅いって言ってる」


魔物を踏み越える。


「数だけ増やしても意味ない」


一歩。


スゥ――


一閃。


魔物がまとめて崩れる。


「弱いね」


■ リディア


魔族兵の前へ出る。


静かに剣を構える。


スゥ……


一番強く光る刃。


カイが作った新しい剣。


王女から授かった剣ではない。


今の自分の剣。


「……来い」


敵が踏み込む。


瞬間。


スッ


剣が通る。


遅れて魔族兵が膝をついた。


「……っ」


「流れを断てば終わりだ」


静かな声。


だが圧倒的だった。


■ 戦場全体


青白い光が交差する。


「これすごいな!」


レンが叫ぶ。


「動きが止まらねぇ!」


レオンも笑う。


「だから止めるな!」


ルナが即答する。


「止めたら終わりにゃ」


「鬼かお前!」


「にゃはは」


笑いが混じる。


だが前線は崩れない。


■ 蒼月亭前


ミレーヌが腕を組む。


「……やるじゃないか」


カイが小さく笑う。


「うん」


「ちゃんと繋がってる」


「一人じゃない」


「みんなで動いてる」


それが嬉しかった。


■ 終盤


魔族兵が後退する。


「……引いたか」


リディアが剣を下ろす。


残った魔物も処理される。


静寂。


「終わったにゃ」


ルナが伸びをする。


「思ったより弱かったね」


「お前が言うな」


レンが苦笑する。


フィオも頷いた。


「連携は崩れてない」


セラも小さく笑う。


「……うん」


「崩れなかった」


レオンが剣を肩に担ぐ。


「守れたな」


その言葉に全員が頷いた。


■ 翌朝


蒼月亭。


酒場の中。


ミレーヌが脚立に乗っている。


「ここでいいかね」


カイが下から見る。


「うん」


「見えるし邪魔にならない」


カチッ


壁の上段。


一本の剣が掛けられる。


リディアの旧剣。


王女から授かった剣。


長く共に戦った剣。


ロークが酒を飲みながら言う。


「いいな」


「雰囲気出る」


レンが首を傾げる。


「何のだよ」


「この店の歴史だよ」


ロークが笑う。


フィオも見上げる。


「……意味がある」


リディアは少し離れてそれを見る。


ルナが隣に立った。


「いいの?」


「もう使わなくて」


リディアは短く答える。


「問題ない」


「役目は終えた」


一拍。


腰の剣に手を置く。


スゥ……


青白く光る刃。


カイから授かった新しい剣。


「今は、これでいい」


ルナが笑う。


「にゃはは」


「似合ってるよ」


リディアは何も言わない。


だが。


その表情は少しだけ柔らかかった。


蒼月亭に笑い声が戻る。


その上に飾られた一本の剣。


それはもう戦うためではない。


歩いてきた道の証として。


静かに、そこに在った。


刃は変わった。

だが、守るものは同じだ。

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