第145話「花と看板娘」
力は隠し、価値は育てる。
そして日常は――少しずつ色づいていく。
昼食後。
「じゃあ、ちょっと店の様子でも見てくるか」
レオンの一言で、一同はロークの武器屋へと向かった。
店の扉を開ける。
「……」
「棚が、がらんどうだね」
ルナがきょろきょろと見回す。
「カイが直した武器が、全部売れちゃってね」
レンが苦笑する。
「今はお店、閉めてる状態なんだ」
「カイさん凄いね〜」
ルナが素直に感心する。
「そんなことないよ」
カイは少し照れたように笑った。
ふと、ルナの視線が止まる。
「……あれ?」
空になった棚の一角。
そこだけ、ぽつんと花瓶が置かれていた。
色とりどりの花が、静かに飾られている。
「これ……」
レンファも近づく。
「こっちがポーションの材料で」
「こっちが毒にもなる花……」
「……」
「そんなものが花瓶に飾られてるなんて」
フィオが呟く。
「誰も気が付かないよな」
「でしょ?」
セラが得意げに笑う。
「お店が寂しいから、飾ってみたの!」
「いいね〜」
ルナが嬉しそうに頷く。
「可愛いし、隠せるし」
「一石二鳥だね」
アリアも柔らかく微笑む。
「カイが武器を直したら、また並べよう」
レンが棚を軽く叩く。
「その時に――」
「レンファのポーションと、解毒剤も一緒に置けばいい」
「ですね」
レンファが頷く。
「目立ちすぎず、でも価値は出せる」
「いい流れだね」
アリアが言う。
「じゃあさ!」
セラがぱっと顔を上げた。
「ルナちゃん、一緒にお店番しようよ!」
「えっ?」
「うん!」
ルナはすぐに笑顔になる。
「一緒にやりたい!」
「やった〜!」
「じゃあ決まりだね」
「セラ、アリア、ルナの三人で――」
レオンがニヤリと笑う。
「看板娘だな」
「ええ〜!」
「ちょっと待ってよ〜」
「いいじゃんいいじゃん」
レンが笑う。
「客、絶対増えるぞ」
「それ目的でしょ!」
「にゃはは!」
店の中に、笑い声が広がる。
がらんどうだった棚も、
どこか“これから”を感じさせる空間へと変わっていた。
紅陽は、今日も少しずつ――
形を変えていく。
武器と薬、そして花。
紅陽の店は、ただの店ではなくなっていく。




