↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
113/289

第113話 王都への道

紅陽の朝は、いつもより少しだけ早かった。


鍛冶屋の親方の訃報。

残された工房。

そして未完成の品々。


それらを迎えに行くため、カイは王都へ向かう。


だがこれは、ただの旅ではない。


師と呼べる男との、最後の別れの道でもあった。

まだ朝霧が残る時間だった。


紅陽の広場には、数人の姿が集まっている。


カイ、ローク、レン。


王都へ向かう三人だ。


カイは馬に乗っていた。


まだ完全に回復したわけではないため、今回は自分で歩くことは許されていない。


ミレーヌが腕を組みながら言う。


「無理するんじゃないよ」


「はい」


カイは素直に頷いた。


その横でロークが馬の手綱を整えている。


「なるべく早く戻ってくる」


そして真面目な顔で続けた。


「四日経っても戻らなかったら――」


リディアの方を見る。


「リディア、探しに来てくれ」


リディアは短く答えた。


「了解した」


その言葉は軽くない。


クローディア家は滅びたとはいえ、残党がいる可能性はある。


油断はできない。


ミレーヌがゆっくり頷いた。


「無事に帰ってくることを願ってるよ」


ロークが軽く手を振る。


「任せときな」


カイも頭を下げる。


「行ってきます」


レンはすでに準備を終えていた。


弓を背負い、短剣を腰に差している。


「出るぞ」


その一言で、三人は動き出した。


レンが先頭に立つ。


周囲を確認しながら進むのは、斥候の役目だ。


ロークはその後ろ。


カイの馬を引きながら歩く。


村の出口まで来ると、広場に残った仲間たちの姿が見えた。


セラが大きく手を振っている。


アリアとセリアも並んで見送っていた。


レオンが腕を組みながら言う。


「気をつけろよ」


レンは振り返らずに手を上げるだけだった。


やがて三人は森の道へ入っていく。


朝の光が木々の間から差し込み、静かな道を照らしている。


しばらく進んだところでロークが口を開いた。


「体はどうだ」


カイは馬の上で軽く肩を回した。


「問題ありません」


「無理するなよ」


「はい」


少し沈黙が続く。


そしてロークがぽつりと言う。


「オヤジに会うのは……最後だな」


カイは前を見たまま頷いた。


「はい」


炉の熱。

鉄の匂い。

叱る声。


すべてが頭に浮かぶ。


だが足は止まらない。


レンが前方を見ながら言う。


「もうすぐ街道だ」


森を抜けると、広い道が見えた。


人の往来がある街道。


ここまで来れば、ひとまず安全だ。


ロークが小さく息を吐く。


「よし」


「ここからは早い」


カイは王都の方角を見る。


遠い城壁。


その向こうにある工房。


親方の鍛冶屋。


「……行きましょう」


静かに言った。


師との別れの時が、少しずつ近づいていた。

この回は紅陽からの出発を描いた回です。

次は王都に到着し、

・閉ざされた鍛冶屋

・親方の痕跡


へと物語が進んでいきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。