第139話「新しい暮らしの始まり」
居場所が決まれば、次は暮らし。
そして暮らしは――新しい価値を生み出していく。
「今日は二人で客間に泊まりな」
ミレーヌが片付けをしながら言う。
「明日から、ゆっくり住む準備をしていけばいいよ」
「ありがとうございます」
レンファが丁寧に頭を下げる。
「レンファと一緒に寝られる〜♪」
ルナは満面の笑みで、すでに上機嫌だった。
「……」
「ほんと切り替え早いな」
レンが小さく呟く。
その夜は、久しぶりに“安心して眠れる夜”となった。
そして翌朝。
「おはようございます」
二人揃って階段を降りてくる。
「よく眠れたかい?」
ミレーヌが声をかける。
「はい、とても」
レンファが頷く。
「ぐっすりだった〜!」
ルナも元気よく答えた。
朝食を終えた後――
「廃屋の最後の掃除と調整をしてからだな」
レオンが言う。
「その後は、生活用品の買い出しだね」
アリアが続ける。
「オルフェンの街に行こう」
レンが提案した。
「俺、必要か?」
レンファが少し首を傾げる。
「案内役はあった方がいいし」
レンが肩をすくめる。
「レンファさんも、紅陽の外はまだ知らないでしょ?」
「……確かに」
「まーねー」
ルナも頷く。
「じゃあ、三人で行こうか」
準備を整え、三人は村を出発した。
街道を進み、しばらくすると――
「見えてきたよ」
オルフェンの街が姿を現す。
活気ある人の流れ、並ぶ店、響く声。
「……すごいな」
レンファが小さく呟く。
「久しぶりの街?」
ルナが横から覗き込む。
「ええ……」
「こんな場所は、しばらく見ていませんでした」
三人は必要な生活用品を次々と揃えていく。
布、食器、簡単な家具、小道具――
「これで大体揃ったな」
レンが荷物をまとめる。
「ありがとうございます」
レンファが礼を言う。
「気にすんなって」
帰り道。
街道を外れ、紅陽へと続く道に入る。
その途中で――
レンファがふと足を止めた。
「……この村の周辺の草花は、何なんですか?」
「え?」
レンが振り返る。
「貴重な草花が、いくつも自生している」
驚きを隠せない様子だった。
「こっちじゃ、薬草にもならないのばかりだよ」
レンが軽く言う。
「……」
「製法が、知れ渡っていないのか……?」
レンファが考え込む。
「あなたが独特なのよ」
ルナがすかさず言う。
「普通じゃない方法ばっかりでやるから」
「……」
レンファは苦笑した。
「ですが――」
「ポーションとして製品化できれば、十分価値はあります」
「売れるってこと?」
「はい」
「店があれば、ですが」
「なら――」
レンがにやりと笑う。
「ロークの店で、武器と一緒に売ればいい」
「……!」
「確かに」
レンファが頷く。
「ローク、ビックリするぞ」
レンはニシシと笑った。
「楽しみだね〜」
ルナもくすっと笑う。
紅陽へと続く道の先に――
新しい“価値”が、芽吹こうとしていた。
生活の始まりと、産業の種。
紅陽は少しずつ、“ただの村”ではなくなっていく。




