↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
154/288

第154話「流れを作る者」

人が集まれば、物も動く。

だがその流れは――誰かが作らなければならない。

ある日の夕方。


ひと段落した酒場で、ミレーヌはロークに声をかけた。


「ねえ、ローク」


「なんだ?」


「ここ最近、冒険者が増えてきてるだろ?」


「ああ、黒影洞目当てだな」


ロークは頷く。


「そのせいでね」


ミレーヌは腕を組んだ。


「調味料も肉も、減りが早いんだよ」


「酒もか?」


「そっちは言うまでもないだろ」


ミレーヌが呆れたように言う。


ロークは小さく笑った。


「で?」


「人も増えてきてるからね」


「こっちが買い出しに行くわけにもいかない」


「だから――」


一拍置いて言う。


「定期的に来てくれる行商人が欲しいんだよ」


「なるほどな」


ロークは腕を組み、少し考える。


「できなくはない」


「本当かい?」


「ああ」


「オルフェンからなら距離的にも現実的だ」


「定期便みたいな形にすればいい」


「肉、魚、酒、調味料……」


「まとめて運ばせる」


「それができれば助かるよ」


ミレーヌが頷く。


「じゃあ、その辺は俺が調整しておく」


「行商人にも話を通すし、ルートも整える」


「頼むよ」


数日後――


紅陽の外れに、軋む音が響いた。


「来たぞー!」


荷馬車が一台、ゆっくりと村へ入ってくる。


荷台には、樽や木箱がぎっしりと積まれている。


「おお……」


レオンが思わず声を上げる。


「これ全部か?」


「第一便だな」


ロークが答える。


「様子見も兼ねてるが……」


「十分すぎるだろ」


レンが苦笑する。


荷馬車から次々と荷が降ろされていく。


肉、干し魚、野菜、香辛料、酒樽――


蒼月亭の裏手は、一気に活気づいた。


「これでしばらくは安心だね」


ミレーヌが満足そうに言う。


「週に一度、この便が来るようにしておいた」


ロークが続ける。


「状況を見て増やすこともできる」


「さすがだね」


「こういうのはな、流れを作るのが大事なんだ」


ロークは肩をすくめる。


「一度流れができちまえば、あとは勝手に回る」


その言葉通りだった。


物が安定して入るようになれば、商人も安心して来る。


商人が増えれば、さらに物が集まる。


紅陽は、ただの拠点ではなく――


“流れの中心”へと変わり始めていた。


その様子を見ながら、カリナは静かに呟く。


「……すごいですね」


ルミアは小さく頷いた。


「ええ……」


その目は、ただの村を見るものではなかった。

流れは、力になる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。