第147話「帰還と情報」
外へ出る者がいるから、世界は広がる。
そしてその情報は――紅陽に新たな意味を与える。
「帰ったぞ〜!」
軽快な声とともに、ロークが紅陽へ戻ってきた。
「おかえり〜!」
最初に顔を出したのは、ロークの店。
扉を開けた瞬間――
「……?」
アリアとセラの姿はいつも通り。
だが、その隣に――
見知らぬ猫耳の少女がいた。
「獣人?」
ロークが目を細める。
「うん、ルナちゃんだよ!」
セラが元気よく答える。
「新しい住人か?」
「そう」
アリアが頷く。
「旦那さんのレンファさんも一緒にね」
「獣人夫婦か?」
「そうなの〜!」
「よろしくにゃん♪」
ルナがにこっと笑って手を振る。
「……」
「賑やかになったな」
ロークが小さく笑う。
そのまま店を後にし、蒼月亭へと向かう。
「戻ったぞ」
「おかえり」
ミレーヌが迎える。
「どうだったい、長旅は?」
「上々だな」
ロークは肩の荷を下ろしながら言う。
「いろいろ仕入れられたし――」
「情報も得られた」
「ほう」
ミレーヌが興味深そうに目を細める。
「面白そうな話が聞けそうだね」
「良い話もあるし」
ロークは少しだけ間を置く。
「きな臭いのもな」
「……」
「そんなもんだよ」
ミレーヌが軽く肩をすくめた。
「あと、こっちも住人が増えたんだ」
「レンファ夫婦だって?」
「もう知ってるのかい?」
「自分の店に帰ったらな」
ロークは苦笑する。
「見知らぬ獣人の少女が、セラ達と賑やかに話してるんだ」
「そりゃ気付くさ」
「ルクスリアから来たんだってさ」
「ほう」
ロークの表情が少し変わる。
「ちょうどいい」
「そこの情報も、得てきた」
「へぇ」
ミレーヌが眉を上げる。
「随分遠くまで行ったんだね」
「実際に行ったわけじゃないさ」
ロークは椅子に腰を下ろす。
「アルヴェリアの国の、セレスト港まで行ってきた」
「そこで、ルクスリアの話も聞いたんだ」
「なるほどね」
「レンファ夫婦も聞きたいだろうから」
ミレーヌが言う。
「夕食の時にでも、まとめて話してくれよ」
「そのつもりだ」
ロークは静かに頷いた。
外の世界の情報が、紅陽へと流れ込む。
それは、ただの噂ではない。
これからの“選択”に関わるものだった。
帰還とともに運ばれるのは、物資だけではない。
次は――世界の動き。




