第144話「力の扱い方」
強い力は、持つだけでは足りない。
どう扱うかで――未来は変わる。
「……みんなで話し合いをしよう」
ミレーヌが、静かに切り出した。
先ほどのエリクサーの光景が、まだ全員の頭に残っている。
「エリクサーやハイポーションを、どんどん作って売っていたら――」
「絶対に目につく」
「また襲われる可能性が出てくる」
「……」
空気が引き締まる。
「かと言って」
レオンが腕を組む。
「作らないのは、勿体ないな」
「そうだね」
アリアも頷く。
「価値が高すぎる」
「だから――」
ミレーヌが視線をレンファに向ける。
「レンファ」
「はい」
「普通のポーションは作れるかい?」
「もちろんです」
迷いのない返答。
「王都で売ってるハイポーション程度は?」
「最高品質で作るなら可能です」
「……」
ミレーヌは少し考え、ゆっくりと頷いた。
「なら――」
「普通のポーションより、少し品質が良い程度で止めておこう」
「……なるほど」
レンが小さく笑う。
「目立たないラインってことか」
「そういうこと」
ミレーヌは続ける。
「ハイポーションやエリクサーは――」
「作っても、売らない」
「ロークの店には置かない」
「蒼月亭に保管しておく」
「緊急用だね」
セラが頷く。
「なるほど……」
レンファも納得したように言う。
「魔族領も近いし」
ミレーヌが続ける。
「現に、レンファは逃げてきてる」
「いつ奪還に来るかわからないからね」
「……」
ルナの目が、わずかに細くなる。
「戦力は、ここにいるみんなしかいない」
「何があっても対処できるようにしておかないと」
「そのための備え、か」
レオンが低く呟く。
「うん」
ミレーヌは一度全員を見渡した。
「まとめるよ」
「ロークの店で売るのは――」
「少し品質の良いポーション」
「それと、解毒薬」
「ハイポーションとエリクサーは――」
「蒼月亭で非常用として保管する」
「異論は?」
「なし」
「問題ないね」
「いいと思う」
次々と頷きが返る。
レンファも静かに頭を下げた。
「了解しました」
ルナは、にやりと笑う。
「じゃあ――」
「いざって時は、全部ぶちかませるってことだね?」
「……」
「言い方」
レンが苦笑する。
「でも、間違ってない」
リディアが短く言った。
「備えは、力になる」
その言葉に、全員が静かに頷く。
紅陽は今――
ただ力を持つ場所ではなく、
“力を管理する場所”へと変わっていく。
価値を隠すか、使うか。
その選択が、未来を左右する。




