第759話 誰?
空間異能者の手と江良の背が淡く光ってる。
これは……って、させるか!
バリ、バリ、バリ!
「あガ、ガガガガ!」
苦悶の表情で悶える空間異能者と無意識状態のまま震える江良。
バリ、バリ、バリ!
その江良の半身が薄れてる?
スタンガン雷撃じゃ足りない。
だったら。
ドゴン!
「ガガ、っ!?」
ドガッ!
空間異能者を蹴り飛ばし、江良に正拳突き。
から、右腕を取り背負い投げへ。
「……??」
手に取っていたはずの腕がない。
消えてる。
「っ!」
飛ばされてしまったのか?
また?
意識を奪っていたのに!
捕まえていたのに?
「うう、ああぁ」
その空間異能者は地に転がったまま。
異空間に逃げることなく、蹴られた腹をおさえ悶絶している。
そうだよな。
おまえはまだ空間魔法を使えないはずだよな。
なのに、どうやって江良を飛ばしたんだ?
自分にできないことを他人に、どうして?
分からない。
「うぅぅぅ」
非常に強力だが仕様は単純、最初はそう考えていた異能者の異能が今じゃ分からないことばかり。鑑定でも掴めないことばかり。まさか、鑑定が劣化してるのか?
「……」
逃がした者はもう仕方ない。
だが、こいつだけは絶対に逃がさない。
そして、ああ。
すべてを吐かせてやる。
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<古野白楓季視点>
「武上くん、これでいいかしら?」
「ああ、こうしときゃあオレも簡単には動けねえ」
武上くんの言う通り。
研究所考案の捕縄術は並じゃない。
その拘束力は身体能力の高い異能者にも充分な効果を発揮してくれる。
ただ……。
「でも、痛いですよね?」
縄の中の武上くんと私に対し交互に視線を送ってくる幸奈さん。
「だったら、もう少し緩めても?」
あなたの優しい気持ちは本当に貴重だわ。
けどね、今は。
「できないわ」
「古野白さん?」
「ここでまた武上くんが正気を失えば、大変なことになるから。今は少しでもリスクを減らさないと」
「それはそうですけど……」
「一度操られた者の危険度は見た目では量れないの」
目の前にいる武上くんは普段通りに見える。
というか、まずそうなんでしょう。
ただ、いつ豹変するか分からない。
「この武上くんも同じよ。だから、野放しになんてできないわ。絶対にね」
「……」
「分かってくれた、幸奈さん?」
「……はい」
完全には納得していないようだけど、今はそれでいい。
「ところで武上くん、あなた正気を失った理由に思い当たりは?」
「まったくだ」
やっぱり。
「けどよ、まともじゃなかったことだけは間違いねえ。じゃねえと、オレが有馬を刺すなんて」
私もそう思う。
そう信じたい。
でも、研究所が武上くんを調べるまでは……。
「とにかく、こうして縛っときゃ問題ねえはずだ」
「それは、ええ、そうね。ただし、根本的解決にはなってないわ」
「そいつぁ……研究所に任せるしかねえだろ」
その通り。
ただ、この武上くんが。
「鷹郷さんの到着まで我慢できるのかしら?」
無論、無理と答えたところで解放なんてできないのだけれど。
「問題ねえ。何時間でも余裕で耐えてやらぁ」
その自信。
「……不安だわ」
「平気だよ、古野白さん。ボクが武上くんの傍にずっとついてるからさ」
これもまた自信満々の里村くん。
でも、それは過信というものよ。
「あなたじゃ、抑えられないでしょ」
異能を持たない彼には荷が勝ちすぎている。
というか、武上くんが正気を失って暴れだしたら異能者でも対処は大変なの。
「今の武上くんは縛られてるんだから何とかなるって。それに古野白さんもいなくなるわけじゃないし、三隅さんや美藤さんもきっと助けてくれるはずだから」
確かに、私も近くにはいる。
研究所所属のあの2人も、頼めば手を貸してくれるだろう。
とはいえ万一にも縄が解けたら、武上くんが再度正気を失ったら、上級の身体強化者と対峙することになってしまう。それは……。
「わたしも手伝います」
幸奈さん?
「古野白、おまえは心配し過ぎなんだよ」
「心配は過剰なくらいがちょうどいいの」
「なわけねえだろ。つうか、そもそも鷹郷さんはいつ島に来るって話だ?」
確定情報はまだ手に入っていない。
それでも、明日の朝には。
「今夜には着くらしいよ」
今夜?
「はあ? なんで里村が知ってる?」
「三隅さんから聞いたんだけど?」
いつの間に。
「あっ、でも、鷹郷さんヘリコプターで来るみたいだから、もっと早いかも」
「「……」」
「夜か夕方までなら、武上くんも耐えられるでしょ?」
「そんなもん、答えるまでもねえ」
「ってことらしいよ、古野白さん」
それなら、まあ。
と頷きかけたところで。
「功己!」
戻ってきたの?
「有馬くん、怪我は?」
幸奈さんと里村くんが駆け寄って行く。
「体は大丈夫?」
「そっちは問題ない」
よかった。
無事なのね。
「ただ……悪い」
何?
「江……日本刀使いには逃げられてしまった」
「えっ? でも、その背中?」
有馬くんが背負っているのは?
「これはあの空間異能者だな」
空間異能者?
あいつがどうして?
「どうして、あなたの背中で意識を失っているの?」
「それ、有馬くんがやったんだよね?」
「ああ、俺が昏倒させた」
「ってことは?」
「日本刀使いの共犯だ」
「あっ、だからあいつトイレの中に突然現れることができたんだね」
里村くんが納得している。
私は……まだ無理。
有馬くんから詳しい話を聞かないと。
「まあ、そういうことだろう。が、入手した情報はそれだけじゃないぞ」
「どんな情報?」
「いくつもあるが最も重要なのは……内通者、裏切り者についてだな」
内通者!?
「裏切り者って、誰?」
まさか、研究所の中に?





