第143話「完全なる回復」
理論は語れる。
だが、本物は――証明される。
「では――」
レンファが静かに言った。
「実際に作ってみますね」
「道具は、先ほどと同じもので構いません」
「やり方が、少し違うだけです」
全員の視線が、一斉に集まる。
まずは、ハイポーションの作成。
昨日見せたものより、さらに濃く。
「……色が違うな」
レオンが呟く。
「濃縮しています」
レンファが答える。
「ここからが違います」
次に取り出したのは、あの草花。
「この植物は――」
「製法によって、毒にも解毒にもなります」
「……」
レンファは慎重に抽出を行う。
淡い光を帯びた液体を分離し、
その中から“解毒”の性質だけを取り出す。
それを、濃縮したハイポーションへと混ぜる。
「まだ、終わりではありません」
さらに、同じ植物から――
今度は“毒”の性質を抽出する。
「……入れるのか?」
レンが思わず聞く。
「はい」
「これが、鍵です」
わずかに加えられた毒。
そして――
「ここから、再抽出します」
液体を再び精製していく。
光が変わる。
色が薄れ――
やがて。
「……できました」
差し出されたのは。
透明な液体だった。
「……水?」
セラが首を傾げる。
「途中まで見てたけど……」
フィオが呟く。
「最初に戻ったのか?」
「いいえ」
レンファは静かに言った。
「品質の良いエリクサーは、透明なんです」
「……」
その一言で、場が静まり返る。
「カイさん」
「はい?」
「斬られた傷跡、まだ残っていますか?」
「多少は……」
カイは腕を見せる。
傷は塞がっている。
だが――
完全ではない。
「飲んでみてください」
レンファが小瓶を差し出す。
「不完全だった内臓や皮膚も、修復されます」
「……」
カイは一度、全員を見渡した。
そして――
「じゃあ……いきます」
小瓶の中身を、一気に飲み干す。
「……」
静寂。
次の瞬間――
「……!」
「消えてる……!」
セラが声を上げる。
カイの腕に残っていた傷跡が――
跡形もなく消えていた。
皮膚は、完全に元通り。
「それだけじゃない……」
カイがゆっくりと拳を握る。
「……以前のような元気さが出ないな、って思ってたんですが」
「……」
「完全に治った気がします」
「体の奥から、力が戻ってくる」
「……すごいな」
レオンが低く呟く。
「これが……エリクサー……」
ルナは腕を組み、満足そうに頷いた。
「だから言ったでしょ?」
「レンファは凄いんだよ」
「いや……それだけじゃない」
レンが苦笑する。
「この村、もうおかしいぞ」
「だね……」
アリアも静かに同意する。
リディアは、カイを見て一言。
「……これで、完全復帰だな」
「はい」
カイは力強く頷いた。
レンファは、ほっとしたように微笑む。
「よかったです」
紅陽は今――
“奇跡を作れる場所”へと、変わろうとしていた。
完全なる回復。
そして、確信。
次は――この力を、どう使うか。




