↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第13章 オルドウ編 2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

791/802

第786話 絶技



「赤鬼!?」


 フードを脱ぎ捨てた赤髪の大男を目にした騎士の1人が声をあげる。


「赤鬼?? あの人はこの国にいないはずじゃ?」


「俺もそう聞いたぞ」


「けど、あの剣傷の痕は」


「まさか、本当に赤鬼?」


 赤鬼という人につけるとは思えぬ恐ろしげな異名、この世界で何度耳にしたことだろう。


「キュベリッツに戻っていたのか?」


 ギリオンやヴァーンも事あるごとにその名を口にしていた。他の冒険者が語るのを聞いた数も数えきれない。超を越えた名声を誇る伝説の剣士。赤鬼ドゥベリンガー。


「……」


 いわゆるこの世界の達人と呼ばれる者は4人。

 剣姫イリサヴィア、幻影のヴァルター、大魔導師エヴドキヤーナ、そしてこの赤鬼。


 そんな大物が今イヴと対峙しているというのか?



「どうした、バアさん?」


「……」


「ホントに分かんねのか? オレ様の顔も、あんたにつけられたこの傷痕も?」


 いまだイヴは不動。


「おいおい、嘘だろ」


「……」


「そこまで耄碌しちまったのかよ?」


 それはない。

 イヴは多分気づいている。

 この沈黙にも意味があるはずだ。


「それとも別人?」


「……」


「いや、そんなわけねえ。顔は違うがあんたは間違いなくバアさんだ。それに耄碌なんてするババアでもねえ」


「……」


「だったら、異世界に行って中身が変わっちまったか?」


 なっ!?

 異世界だと!!


「なあ、行ってきたんだろ、異世界って所によ?」


 イヴに渡界経験がありかつ日本を知ってるとなると、その異世界はもう日本としか思えない。さらに、赤鬼らしきこの大男も異世界の存在を知っている。


 まずい。

 まずいぞ!


 ここは慎重に事を進めないと、取り返しのつかない事になってしまう。

 なるべく目立たぬよう、細心の注意を払って……。


「ちっ、しょうがねえ」


「……」


「喋る気がねえなら、この剣で話すだけだ!」


 腰の剣を抜いた。

 この抜剣だけでも力量が推測できるほどの剣の冴え。


「……ドゥエリンガーはどうした?」


「おっ、やっと喋りやがったな」


「……」


「っつうか、ちゃんと分かってんじゃねえか!」


「……ドゥエリンガーは?」


 赤鬼ドゥベリンガーが振るう剣は魔剣ドゥエリンガー?

 長剣のドゥエリンガー?

 分かりづらすぎる。


「おう、ありゃあ使わねえ。あんたと戦うんだからよ」


「……」


「ってことで縛りはねえから、遠慮なくやってくれ」


 魔剣ドゥエリンガーとイヴとの間に制約?

 ここにも制約が存在すると?


 イヴ、おまえ謎も制約も抱えすぎだぞ。


 出会った当初から謎に満ちていた錬金術師イヴ。

 いまだ俺の常識を超越する存在だが、それでもこの2日間である程度は彼女を知ることができた。ただ、それ以上に謎が深まっているのも事実。


 錬金術師の枠を逸脱した様々な力量、常に冷静な彼女らしくないササリーシャ嬢への執着、様々な制約に日本に関する知識、そしてこの赤鬼との関係。


 まったく、何が何だか。

 分からないことが増え続けてるじゃないか。


 手を組んでるこっちの身にもなってほしい。

 どう考えても説明不足なんだよ。

 ほんと、頭が痛くなってくる。


 そんなイヴ周りのことだけでも手いっぱいだというのに、ここ数日の俺ときたら……。


 離島、湖畔の館、オルドウ、そしてこの街道と、短期間でとんでもないことが起こりすぎだ。その上、赤鬼ドゥベリンガーの口から異世界の話が出てくる始末。


 正直、今はもう頭痛どころじゃない。

 すべきこと、考えることが多すぎて……。


 けど、まあ、今は心を静めて用心深く慎重に。

 そうするしかないよな。


「……」


 とはいえ、数十メートル先で対峙しているのは勇名轟く大剣士赤鬼ドゥベリンガーと超絶技巧を誇る魔術とスキルの達人イヴ。


 自分の置かれた状況を忘れて気になってしまう。

 少しばかり、いや、大いに惹きつけられてしまう。




「ドゥエリンガーなしで私と戦うと?」


「そりゃそうだろ。あれを使っちまうと、バアさん本気出せねえんだからよ」


「……」


「ってことで開戦だ。手を抜くなよ、バアさん」


 ドゥベリンガーが淡く発光する剣を右手に間合いを詰めていく。

 その剣は当然ドゥエリンガーではなく他の魔剣でもない。剣身に魔力を纏うことで発光させているんだ。


「20年ぶりのオレ様の剣、受けてみろ!」


 ここで大きく踏み込んだ赤鬼ドゥベリンガーが上段から剛剣を叩き込む。

 イヴは動かない!?


「イヴ様ぁ!!」


 動かない、が。


 ドガンッ!


 赤鬼の剣はイヴの眼前で静止。

 イヴが障壁を展開したんだ。


 けど、いつ?

 まったくそんな素振りはなかったのに?


「イヴ様が、防いだ?」


 これまでは発声していた術名なしでの発動。

 それだけじゃない、魔力すら感じられなかった。

 ずっと注視していたにもかかわらず、魔力の動きを感知できなかった。

 ただ、それでも。


「あれは?」


「……魔法障壁だと思います」


 魔力は感知できなかったが、まず間違いないと思う。

 あれはスキルじゃなく魔法の防壁なんだろう。



「へっ、さすがバアさんだ」


「……」


「けどまあ、そりゃそうか」


 頬の傷痕を大きく歪めて赤鬼が数歩後退する。


「たった20年であんたが劣化する、なんてことあり得ねえもんなぁ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ここをクリックして、異世界に行こう!! 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。