第150話「動き出す世界と紅陽」
一つの情報は、次の警戒を生む。
そして警戒は――備えへと変わる。
「それとな――」
ロークが、さらに続けた。
「アルヴェリアも、この辺りにだいぶちょっかいを出してる」
「アルヴェリアが?」
ミレーヌが眉を上げる。
「この国の(フェルディア王国)アルヴェリア王国に対する前線基地と言われる………」
「グラディウス砦都市」
「そこでもな」
「以前より、明らかに動きが増えてる」
「……」
レオンが腕を組む。
「戦の準備、か」
「だろうな」
ロークは頷く。
「アルヴェリアも財政状態が良くないらしい」
「だから――」
「グラディウスを落として、何とかしたいんだろう」
「争い事ばかりですね」
レンファが静かに言う。
「だから武器屋が儲かるんだよ」
ロークがにやりと笑う。
「それに――」
「ポーションまで売ったら、紅陽は潤うぜ」
「……」
「ポーションはな」
「戦だけじゃない」
「平時でも、病気や怪我の治療に使われる」
「作れば作るだけ売れるってもんだ」
「そうなると……」
ミレーヌが静かに言う。
「ここの守りを、固めないとね」
「……ああ」
リディアが短く頷く。
「来る理由が増えた」
その一言に、全員が理解する。
“狙われる理由”が増えたのだ。
ロークはさらに続ける。
「行商人や冒険者には、もう宣伝してある」
「ここで武器が買える」
「エルフの商品も手に入るってな」
「……」
「そこに、ポーションが加わる」
「そりゃ人も増えるね」
アリアが言う。
「商人も集まる」
「だからこそ――」
ロークは椅子に深く腰をかけた。
「俺もしばらくは、ここにいる」
「店に張り付いて、情報を集めるつもりだ」
「なるほどね」
ミレーヌが頷く。
「じゃあ、店番は――」
「引き続き頼むよ」
ロークが視線を向ける。
「セラ、アリア、ルナ」
「えっ?」
「むさ苦しいやつより」
「看板娘から買った方がいいだろ?」
「ナンパされるかもな」
「ええ〜!?」
「どうしよう〜!」
「困る〜!」
「にゃはは!」
三人が一斉に騒ぎ出す。
「楽しそうだな」
レンが苦笑する。
「いいじゃないか」
レオンも肩をすくめる。
「店も賑やかになる」
重くなりかけた空気が、ふっと緩む。
だが――
確実に状況は変わっていた。
外の世界は、動き出している。
そして紅陽もまた――
その流れの中に、入っていく。
集まる人、増える価値。
次は――それを守る力。




