第148話「食卓の上の情報」
温かな食卓の上で語られる言葉は、
時に――世界の輪郭を変える。
その日の夕食。
蒼月亭の酒場には、いつものように人が集まっていた。
ロークも加わり、テーブルは一層賑やかになる。
「やっぱりこれだな」
ロークは酒を片手に、煮込みを口に運ぶ。
「ミレーヌに胃袋掴まれちゃってるからな」
「旅先の料理に不満でよ」
「ふふ、嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
ミレーヌが笑う。
「ほんと美味しいよね〜」
ルナも頬を緩める。
「ここに慣れると、他の宿屋泊まれないぞ」
レオンが肩をすくめる。
「だよね〜」
「レンファとずっとここにいるもん♪」
ルナはそのままレンファにくっつく。
「……」
「はいはい」
レンが苦笑する。
「仲がいいのはわかった」
「いいでしょ〜!」
「にゃはは」
笑いが広がる中――
レンファが少し姿勢を正した。
「あ、遅くなりましたが」
「レンファです」
「ロークだ」
「よろしく頼む」
短いが、しっかりとした握手。
「何をやってるんだい?」
「錬金術師です」
「ほう……」
ロークの目が、わずかに細くなる。
「もしかして――」
「ルクスリアの元宮廷錬金術師だったか?」
「……」
一瞬の静寂。
「よくご存知で」
レンファが静かに答える。
「やっぱりな」
ロークは小さく笑った。
「今回仕入れてきた情報の中に、あんたの話があってね」
「私の……?」
「そうだ」
ロークは酒を一口飲み、ゆっくりと続ける。
「いろいろ、面白いことになってる」
「……」
「みんなにも言っておかないとな」
ミレーヌが頷く。
「そうだね」
レンファも、静かに頷いた。
「……聞かせてください」
賑やかだった空気が、少しだけ引き締まる。
だが、それでも食卓は温かいまま。
この場所で語られる話は――
ただの噂では終わらない。
紅陽の“これから”に繋がっていく。
外から来た情報は、やがて内側を動かす。
次は――ルクスリアの現状。




