第152話「賑わいの代償」
人が集まれば、活気が生まれる。
だがその裏には――支える者の忙しさがある。
黒影洞へ向かう冒険者たちが、
紅陽を経由するようになってから――
蒼月亭は、一気に忙しくなった。
「エールくれ!」
「はーい!」
「煮込み追加だ!」
「あいよー!」
「部屋は?」
「二階の奥になります!」
声が飛び交う。
皿の音、笑い声、足音。
酒場は常に人で溢れていた。
「こっちお願い!」
「はい!」
セラが皿を持って走る。
「こぼさないでよ〜!」
「わかってるってば!」
アリアが苦笑しながらフォローする。
「にゃっ、熱っ!」
ルナが鍋を持ちながら慌てる。
「大丈夫!?」
「大丈夫にゃ!」
三人も、店番が終わるとそのまま酒場へ。
給仕として動き回っていた。
その様子を見ながら――
ミレーヌがぽつりと呟く。
「……懐かしいね」
「オルフェンにいた頃を思い出すよ」
「毎日、こんな感じだった」
「へぇ」
レオンが笑う。
「これが本来の姿ってやつか」
「そうだね」
ミレーヌは忙しく手を動かしながら頷く。
「だけど――」
「さすがに、人手が足りない」
「だな」
レンも同意する。
「回ってるのが不思議なくらいだ」
「カイもレンファも手が離せないしね」
カイは鍛冶場。
レンファは錬金。
ロークは店と情報。
それぞれが役割に追われている。
「誰か、いい人来ないかねぇ……」
ミレーヌがふっと息をつく。
その言葉は、
忙しさの中に、確かな“余白”を残した。
紅陽は今、
確実に発展している。
だが同時に――
“人が足りない”という新たな課題も抱え始めていた。
賑わいは、次の課題を連れてくる。
次は――新しい出会い。




