第138話「帰る場所の温もり」(続き)
食事がひと段落し、酒場の空気も少し落ち着いてきた頃――
「そういえば」
ルナがふと顔を上げる。
「レンファは、どうしてここにいるの?」
「ああ、それは――」
レンファが答えようとしたところで、
「リディアさん達に助けられたんだよ」
横からレンが口を挟んだ。
「黒焔城で捕まってたのを、何とか逃げ出して――」
レンファが続ける。
「エルフ領に向かっていたら、この村に辿り着いたんです」
「魔族領の森から気配を感じてな」
リディアが静かに言う。
「行ってみたら――」
「魔人の兵に追われていた」
「……!」
「魔人の兵⁉️」
その一言で、ルナの表情が変わった。
さっきまでの柔らかい空気が消え――
一瞬で、鋭い目に変わる。
「……」
“殺し屋の顔”だった。
「私達で助けて、ここに連れてきたんだよ」
リディアが淡々と続ける。
「……」
その言葉を聞いた瞬間――
ルナの顔が、みるみる赤くなっていく。
「……え?」
「私……」
「レンファの命の恩人に……」
「……あんな事しちゃったの?」
「……」
一瞬の沈黙。
「ご、ごめんなさいっ!!」
ルナは勢いよく立ち上がり――
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
何度も、何度も頭を下げる。
そして――
ゴンッ
「いった〜い!!」
勢い余って、思いきり額をテーブルにぶつけた。
「大丈夫!?」
セラが慌てる。
「よしよし」
アリアが頭を撫でる。
「にゃ〜ん……」
ルナはそのまま、しゅんとした顔で甘える。
「……」
「さっきの殺し屋の顔が、もう次はこれだぞ」
レオンが呆れたように言う。
「落差が激しいな」
フィオも苦笑する。
「でも――」
アリアがくすっと笑った。
「楽しい仲間が増えたね」
「うん!」
セラも元気よく頷く。
ルナは顔を上げて、にこっと笑った。
「みんなと仲良くするにゃ!」
その言葉に、場がまた明るくなる。
笑い声が広がり、温かな空気が戻ってくる。
紅陽は今日も――
少しずつ、賑やかになっていく。




