第166話「第一段階の決着」
全てを一度に解決する必要はない。
まずは一つ――流れを断つ。
翌日。
紅陽はいつも通りに見えた。
だが、その裏ではすでに動き出していた。
「準備はいいか?」
ロークが確認する。
「ああ」
レンが頷く。
「外周は抑えてる」
リディアが言う。
「逃げ道は絞ってある」
今回の標的は一つ。
偽物ポーションの流通。
「場所は?」
「オルフェン手前の林だ」
ロークが答える。
「定期便のルートに合わせて動いてる」
「つまり、そこを叩けばいいってことだな」
「そうだ」
「派手にやるなよ」
ミレーヌが釘を刺す。
「客に影響出たら困るからね」
「わかってるって」
レンが軽く手を上げる。
「静かに潰す」
一方、蒼月亭。
ルナはレンファの横にいた。
「行くの?」
「うん、今回は後方だよ」
「無理しないでね」
「大丈夫」
「すぐ終わる」
「……そっか」
少しだけ近づく。
「変なのいたら呼んで」
「うん」
「すぐ行くにゃ」
軽く笑う。
だが、その目は真剣だった。
夕方。
林の中。
「……いるな」
リディアが低く言う。
木々の間。
荷馬車。
数人の男。
小瓶を並べている。
「当たりだ」
ロークが呟く。
「行くぞ」
三人が動く。
音もなく。
「っ!?」
気付いた時には、もう遅い。
リディアが一人を制圧。
レンがもう一人を押さえ込む。
ロークが荷を押さえる。
「動くな」
「くそっ……!」
「逃げられると思ったか?」
あっという間だった。
「……終わりだな」
レンが息を吐く。
荷を確認する。
「……全部これか」
小瓶の山。
「粗悪品だらけだ」
「だが、数はある」
ロークが一つ手に取る。
「これだけ流れてりゃ、そりゃ広まる」
「……で、どうする?」
「壊す」
即答。
「見せしめも兼ねてな」
その場で、すべての小瓶を破棄する。
「これで流れは止まる」
「完全にはな」
リディアが言う。
「だが、元は残る」
「構わねえ」
ロークが笑う。
「まずは一つだ」
「流通は潰した」
紅陽に戻る。
「どうだった?」
ミレーヌが聞く。
「終わりだ」
ロークが答える。
「しばらくは出回らねえ」
「よかったよ」
酒場に、少しだけ安堵が広がる。
ルナがレンファの方を見る。
「大丈夫だった?」
「うん、問題なし」
「そっか」
「じゃあ今日はゆっくりできるにゃ」
その言葉に、みんなが少し笑う。
だが――
ロークは窓の外を見る。
「……一つ、だ」
小さく呟く。
リディアも同じ方向を見る。
「……ああ」
「もう一つは残ってる」
ルナも静かに言う。
「次はそっち」
一瞬だけ。
目が冷たくなる。
だがすぐに――
「ごはんまだ〜?」
いつもの声に戻る。
空気が緩む。
紅陽は、最初の問題を乗り越えた。
だが――
それはほんの前哨戦に過ぎない。
本当に厄介なものは、まだ動いていない。
一つは終わった。
次は――“見ている者”の正体。




