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第175話「流れの手本」

見えないものは、理解しにくい。

だが――“見えてしまえば”話は変わる。

鍛冶場の裏手。


新しく渡された武器を手に、全員が試している。


「……難しいな」


レンが剣を振る。


「軽いのに、なんか引っかかる」


「止めてるかもしれないね」


カイが優しく言う。


「少しだけ、力を抜いてみようか」


「抜く、ねぇ……」


もう一度振る。


スッ


「……あ、さっきよりいい」


「うん、その感じ」


そのやり取りを、静かに見ていたリディアが口を開く。


「……違う」


全員が止まる。


「何がだ?」


レンが聞く。


リディアは一歩前に出る。


「“流す”のではない」


「“通す”」


「……?」


剣を構える。


「見ていろ」


静寂。


一瞬だけ、空気が張り詰める。


リディアの呼吸が、わずかに整う。


その瞬間――


スゥ……


剣が、淡く青白く光る。


「……っ」


セラが息を呑む。


「光ってる……」


フィオの目が細くなる。


「魔力……流れてる」


リディアは何も言わない。


ただ、そのまま一歩踏み込む。


スッ――


振る。


音はない。


だが次の瞬間。


離れた木の幹に、遅れて線が走る。


スパッ


「……え?」


レンが呟く。


「今の距離で……?」


「触れていない」


レオンが低く言う。


リディアは剣を下ろす。


青白い光が、すっと消える。


「力は使っていない」


「ただ――通しただけだ」


静かな声。


カイが小さく頷く。


「うん……今のが理想だね」


レンが眉をひそめる。


「いや、意味がわからん」


「光ってたぞ?」


「うん」


カイが少し考えてから説明する。


「魔力がちゃんと通るとね」


「無駄な抵抗がなくなる」


「その状態が、目に見える形で出てるんだと思う」


「……それが、あの光か?」


「たぶんね」


フィオが静かに言う。


「流れが、外に出てる」


「うん」


「それが“揃ってる”証拠」


セラが自分の短剣を見る。


「……じゃあ」


「これも……光るの?」


カイが優しく笑う。


「うまく通れば、ね」


「やってみようか」


セラが深く息を吸う。


短剣を構える。


「……」


さっき見た動きを思い出す。


力を抜く。


流すのではなく――通す。


スゥ……


「……!」


ほんのわずか。


短剣の刃先が、淡く光る。


「……光った」


小さく呟く。


「崩れてない……」


カイが嬉しそうに頷く。


「いいね」


「今のすごくいい」


レンも構える。


「よし、俺も」


振る。


……だが光らない。


「……くそ」


「なんでだ」


カイが苦笑する。


「焦らなくていいよ」


「少しずつで大丈夫」


フィオは静かに小太刀に触れる。


魔力を通す。


スゥ……


刃が、細く光る。


フィオが頷く。


「流れが繋がってる」


ルナがニヤリと笑う。


「いいね」


「見えるとわかりやすい」


軽く剣を振る。


スゥ……


青白い光が走る。


「ほら」


「こういう感じ」


リディアが横目で見る。


「……悪くない」


短く評価する。


カイは静かに全員を見る。


「うん」


「このままいけば――」


一瞬、空を見上げる。


「実戦でも、きっと通用する」


その時。


遠くで、空気が揺れる。


「……」


リディアが顔を上げる。


ルナも止まる。


「来てるね」


「……ああ」


「増えている」


静かな緊張が走る。


カイが少しだけ困ったように笑う。


「……ちょうどいいね」


「試せそうだ」


青白い光は、まだ消えていない。


それは――これから使われる力だった。

見えるようになった。

次は――それを使う。

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