第135話「次の一手」
新たな価値が見つかれば、次に必要なのは“動き”だ。
紅陽は止まらない。
「帰ってきて早々だけど――」
ミレーヌが腕を組んだまま言う。
「また買い出しに行ってきてくれるかい?」
「いいよ」
レンは即答だった。
「即答だな」
レオンが苦笑する。
「慣れてるからね」
レンは肩をすくめる。
「このメモにあるものだけでいいから」
ミレーヌが紙を差し出す。
レンがそれを受け取り、ざっと目を通す。
「……これって?」
「ここらに咲いてる花で、ハイポーションができるんだって」
ミレーヌがさらっと言う。
「えっ」
レンの動きが止まる。
「レンファが、泊めてもらってるお礼で作ってくれるってさ」
「……ハイポーションって」
フィオが腕を組みながら口を開く。
「王都で買うと、結構するやつだよな?」
「そうそう」
レオンも頷く。
「普通に高い」
「それよりも品質の良いものが――」
ミレーヌが少しだけ口角を上げる。
「ここいらの花で作ると、できるんだって」
「……は?」
レンが完全に固まる。
「いや、待って」
「話がおかしい」
「おかしくないよ」
セラがにこにこしながら言う。
「むしろすごい話だよ」
アリアも頷く。
「いや、すごいってレベルじゃないだろ……」
レンは額を押さえる。
「紅陽って……」
少し間を置いて、呟く。
「すごい場所だな」
「そうなるね」
ミレーヌはあっさり認めた。
「いや、“そうなるね”じゃないでしょ……」
フィオがツッコむ。
「武器は王都レベル以上、ポーションはそれ以上って……」
「何その村」
「花も綺麗だよ?」
セラが補足する。
「そこじゃない」
即ツッコミが入る。
「まあいいや」
レンがため息をつく。
「じゃあ、明日早速行くよ」
「助かるよ」
ミレーヌが頷く。
「場所は?」
「王都かヴァルディアでも揃うと思うけど……」
レンファが少し控えめに口を開く。
「できれば、質のいいものを選びたいので」
「なら、ヴァルディア経由で様子見て、足りなきゃ王都だな」
レンがすぐに判断する。
「また長旅になるね」
アリアが言う。
「ついでにロークとも合流できるかもね」
セラが続ける。
「それもあるな」
レンが頷く。
「でも――」
リディアが静かに口を開いた。
「警戒はしておきなさい」
「……魔族側?」
「それもある」
リディアは短く答える。
「でもそれだけじゃない」
「……?」
「この村の価値が、少しずつ上がってる」
その一言で、場の空気がわずかに引き締まる。
「知られたら――狙われる」
「……確かに」
レオンが頷く。
レンはメモを軽く叩いた。
「じゃあ尚更、早めに動いた方がいいな」
「準備しておく」
フィオが立ち上がる。
「気をつけてね」
セラが手を振る。
「任せとけ」
紅陽は、次の一手へ動き出す。
それは――
ただの買い出しでは終わらないかもしれなかった。
ハイポーションという新たな価値。
そして、それを支えるための行動。
だが、価値があるということは――
“見つかる可能性”もまた上がるということ。




