第142話「価値の核心へ」
一つの発見は、次の可能性を呼ぶ。
そしてその先には――常識を覆す答えが待っている。
「この前さ」
セラがふと思い出したように口を開いた。
「貴族の襲撃があって、カイが斬られたの」
「……」
ルナの表情が一瞬だけ険しくなる。
「その時にね」
アリアが続ける。
「エリクサーの作り方が書いてある古書を、ロークが手に入れてきて」
「材料を取りに行って、王都で作ってもらったの」
「それで、カイは助かったんだよ」
「……なるほど」
レンファは静かに頷いた。
「その古書って、まだありますか?」
「あるよ」
ミレーヌがすぐに持ってくる。
「これだよ」
古びた紙束。
レンファはそれを受け取り、丁寧にページをめくる。
「……確かに」
「エリクサーの作り方には、間違いありません」
「ほんと?」
「ただ――」
レンファは少しだけ表情を変えた。
「材料と製法が、古い」
「えっ?」
一同が顔を見合わせる。
「今では使わない材料も含まれていますし」
「製法も、少し非効率ですね」
「そっか……」
セラが少し残念そうに言う。
「やっぱり、そう簡単には作れないよね」
「いいえ」
「えっ?」
レンファは、きっぱりと言った。
「ルナが言っていたでしょう?」
「私のやり方は、少し特殊だと」
「……」
「じゃあ……」
レオンが身を乗り出す。
「作れるのか?」
レンファは、迷いなく頷いた。
「もちろんです」
「それも――」
少しだけ、間を置く。
「ここに自生している草花だけで」
「……ええ〜!?」
一斉に声が上がる。
「嘘だろ!?」
「そんなの聞いたことないよ!」
「エリクサーだぞ!?」
「ここ、どうなってんの……?」
ざわめきが一気に広がる。
ルナは腕を組みながら、どこか得意げに言った。
「だから言ったでしょ?」
「レンファは凄いんだよ」
「いや、それもあるけど……」
レンが苦笑する。
「この村も大概だぞ」
「だね……」
アリアも静かに頷く。
リディアは、少しだけ目を細めた。
「……価値が上がるな」
その一言で、空気が少しだけ引き締まる。
「まあまあ」
ミレーヌが手を叩いた。
「まずは作ってもらってからだよ」
「そうだね!」
「見てみたい!」
期待と興奮が入り混じる中――
紅陽は、さらに一歩。
“ただの村ではない場所”へと、踏み出していく。
ハイポーションの先にあるもの。
それは――エリクサー。




