第121話 鍛冶屋の最初の仕事
紅陽に鍛冶場が完成した。
炉も道具も揃った。
だが――
鍛冶屋は火を入れてこそ始まる。
カイにとっての最初の仕事は、
師匠の残した未完成の武器だった。
翌朝。
蒼月亭の朝食が終わると、カイは鍛冶場へ向かった。
皆も自然とついてくる。
新しく作った工房の中は、朝の光が差し込んでいた。
カイは王都から運んできた木箱を一つ開ける。
そして中身を広げた。
テーブルの上に並ぶ刃物。
ナイフ。
短剣。
長剣。
大剣。
さらに別の箱を開ける。
防具の部品。
籠手や肩当てなど、様々なものが入っていた。
レオンが腕を組みながら言う。
「未完成品か」
レンが一本の短剣を持ち上げる。
「……でも」
「良い品だってわかる」
フィオも刃を見つめる。
「刃の形が綺麗だ」
アリアも静かに言った。
「さすがカイの師匠だね」
セラが目を輝かせる。
「いっぱいある!」
セリアも頷く。
「こんなに残ってたんだ」
リディアが一本の長剣を手に取る。
刃の重さを確かめるように軽く振る。
「……いい剣だ」
レオンがカイを見る。
「こいつら」
「全部直すんだろ?」
カイは少し笑った。
「そうですね」
ロークが腕を組む。
「直したら全部売れるぞ」
レンが言う。
「いや」
「俺は欲しい」
フィオも頷く。
「俺も」
セラが言う。
「私も!」
アリアが笑う。
「私も興味ある」
セリアも頷く。
「いい武器になりそう」
レオンが言った。
「欲しいよな」
レンも頷く。
「だよな」
セラも笑う。
「欲しい!」
カイは少し考えてから言った。
「選んでくれたら」
「直しますよ」
皆が一斉に振り向いた。
「ホント!?」
セラが叫ぶ。
カイは笑った。
「もちろんです」
「僕の鍛冶屋の最初の仕事です」
レオンが笑う。
「太っ腹だな」
ロークが言う。
「広告になる」
レンが武器を見始める。
「どれにしようかな」
フィオは弓使いだが、短剣を見ている。
「護身用にいいな」
セラは小さなナイフを見ていた。
「これ可愛い」
アリアは細身の短剣を手に取る。
「私たちでも扱いやすそう」
リディアは黙って一本の長剣を見ていた。
刃の重さを確かめる。
そしてカイを見る。
「直せるか?」
カイは剣を受け取った。
刃を確認する。
「大丈夫です」
「少し手を入れれば」
「いい剣になります」
リディアは頷いた。
「楽しみだ」
カイは炉の前に立った。
炭を入れる。
火をつける。
ふいごを動かす。
やがて――
炉の中で火が強く燃え始めた。
鍛冶屋の火だ。
カイはハンマーを手に取る。
鉄を炉に入れる。
少しして取り出す。
真っ赤になった鉄。
金床に置く。
そして――
カンッ。
最初の音が響いた。
紅陽の鍛冶屋で、最初の仕事が始まった。
紅陽の鍛冶屋がついに動き出しました。
師匠の残した未完成の武器は
カイの手によって完成していきます。




